2012年3月の記事

国税庁は、去る3月21日、平成22年度の法人企業の実態調査として、会社標本調査の結果報告を行っています。

国税庁標本調査結果↓
http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/kaishahyohon2010/kaisya.htm

これによると欠損法人の割合は72.8%にのぼり、過去最悪といわれた平成21年度と同率となっています。 黒字を出しているのは、4社に1社だけということになります。

欠損法人割合が高い業種は、料理飲食旅館業(83.8%)、繊維工業(83.1%)、出版印刷業(80.9%)の順で、これも平成21年度調査と変わりません。

なお、この調査は平成23年3月までに終了した事業年度を対象として調査のため、来年公表される平成23年度調査結果は、震災の影響を受け、より厳しい数字が予想されます。

また、平成22年度の交際費等支出額2兆9,360億円というのは、過去30年間で最低の金額となっています。調査時点からみて、震災の影響と言うよりも生き残りのための必死の削減努力の表れと見るべきでしょう。

寄附金の支出額は6,957億円となっており、前年度比で27.3%の増加で、寄付金の統計を開始した昭和37年分以降で過去最高額となっています。これは東日本大震災を受けての数字と考えられますので、平成23年3月に寄付金の額が集中したことを物語っています。

平成23年度標本調査では、交際費の切り詰め、寄付金の増額が、よりくっきりしたかたちで数字に表れることが考えられます。

 

 

社会保障分野や国税、地方税の賦課徴収のために、個人および法人に番号をつける、マイナンバー法案が今国会で成立する見込みが濃厚となっています。

法案によればマイナンバーの利用される範囲は以下の内容に厳しく限定されています。

① 社会保障分野での事務、税の賦課徴収および防災にかかる事務

② ①の事務の申請、届出を行う者の事務処理上必要な範囲での利用

③ 災害時の金融機関での利用

利用範囲が限定されるため、巷間心配されるような、個人所得と法人所得とを紐付けして課税の強化を図るということは、当局も意図していないようです。

ただし、個人番号は届出書、調書等に記入されるため、給与所得以外の資産から発生する所得の名寄せは容易になります。 これにより給与所得だけからは把握しきれなかった個人所得の全体像が明確に把握されることになります。

なお預金口座に関しては、調書にないことから、マイナンバー法の対象になるかどうか未定のようです。

 

 

国税庁は4月1日以後開始の事業期間から、消費税仕入税額控除の「95%ルール」を改めることに伴い、仕入税額控除等に関するQ&AをHPで公表しています。

国税庁HP↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/kaisei/pdf/kihon.pdf

このなかで、消費税基本通達11-2-19記載の個別対応方式に関する説明が注目されます。

同通達によると「合理的な基準」により、課税資産の譲渡等によるものと、そうでないものとを区分している場合には、その区分したところにより、個別対応方式を採用して構わない旨が記載されています。この「合理的な基準」をめぐって、納税者との見解の相違が生じたこともあります。

今回のQ&Aでは、「生産実績のように既に実現している事象の数値のみによって算定される割合で、その合理性が検証可能な基準により機械的に区分することが可能な」課税仕入を指す、とされています(問20参照)。

「既に実現している」事象から算定され、その結果が「機械的に」検証可能なものというまとめになっています。

 

 

消費税増税を含む「抜本改革法案」では、相続税改革についても触れています。

改正内容は、平成23年度税制改革の際に用意されていたものと変わらず、基礎控除の引き下げ、税率構造の見直しが含まれています。

このなかで、生命保険の非課税枠500万円が設けられるのは、法定相続人が①未成年者、②障害者、③被相続人と生計を一にしていた者、に限定する旨が明記されています。

この点について、一部の専門家から、未成年者等が実際に保険金を受け取ることが要件とされているのかについて疑問が投げかけられていました。

財務省による回答では、未成年者、障害者等が保険金の受取人である必要はないということです。  つまり未成年者等の扶養者が保険金を受け取ることとなっても、非課税枠に変更はないと考えてよいのだそうです。

今回の改正をにらんでの保険契約の見直しなどは、さしあたり必要はないようです。

 

 

平成24年4月1日以後に開始する課税期間から、消費税の仕入税額控除に係るいわゆる「95%ルール」が見直されます。

課税売上高5億円超の事業者については、課税売上割合が95%以上の場合であっても、仮払消費税を全額仕入税額控除できなくなります。

ここで留意すべきことは、控除できなかった仮払消費税の法人税法上の損金算入要件です。

控除対象外消費税等は、法人税法上損金算入することができるのが原則ですが、「資産」に係る控除対象外消費税額等については、「損金経理」が要件となっています。

「経費」に係るものについては損金経理の必要なく損金算入が可能なので、両者を混同しないように注意しなければなりません。

該当企業は、税抜き処理会計システムを個別対応にするか、などの対応に追われていることでしょうが、法人税法上のシステム対応も必要とされるところです。

 

 

税制抜本改革法案では、新設法人の消費税免税制度について、当該法人の株式を50%超保有する事業者と「特殊な関係にある法人」の課税売上高が5億円を超える場合には、新設法人を免税事業者としない旨の規定が設けられていることを、前回お伝えしました。

この判定基準となる「特殊な関係にある法人」には、すでに解散した法人もカウントされるのだそうです。

新設法人の、設立日前1年以内、または基準期間のない事業年度開始の日前1年以内に解散した法人があり、その法人が新設法人の「特殊な関係にある法人」に該当していた場合で、解散法人の課税売上高が5億円を超えていた場合にも、この新設法人は免税事業者とされないよう、改められるとのことです。

解散と設立を繰り返すことで、消費税免税制度を悪用するスキームを封じ込めることを狙った改正です。

 

