2013年3月の記事

消費税率引き上げに伴う「経過措置」の適用が可能かどうかの判断は、消費税の経理処理にとどまらず、契約総額にも影響するため十分な注意が必要です。

家賃契約は「資産の貸付」に該当し、対価の額の変更を契約で禁止していれば、経過措置の対象となって、9月までの契約分には旧税率5%が適用されると考えられます。

ところが、借地借家法32条で、地価上昇、下落など事情変更があった場合には、賃料の増減請求ができると規定されており、個別の契約上、賃料変更の禁止が謳われている場合でも、増減請求の権利は確保されています。

そこで、家賃契約が「経過措置」の対象となるかどうかが、注目されていましたが、法令解釈通達により、借地借家法32条の存在にかかわらず賃料変更できる規定が契約書に記載されていなければ、「経過措置」の対象となることが明らかになりました。

 法令解釈通達はこちらから
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 http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/kansetsu/130325/130325.pdf

また、この通達によれば、賃料改定を行った場合には、改定後の賃料に経過措置は適用できないのが原則としつつも、賃貸人が修繕義務を履行しないなど「正当な理由に基づく」改定であれば、経過措置の適用は認められるとしています。

このあたりは、今後周知されてゆくものと考えられますが、思い込みでの判断は危険であることを痛感させられます。

 

 

消費税率引き上げに伴う「経過措置」について、今年9月までに契約を済ませてしまえば広範囲に適用されるという誤解があるようです。

例えば、自動車学校の一定期間の受講料をパック料金にして、9月までに契約する契約などが経過措置の適用で、5%取引になるのではといった誤解です。

これは明らかに「経過措置」の適用されるどの契約にも該当しないため、4月以降の役務提供に対しては8%の消費税が課されることになります。

ビルメンテナンスの保守点検業務の一括パッケージ契約が「請負」に該当し、経過措置の適用が認められるのではないか、という疑問も生じるところですが、改正消費税法の施行令では、経過措置の適用対象となる「請負」契約を以下のように定義しています。

測量、地質調査、工事の施工に関する調査、企画、立案及び監理並びに設計、映画の制作、ソフトウエアの開発その他の請負に係る契約(委任その他の請負に類する契約を含む。)で、仕事の完成に長期間を要し、かつ、当該仕事の目的物の引渡しが一括して行われることとされているもののうち当該契約に係る仕事の内容につき相手方の注文が付されているもの

ビルメンテナンスサービスは「仕事の目的物の引渡しが一括して行われる」という要件を満たさないため、経過措置の適用を受けられないのです。

経過措置に関する誤解が契約当事者双方にあると、契約金額の総額が変わってしまう可能性があります。経過措置適用前の契約については、二重三重のチェックが必要とされます。

 

 

所有期間10年超の事業用 土地・建物・構築物を売却して、新たに土地、建物、構築物機械装置を購入した場合、売却益課税を繰り延べる「9号買換え」という制度があります。

10年超保有していれば大きなしばりもなく税負担を軽減した買換えができるため、重宝がられて使われてきました。税務に明るい経営者ならば「事業用で10年保有していれば買換え特例がきく」というのが常識でもありました。

ところが平成24年度税制改正で、新しく買換える資産のうち「土地」については、地積が300平米以上なければ特例の適用ができなくなってしまいました。

一方、平成23年の改正で法人の「立体買換え」(デベロッパーに土地を売却し、その土地上の建物と土地を代替資産として区分所有するような取引で、等価交換などとも言われる)

の特例が使えなくなったため、逃げ道として「9号買換え特例」が使われてきた経緯もあります。

ところが土地の300平米要件が入ってしまうと、立体買換えで土地を区分所有する場合、9号買換えの要件を満たさないケースが大幅に増えてしまいます。

新規に取得する「建物」部分には「9号買換え特例」は使えますが、土地はアウトということになってしまうのです。

地方の土地を売却し、都心の狭小地に節税目的のマンションを建てても、9号買換えの特例でしばりがかけられる、といふうに平成24年改正の際、解説されていましたが、法人の立体買換えの逃げ道がふさがれてしまう、という問題も引き起こしています。

不動産市況が活発化し、再開発事業なども展開される中で、企業や事業を行う個人の「打ち手」が少なくなっています。

 

 

政府は今国会中に「消費税の円滑かつ適正な転嫁のための特定事業者による消費税の転嫁の拒否等の是正等に関する特別措置法案」(転嫁対策関連法案)を提出し成立する予12定です。

今回の法案の対象となるのは「特定事業者」と「特定供給事業者」で、早い話が前者が取引上の「強者」、後者が「弱者」を指します。 強者に商品等を納入する立場の弱者に対して、消費税率引き上げ分の値下げ圧力などをかけないための法律です。

ここで注目したいのが、「消費税還元セール」などの表示を禁止すべく行政指導するとしていた原案が修正され、法的に禁止する規定が盛り込まれる予定であることです。

政府は大規模小売店による「消費税還元セール」が、ひいては価格転嫁を困難にするものとして問題視しており、今回の修正への動きにつながったそうです。

ただし、3%値引き、5%値引き、2%値引き等は、かりに消費税率引き上げ相当分を想起させるとしても、一律に法律で禁止することは難しいと考えられています。

法案の内容はまだ流動的ですので、今後の報道に注目したいと思います。