法務省は16日、被相続人の遺産分割で配偶者の優遇を図る民法改正案を次の通常国会に提出する方針を固めました。配偶者が相続開始時に居住していた建物に住み続ける権利「配偶者居住権」を新設するのだそうです。
居住不動産を遺産分割で取得してしまうと、法定相続分で考えた場合、自宅以外の相続財産の取り分が少なくなるので、自宅をより評価の低い「配偶者居住権」に置き換えて、他の財産もより多く取得させてあげようという話のようです。
さて、自宅評価で他の財産の取り分が少なくなってしまう、という相続なので、さほど大きな相続案件ではないでしょう。1億円をMAXと考えればよいかと思います。
たとえば土地2500万円、家屋500万円で、自宅評価総額3000万円であったとします。
配偶者居住権をどのように評価するのかわかりませんが、かりに1000万円とすると、居住権を伴わない自宅評価額は、これを差し引いた2000万円になるのかと思います。
配偶者居住権で保護されなければならない環境の配偶者と、子は同居していないでしょうし、子は自宅を別に所有していると考えられます。居住権なしの自宅評価は、おそらく小規模宅地の特例の恩恵を受けないことになります。
ここで、上記のケースで相続財産が1億円であったとき、配偶者がそのまま居住用不動産を相続した場合と、配偶者居住権を相続した場合の相続税を比較してみます。配偶者と子2人のケースです。
配偶者が居住用不動産を相続した場合、小規模宅地の特例が使えるので、土地評価の80%すなわち2千万円が減額されます。自宅評価は1千万円ですが、分割は評価減を行う前の3千万円をベースにします。法定相続分で残り取得すべき財産は2千万円。相続税評価に戻すと、自宅1千万円+その他2千万円=3千万円となって、相続財産総額の50%に届かず、配偶者軽減の恩恵が少なくなります。税負担はおよそ220万円。
これに対して、配偶者居住権を相続した場合で、小規模宅地特例が使えない場合の、同条件の相続税は315万円。
相続税負担は100万円ほど増え、負担者は子になります。
二次相続は、いずれも5千万円の相続なので、80万円の同負担額になります。
配偶者居住権で保護しなければならない親と、おそらく仲の良くない子の、利害の対立する相続です。わずか100万円が両者の溝を決定的にしなければよいのですが。そう思います。