 

消費税率引き上げを含む「税制抜本改革法案」は、所得税の最高税率引き上げを除いて、平成23年度税制改正の内容をそのまま引き継ぐ内容であることが判明しました。

このため、全体に目新しさは感じられませんが、消費税の免税制度に関する規定について、社会保障と税の抜本改革大綱以上に踏み込んだ箇所があり、注目されています。

社会保障と税の抜本改革大綱では、新設法人を直接・間接に50%超保有する事業者の課税売上高が5億円を超える場合には、当該新設法人を免税事業者としない旨が記載されていました。

今回の税制抜本改革法案は、これに加え、当該50%超保有する事業者と「特殊な関係にある法人」の課税売上高が5億円を超える場合にも、当該新設法人を免税事業者としない旨の規定が設けられています。

これによると、新設法人を直接・間接に保有する法人の課税売上高が5億円を超えない場合においても、例えばその法人の実質100%出資法人の課税売上高が5億円超である場合、新設法人は免税事業者として認められないことになります。

新設法人を利用した節税スキームに対しては徹底した封じ込めをしようという、財務省の強い意思が見られます。

 

 

平成24年度税制改正大綱では、給与収入1500万円超のサラリーマンの給与所得控除を頭打ちにするよう改正が予定されています。改正されれば平成25年分給与からの適用です。

平成23年度改正案に盛り込まれていた役員給与についての大幅縮減は、税と社会保障一体改革大綱からも抜け落ちているので、平成25年度税制改正で復活することもないでしょう。 以上は、既報のとおりです。

さて、そもそもの問題の発端となった「特殊支配同族会社課税」(平成22年度廃止)導入の裏話を聞くと、税務を「なりわい」としている者としては意気阻喪させられる思いです。

表向きは、新会社法導入に伴って、「法人成り」による過度の節税に歯止めをかけ、課税の公平をはかるというのが、オーナー課税導入の目的でした。

ところが、主税局の意向としては、あえて中小企業向けに厳しい税制を導入し、近い将来到来する消費税率引き上げに当たって、あたかもバーターのごとく、これを緩和することを、考えていたのだそうです。 つまり、消費税率引き上げの呼び水です。

本来所得税で調整すべきことを、法人税で調整するのはおかしいと、誰もが批判していたおかしな税制でしたが、仕掛けた当人(財務省)が、それを百も承知で導入していたようなのです。

国家百年の計を立てるために正確な歳入見通しを立てることと、歳入増のために持ち駒のように納税者を操ることとは、千里の隔たりがあります。

消費税率引き上げのような重要な事柄についての操作なら、なおさら罪は重いと思います。

 

 

見直しが検討されていた、法人契約がん保険の税務処理について、国税庁からパブリックコメントが出ています。  この件でパブリックコメントが出たのは初めてであり注目を集めています。

国税庁HP↓
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=410240007&Mode=0

法人を契約者および保険金受取人とし、役員および従業員を被保険者として加入した場合、一定の要件をクリアすることで、支払保険料の全額損金算入が認められるため、がん保険節税として知られていました。

以前から、保険料の前払い部分も損金算入できることについては、問題視されていましたが、今回、国税庁がついに通達改正に向けて一歩を踏み出しました。

パブリックコメントによると、全額損金で処理をしていた法人がん保険が、改正後は1/2損金になるという内容です。ただし、既加入契約に関しては全額損金のままで、改正後の契約分からは1/2になる模様です。

パブリックコメントの締切日が3月29日なので、少なくともこの日までは既契約として大丈夫なのではないかなど、憶測を呼んでいます。

改正の境目(と思われる日)に向けて、駆け込み需要が発生する可能性もあります。

 

 

昨年12月に公布された「税制構築法」等により、法人の減価償却制度が改正され、平成24年4月1日以後に終了する事業年度から適用されます。

国税庁HPでQ&Aが公表され、個別の取扱いが整理されています。

国税庁HP↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2011/pdf/1112kaisei_faq.pdf

原則として平成24年4月1日以後取得の減価償却資産について、従来の償却率が引き下げられ、250%定率法は200%定率法に変更されます。

注意すべき点は以下の事項です。

改正事業年度において減価償却資産について定率法を選定している場合には、平成24年4月1日からその事業年度終了の日までの期間内に取得をされた減価償却資産については、その減価償却資産を平成24年3月31日以前に取得をされたものとみなして、250%定率法により償却することができる特例が設けられています。
( この特例措置は法人が任意に選択することができ、選択するに当たり所轄税務署長への届出の必要はありません)。

また、この逆パターンの選択も可能です。

「200%定率法の適用を受ける旨の届出書」を税務署に提出することにより、250%定率法の適用対象資産についても、改正後の事業年度において200%定率法を適用することが可能です。
事務手続きの煩雑を避けるためなどのための配慮です。

今年4月決算法人から適用される改正ですので、今から注意をし準備をしておく必要があります。

 

 

30%の特別償却、7%の税額控除のいずれかを受けることができる「中小企業投資促進税制」は、平成24年度税制改正大綱において平成26年3月31日まで延長することとされています。

ここで注意すべきことは、従来、適用要件に柔軟性があった「デジタル複合機」に厳格な要件が課されるようになるという点です。

現行では、デジタル複合機に関して、複数台購入した合計額が120万円以上になれば制度の適用が可能でした。
国税庁HP↓
http://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5433.htm

ところが平成24年4月1日以降は、1台・1基の価額が120万円以上のデジタル複合機のみが適用対象となります。

まとめ買いによる特例適用が可能なのは、平成24年3月末までとなりますので、3月期決算の検討課題にされてはいかがでしょうか。