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前回ご紹介した、法人の支払地代をめぐる税務署の反応の続きです。

統括官が税務署に来るよう連絡してきたので、担当者に税務署に向かわせました。

担当者の報告では、支払地代を復活したのは「利益調整だ」と統括官は主張して譲らないのだそうです。

法人取引である以上、適正地代支払いを基準として、課税関係の判断をするべきだと、いくら主張しても理解できないといいます。40代の若い統括官だったというのですが。

そういえば別の調査で、不動産管理会社がマンション所有者から受け取る「管理料」が、どのような役務の対価なのかと若い統括官に真顔で聞かれて、彼の真意を測りかねたことを思い出しました。本当に管理料が何かを知らなかったようです。 これも2カ月ほど前の出来事です。

団塊の世代が退職したあとの税務署は、「空洞化」しているのではないでしょうか。

「これを喋ると程度が知れる」「のちのち組織全体が恥ずかしい思いをする」という判断は現場で恥をかいて、先輩にしかられて身に付く知恵だと思います。

今回のケースも、つまらない指摘をした担当調査官が署に帰って統括官にしかられて、恥をかくべき事項のはずです。

猛省を促したいと思います。

 

 

税務調査の立会をしていて気がつくことのひとつは、調査官の年齢が非常に低くなっていること。経験も少なく知識も充分ではない調査官が、ひとりで調査の現場にやってくることです。

顧問先企業も我々税理士も、忙しい時間をようやく割いて調査に協力しているのですから、手際よく、納税者に負担をかけない調査を望みたいところです。

しかし、調査官から次のような指摘を受けると、怒る気力も失せてしまいます。

会社「甲」は役員「A」所有の土地に会社所有の建物を有し、かつてはAに地代を払っていました。ところが業績の悪化により地代を支払う余裕もなくなり、地代支払いをストップする時期がしばらく続きました。

調査対象年の最終期に、ようやく業績が好転しだしたため地代の支払いを再開したところ、これを法人税の調査において調査官は、「利益調整であるため否認したい」と主張します。

税務署および調査官の名誉のために名は伏せますが、先週の調査でそのように主張し今日に至るまで主張の撤回がないということは、統括官クラスも同様に考えているということだと思います。

法人はあくまでも経済合理性を追求する主体であり、税務上の解釈もそこを出発点とします。使用貸借の関係が発生しているならば、あるいはそのような契約があるならば、それは「仮装契約」とみなして税務上の判断を行うはずです。あくまでも、適正地代の収受が行われるべし、というところから議論はスタートします。

過大な地代支払いがあった場合には、役員給与の指摘が検討されたり、逆に法人地主が受取地代を収受していない場合には、受取地代の認定課税がされたり、というのは以上のような前提で構成される理屈です。

むろんAの個人所得の問題も発生しますが、これはあくまでも別問題。また借地権利金収受の慣行のない地域ですので使用貸借に伴う煩わしい税務の問題も発生しません。

税務署員の質の向上を切に望みます。納税者が税務署員の不勉強に振り回されることがあってはならないと思います。

 

 

今朝(7月11日付)の日経新聞に、金投資の特集記事が載っていました。

記事によると、調査機関のゴールド・カウンシルの試算では、株式55%、債権25%を中心とした標準的なポートフォリオに、金を4.4%組み入れると、組み入れない場合に比べて、利益の増加、損失の抑制効果のいずれもが認められたそうです。

かつて金を扱っている方から、金で利益を上げるのは至難の業だ、金をもつのは「趣味」の話と考えた方がよい、とお話しを聞いたことがあります。

日経の記事にもあるように、有事に強みを発揮する金は、平時には魅力のうすい商品になります。 金は有事への備えとして「買ったら忘れる」のが基本との考え方もあるという指摘もあります。

一方、国内投資家にとって最大のリスクのひとつが、円の急落とインフレというシナリオであると言われています。その意味で、金投資の重要性は増しているのかもしれません。

短期の利益を決して求めず、あくまでも急にお金が必要になったときまでに動かさないという覚悟を持てるか。それだけの余裕資金なのか、という見極めが金投資の勘どころでしょう。

 

 

