2014年6月の記事

医療法人が理事長に対して多額の貸付金を有することは時折見られます。

医療法人の口座から一括して引き落とされる諸経費の中に、私的な支出が混在していり、社会福祉法人への寄付を立替えているうちに、それを精算する機会を逸してしまい、利息とともに雪だるま式に増えてゆくというパターンがあります。

そして、この貸付金がネックになって、特定医療法人や社会医療法人に組織変更ができないという問題を誘発します。

とある税理士法人が、この問題を解決するとして、貸付金を法人の「営業権」として認識し直し、そのように経理処理をおこなったことがありました。

後日、税務調査において、これは理事長に対する債務免除であり、理事長への賞与として源泉所得税の納付義務があるという課税処分を受けます。

問題はここで終わりません。

課税処分を受けた医療法人は、源泉税の課税リスクを説明しなかったとして、税理士法人を相手取って損害賠償請求訴訟を起こしました。

東京地裁は、医療法人の主張を認め、税理士法人に損害賠償を命じましたが、最近の東京高裁判決では、税理士法人の主張を認める逆転判決を言い渡しました。

医療法人は特定医療法人への移行を切望していたため、かりに源泉税の課税リスクについて説明を受けていたとしても、同様の会計処理を行ったであろうというのが判決理由です。

ことのいきさつをたどっていくと、何とも気の滅入るような事案です。

もって他山の石としたい、というところです。