2012年1月の記事

国税庁は、グループ法人税制で繰り延べられた譲渡益が実現した場合などの、非上場株式評価について、質疑応答事例を公表しました。

これによると、完全支配関係がある法人(譲受法人)において、当該資産を再譲渡した場合など、譲渡会社において当初繰り延べていた「譲渡益」が法人所得に計上される場合には、譲渡会社の株式評価(類似業種比準方式)に当たって、「1株当たりの利益」に組み入れる必要はない、ということです。

すなわち、いったん繰り延べており外部事情で実現した譲渡益は、非経常的な利益であるため、これを除外して考えて良いということです。

至極、常識的な考え方だと思います。

一方で、含み損がある資産を譲渡し、グループ法人税制によって実現されずに繰り延べられる譲渡損失がある場合にも、譲渡損失はなかったものとして株式評価が行われます。

資本関係のない外部に売却した場合には、株価を低く抑えられるのと比較すれば、不利になりますが、そのような狙いも込めてのグループ法人税制でしょうから、これも当初の予想通りの結論です。

資産税のタックスプランニングにおいて、グループ法人税制から離れて非上場株式の評価を行ってはいけない、ということです。

 

 

法人契約の養老保険契約の満期保険金について、その一時所得計算の判断で、納税者が敗訴する判決が最高裁で下されました。

契約者=医療法人、被保険者=理事長の子、死亡保険金受取人=医療法人、満期保険金受取人=理事長 とする契約で、法人税基本通達9-3-4(3)の死亡保険金、満期保険金の受取人が逆となるため、「逆パターン養老保険」とも呼ばれています。

医療法人は、支払保険料のうち2分の1を役員報酬とし、残り2分の1を法人の支払保険料としていたところ、理事長の満期保険金の一時所得計算に当たり、法人が負担した保険料全額を控除していた点が問題とされていたものです。

最高裁判決では、一時所得計算上控除できるのは、一時所得を得た個人が自ら負担したものに限定されるとし、役員報酬として処理した分についてのみ控除が認められるという判断を下しました。

ちなみに、平成23年度税制改正では、すでに一時所得の計算方法を今回最高裁判決と同様にするよう明文化しています。

 

 

1月6日に政府・与党で決定された 「税と社会保障の一体改革」 素案ですが、その中に、役員給与の給与所得控除を改正する旨の記述がありません。

平成24年度税制改正大綱では、給与収入が1500万円を超える給与所得控除について245万円の頭打ちを設けるよう改正したものの、役員給与等に係る給与所得控除については「税率構造を含む改革の方向性を踏まえ、引き続き検討していきます」と述べるに留まっていました。

そこで、一体改革法案のあり方が注目されていたのですが、法案素案では言及がまったく見られないことから、野党の反発を見越して改正そのものを棚上げした、という見方が支配的です。

もともと、特殊支配同族会社に対する課税があまりに悪評で、これを選挙公約通り廃止するのと「差し替える」ように提示されたのが、役員給与の給与所得控除の縮減案でした。

平成23年度税制改正法案が通っていれば、「天下の悪法」として成立していたものですが、当面、復活はないものとみて良いと思われます。

 

 

土地建物の売買契約の途中で相続が発生したケースで、課税庁は「売買残代金請求権」を
相続財産と主張したのに対し、相続発生後、納税者は「手付け倍返し」で契約を解除しており、
土地建物が相続財産であるとして争っていましたが、広島地裁は納税者の主張を全面的に認める判決を下しました。

国税通則法では、

 ① 契約が解除権の行使によって解除された場合、又は
 ② 契約の成立後生じたやむを得ない事情により解除された場合

には、解除された後の事実に基づいて、課税標準の是正ができる、となっています。

裁判では「解除権の行使」に当たるかどうかについて、約定文言や当事者の行動をめぐって双方の主張が食い違いましたが、裁判所は、解除権の行使ができない客観的事実が確認できないとして、「解除権の行使」による契約の解除であると判断しています。

また、相続人らが当該土地建物を売却しなければ、相続税の納税がかなわないという思いこみのもとに、いわば動機の錯誤のもとに契約を行っており(相続後充分な現預金・生命保険が確認されている)、これらを「やむをえない事情」と納税者側が主張していた点についても裁判所は納税者の主張を支持しています。

つまり納税者の全面勝訴判決となりました。