医療法人の理事とMS法人の役員との兼務について、厚労省から通知が出ていることは、既報のとおりです。

今後、医療法人成りの手続等で、神経を使わなければならないところだと思います。

医療法人とMS法人との商取引の適正性についても、通知文書は言及していますので、今一度、契約内容の他社比較などを行ってみることが必要でしょう。

ところで契約内容の適正性については、興味深い判決が出ていますのでご紹介します。

医療法人が、コンタクトレンズ販売会社であるMS法人に対して支払った広告宣伝費について、東京地裁は広告宣伝費が、「寄附金」に該当する判断を下しました。

眼科診療所を経営する医療法人が、関連会社の新聞折込チラシ等の宣伝費用について、費用を一部負担していた事案で、その折込チラシ等について医療法人の名称等の記載がない等の理由から、医療法人の負担費用を税務署が寄附金と認定した更正処分を適法と判断しています。

MS法人の経費ではあっても、医療法人が負担すべき筋のものではないという判断です。

同一ビルに医療法人とMS法人が同居している場合など、MS法人の宣伝が事実上医療法人の宣伝の「効果」を見込める場合であっても、医療法人の広告宣伝という体裁を取らなければ医療法人の経費性は認められないと考えなければなりません。 

厳しい判断だと思います。

 

 

消費税率引き上げ法案に関する民主党と自民党との修正協議が、今月15日までに合意をめざす方向で進められています。

民主党が、低所得者層向け対策として打ち出している、「給付付き税額控除」制度に対して自民党は反対していることから、15日までの合意、21日国会会期末までの衆議院可決は、微妙な情勢です。

自民党からは、会期末まで残り僅かなことから、かりに消費税改正について合意をみたとしても、消費税以外の改正項目である所得税の最高税率引き上げや、相続税の基礎控除引き下げなどの税制抜本改革項目は、今年末の税制改正論議まで先送りするという見方が強まっているとのことです。

相続税改正については、自民党が強く反発していることから、かりに年末の論議に先送りされても、平成25年度税制改正に盛り込まれるかどうかは流動的です。相続税増税には所得間格差を埋め、消費増税を行うための環境整備をするという意味合いもあるのでしょうから、消費増税の決議のタイミングによっては、いっそう相続税制の改正のゆくえは、読めなくなると思います。

 

 

消費税率の引き上げをふくむ、社会保障と税の一体改革法が、衆院特別委員会で審議されています。

消費税率の引き上げの帰趨は予断を許しませんが、消費者に価格転嫁しづらい小規模事業者や、いわゆる「下請けいじめ」で価格転嫁できない零細事業者にとっては死活問題です。

政府・民主党は独占禁止法を改正して、消費税の転嫁拒否やこれに類する行為も禁止することを検討しているそうです。 また、独禁法や下請法に違反する事実がないかどうかを監視するため、公正取引委員会や中小企業庁による、「転嫁状況の調査」も強化する意向だそうです。

なお、最終消費者への転嫁が難しい零細事業者を救済するため、現在の免税点1千万円を引き上げて欲しいという中小企業側からの要望については、これを受け入れないという方針だそうです。

立場の弱い企業が、しわ寄せを受けないような仕組みは必要だと思います。
しかし一方で、京セラ創業者、稲盛和夫さんの「値決めは経営である」という言葉を、もう一度かみしめたいと思います。もはや、どのような価格戦略で生き残るかを真剣に考えなければならない段階に入ったのだと思います。

 

 

日本商工会議所では、東日本大震災による津波などで機械等を流失・損壊した事業者の復興支援を図るため、全国各地の事業者から遊休機械等を無償で提供を受け、被災事業者の要望とのマッチングを行う「遊休機械無償マッチング支援プロジェクト」を実施しています。

日本商工会議所HP↓
http://www.jcci.or.jp/region/tohokukantodaisinsai/matching/

通常、有休資産等を無償譲渡した場合は税務上、時価相当額について寄附とされますが、被災者のための資産等の無償提供は、取引先であれば寄附等には当たらないと定められました。

これに加えて、冒頭の日本商工会議所主催「遊休機械無償マッチング支援プロジェクト」に応じて取引関係のない企業に、資産を無償で提供した場合には「広告宣伝費」として損金算入が可能となる、とのことです。

なお資産の評価は、再取得価額を基礎にした「時価」にて算定することになります。

 

 

今年3月30日付で、厚生労働省医政局から、各都道府県厚生局に向けて、医療法人とMS法人の役員に関する通知が出されています。

「医療法人の役員と営利法人の役職員の兼務について」↓
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/dl/midashi_shinkyu120330b.pdf

これによると、「原則として」という前置きはあるものの、開設者である個人や医療機関の管理者(院長、施設長)については、「当該医療法人の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務していないこと」と、されています。

また、医療法人の役員についても、原則としてMS法人の役職員を兼務しないこと、とされています。

ただし上記は原則論であり、ただし書きにおいて、医療法人の場合以下のケースであれば例外を認めるとされています。

①MS法人からの物品購入、賃貸、役務の提供の商取引があり、医療法人の理事長ではないこと

②MS法人の規模が小さく、役職員を第三者に変更することが直ちには困難であること

③契約の内容が妥当であること

上記①、②、③のすべてを満たす場合であって、かつ医療法人の非営利性に影響を与えることがないものであれば、役員兼務が例外的に認められることになります。

さらに、医療法人が使用する土地又は建物をMS法人が賃貸する場合には、以下のような条件を満たせば例外が認められるとされています。

① 土地又は建物を賃貸する商取引があり、MS法人の規模が小さいことにより、役職員を 第三者に変更することが直ちには困難であること

② 契約の内容が妥当であること

上記①、②の条件を満たし、医療法人の非営利性に影響を与えることがないものであるときには、役員兼務が認められるとされています。

土地、建物に関しては、その取得にあたり医療法人の理事長が銀行融資の保証人になっているケースが多く、MS法人の代表者からはずれることも難しいことがあるため、上記のように、ややハードルが低めになっているものと思われます。

今後、MS法人の役員に関して、具体的な指導があるものと考えられます。役員兼務を継続する場合には、上記条件をクリアすることを確認する必要があります。

 

 

消費税法改正案では、新規設立法人の株式を50%超保有する事業者の課税売上高が5億円を超える場合には、同新設法人の課税免税点制度の適用を認めないこととしています。

これに加えて、「他の者により新規設立法人が支配される場合として政令で定める場合」にも、上記と同様の条件で免税点制度が使えない旨の規定が置かれています。

この「政令で定める場合」の範囲がいまだ明確ではなく、他の者からの債務保証を受け、資金提供を受けている場合なども含まれるのか、などの疑問が出ていました。

当局は、債務保証による資金提供などはこれに該当せず、政令に盛り込まない旨を明らかにしています。また議決権ベースによる新設法人支配がされている場合などを、政令に盛り込む予定とのことです。

政令に規定される「支配される場合」の範囲は、さほど広範囲ではなく、複雑なものでもないと考えられています。

 

 

固定資産税の納税通知書が納税者のもとに到達してから、1カ月が経とうとしています。

今年は3年に1回の評価替年に当たることから、土地・建物の評価が更改された通知書が手元に届いていると思います。

固定資産税の評価に不服があるときには、通知を受けた日から60日以内に「審査請求書」を提出し、評価のやり直しを求めることができます。

つまり、あと1カ月以内に審査請求書を出さなければ、今後3年間不当に高い固定資産税を納め続けなければならないことになります。

昨年、相続のお手伝いをしたご縁で、固定資産税評価額が異常に高額な土地を見出しました。納税者の依頼により、区役所の固定資産税課に不動産鑑定評価を持って訪ねたところ、評価替えの年でないため、「審査請求書」は受理できない旨の説明を受けました。

その後、押し問答の結果、評価が適正ではなかったこと、平成24年度の改訂時に相当の減額を行う旨の回答を得たので、納税者の了解を得て審査請求書の取り下げを行いました。

ところが、それから1年経過した今年4月、納税者から、評価額の変更がなされていない旨の連絡を受け、区役所に問い合わせたところ、「修正が漏れていました」との、あまり反省の色のない回答です。評価替えを行ったうえ、第2期以降の税額で調整するとの善後策を提示されました。

役所の仕事は常に監視の目を向けること、書類の取り下げは安易に行わないことが、教訓として残りました。

 

 

法人課税について、平成24年4月1日以後に取得する減価償却資産の定率法の償却率が、原則として、定額法償却率の「200%」(改正前は「250%」)に見直されることになります。

また、この制度の適用に伴い、次の経過措置が設けられます。

1..平成24 年4月1日前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度において取得した  減価償却資産について、改正前の「250%定率法」による償却ができるようにする。

2.「250%定率法」に基づいて減価償却を行っている資産については、今まで通り「250%定率法」により償却できるが、固定資産管理システムの修正の影響等により「200%定率法」を選択して減価償却を行った場合であっても、平成24年4月1日以後最初に終了する事業年度の申告期限までに届出をすることを要件に当初の耐用年数で償却を終了することができる。

なお、個人に関しては、平成24年取得分に関しては250%定率法、平成25年度以後取得分から200%定率法が適用されます。

ちなみに、250%定率法の償却率が高すぎるので、3年の繰越欠損期間でカバーしきれず、定額法に変更したいというケースもあるようです。この場合、新たな償却方法を採用しようとする年の3月15日までに、変更しようとする理由などを記載した「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。この提出には従前の償却方法を継続して「相当期間」が経過していなければならないとされ、相当期間とは3年とされています。

 

 

マイナンバー法案について、同法案成立後少なくとも3年間は、預金利子について適用を見送るようです。

現在のすべての預金口座の利息について、支払調書を出し、これにマイナンバーをふることは、コストの面だけでも見通しが立たないためです。

ところで、マイナンバー制度の要諦のひとつに、消費税の「給付付き税額控除」があります。

低所得者に対して、消費税率の引き上げが生活を圧迫しないよう、還付も含めて税額控除を行う制度です。

この実施時期を、民主党のまとめた中間報告では、「少なくとも平成28年7月以降」としています。平成27年10月には消費税率10%を予定しているため、1年以内には低所得者に対する手当をしたいということだと思います。

しかし、預金利息がマイナンバー法の対象になるとしても、早くて平成30年1月からということですので、民主党のスケジュールでは預金利息がマイナンバーの対象でない時期から、給付付き税額控除制度が動き出すことになります。

多額の預金利息のみで生活している人に対して、税金の還付が生じる可能性もあり、新たに議論を呼ぶことが予想されます。

 

 

国税庁は、平成22年分の相続税申告事績を公表しました。

公表の対象は、相続税額のある申告書で、平成23年10月31日までに提出されたもの及び震災特例法により申告期限が24年1月11日まで延長が認められた被災者が提出したものを合わせたものです。

これによると、被相続人数は過去最高となる119万7千人で、このうち相続税の課税対象被相続人数は約5万人、課税割合も4.2%と0.1ポイント微増しています。 また課税割合が増加するのは3年ぶりとなるそうです。

つい最近まで、被相続人の数はおおむね百万人と考えていました。 これがあっという間に120万人に到達し、2025年には170万人にまでふくれあがると言われています。高齢化社会への本格的な突入を実感する数字です。 

課税割合は微増しているようですが、税額そのものは前年度を割り込んでいるので、財産を「広く浅く」保有する分布に変わってきているのかもしれません。

相続税の改正がかりに行われ、基礎控除が大幅に引き下げられると、課税割合は当初予想よりも大きくなるかもしれませんが、税収もさほど見込めない可能性があります。

 

 

平成24年度税制改正法案は国会を通過していますが、この中に平成23年度税制改正大綱に盛り込まれていた「基礎控除の引き下げ・税率構造の見直し」は、含まれていないので注意が必要です。この点誤解をされておられる方が多いようです。

相続税の基礎控除の引き下げは「社会保障と税の一体改革法」に謳われており、これが成立すれば平成27年1月1日以後発生の相続から適用になります。 平成23年度税制改正大綱に盛られたスケジュール(平成23年4月以後相続適用)からみれば、だいぶ先延ばしの日程ではありますが、自民党などの強い抵抗が予想されています。消費税率引き上げとのバーターでまた先送りというシナリオも考えられます。

ところで、平成24年度税制改正では、一定の要件のもとで相続税の「連帯納付義務」は解除されることが、ようやく実現しました。

①申告期限等から5年を経過した場合、②納税義務者が延納又は納税猶予の適用を受けた場合には、未納の相続人分の相続税を他の相続人が連帯して納付する義務が解除されます。

納税者にとっては吉報です。

 

 

マイナンバー法のもたらす影響について何度か触れてきましたが、相続・贈与税への影響に関しては、現状ではさほど大きくないとの予測が立てられています。

マイナンバー法は、支払調書の提出が義務づけられているもの、すなわち「所得」の捕捉に関しては大きな影響を及ぼすものとみられます。

たとえば非上場株式の配当など、マイナンバー法によって名寄せされる予定ですので、配当所得の申告漏れなどはなくなって行くのでしょう。

しかし、個人間の非上場株式の譲渡など、支払調書の伴わない所得の捕捉には役立たないことになります。

また、調書の伴わない「資産」の把握は基本的にマイナンバー法の「枠外」と捉えて良いようです。

ただし、前述の非上場株式の配当に係る支払調書によって、「非上場株式の所有」そのものは捕捉されるので、相続等で申告漏れを指摘される機会は増えてゆくと考えられます。