相続税の税務最新情報

昭和55年以来約40年ぶりに相続に関する規律を見直した改正民法(相続法)の施行日を定めた政令が閣議決定され、原則的な施行期日は2019年7月1日と定められました。 主な制度の施行日は、以下の3段階とされています。

 
①遺言制度に関して自筆でない財産目録を添付して自筆証書遺言を作成できるよう見直した自筆証書遺言の方式を緩和する方策は、一足早く2019年1月13日。

 
②遺産分割前の預貯金の払戻し制度や遺留分制度の見直し、相続の効力等に関する見直し等に関しては、2019年7月1日。

 
③配偶者の居住建物を対象として終身又は一定期間、配偶者にその使用を認める新たな権利「配偶者居住権」や配偶者短期居住権の施行日は2020年4月と、周知期間や関係法令の整備にやや時間を取った形になっています。

 

 

法務省は16日、被相続人の遺産分割で配偶者の優遇を図る民法改正案を次の通常国会に提出する方針を固めました。配偶者が相続開始時に居住していた建物に住み続ける権利「配偶者居住権」を新設するのだそうです。
居住不動産を遺産分割で取得してしまうと、法定相続分で考えた場合、自宅以外の相続財産の取り分が少なくなるので、自宅をより評価の低い「配偶者居住権」に置き換えて、他の財産もより多く取得させてあげようという話のようです。

 

さて、自宅評価で他の財産の取り分が少なくなってしまう、という相続なので、さほど大きな相続案件ではないでしょう。1億円をMAXと考えればよいかと思います。
たとえば土地2500万円、家屋500万円で、自宅評価総額3000万円であったとします。
配偶者居住権をどのように評価するのかわかりませんが、かりに1000万円とすると、居住権を伴わない自宅評価額は、これを差し引いた2000万円になるのかと思います。
配偶者居住権で保護されなければならない環境の配偶者と、子は同居していないでしょうし、子は自宅を別に所有していると考えられます。居住権なしの自宅評価は、おそらく小規模宅地の特例の恩恵を受けないことになります。

 

ここで、上記のケースで相続財産が1億円であったとき、配偶者がそのまま居住用不動産を相続した場合と、配偶者居住権を相続した場合の相続税を比較してみます。配偶者と子2人のケースです。
配偶者が居住用不動産を相続した場合、小規模宅地の特例が使えるので、土地評価の80%すなわち2千万円が減額されます。自宅評価は1千万円ですが、分割は評価減を行う前の3千万円をベースにします。法定相続分で残り取得すべき財産は2千万円。相続税評価に戻すと、自宅1千万円+その他2千万円=3千万円となって、相続財産総額の50%に届かず、配偶者軽減の恩恵が少なくなります。税負担はおよそ220万円。
これに対して、配偶者居住権を相続した場合で、小規模宅地特例が使えない場合の、同条件の相続税は315万円。
相続税負担は100万円ほど増え、負担者は子になります。
二次相続は、いずれも5千万円の相続なので、80万円の同負担額になります。

 

配偶者居住権で保護しなければならない親と、おそらく仲の良くない子の、利害の対立する相続です。わずか100万円が両者の溝を決定的にしなければよいのですが。そう思います。

 

 

平成29年5月29日から『法定相続情報証明制度』が施行され、相続手続きの負担が軽減されました。
『法定相続情報証明制度』とは、法務局に
(1)被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍関係の書類等 、
(2)(1)に基づく法定相続人情報一覧図(被相続人の氏名、最後の住所、生年月日及び死亡年月日、並びに相続人の氏名、住所、生年月日及び続柄の情報)
を提出すると、『認証文付き法定相続情報一覧図の写し』を交付してもらえるというものです。
 

従来は複数の不動産の相続手続きをする場合、管轄法務局ごとに戸籍関係書類一式を用意しなければなりませんでしたが、『認証文付き法定相続情報一覧図の写し』は無料で必要な分だけ取得でき、戸籍書類一式に代わって相続登記に利用できます。
金融機関での被相続人にかかる預金等の払戻しにも利用できる予定なので、戸籍関係書類をいくつも用意する必要がなくなり、相続手続きの負担が軽減されます。
 

ただし相続税申告書には、法令で『被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本』を添付することが定められています(相続税法施行規則16条3項)。
この『認証文付き法定相続情報一覧図の写し』が戸籍謄本に代わる申告書の添付書類として認められるには、法令の改正が必要であり、それまでは相続税申告で利用することはできませんので注意が必要です。

 

 

今日の日経新聞1面に、配偶者に生前贈与した居住用物件は、遺産分割の対象にしないよう見直す試案を、法制審がまとめたことが載っていました。
生前贈与分についても、このような取り扱いだったのかと、改めて認識した人も多かったのではないでしょうか。
預貯金に対する、遺産分割の考え方も、この数年で大きく変わっています。
つい最近まで預貯金払戻請求権は,相続開始とともに法律上当然に分割されて,各共同相続人が相続分に応じて権利を取得するため,原則として遺産分割の対象とならないと解されていました(最判平成16年4月20日等)。
ところが、現在では預貯金払戻請求権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることなく,遺産分割の対象になると解されるようになっています(最大判平成28年12月19日)。
民法の原則について、整理をすることの重要さを痛感します。

 

 

一人っ子家族で、両親が相次いで亡くなった場合、例えば父が亡くなって相続財産が未分割なまま、母が亡くなった場合、不動産登記が従前よりも複雑になっています。

 

一人っ子が父の相続財産をすべて相続登記し、母の相続財産を引き続き相続登記するという従来認められていた方法は、昨年の東京地裁・高裁判決からできなくなっています。
まず、父の財産を法定相続分で母と一人っ子との共有財産としたうえで、母死亡後に母固有の財産と、いったん共有持分とした父親財産とを一人っ子が引き継ぐという段取りになるのだそうです。
子が複数の場合には、第一次・第二次相続のいずれの場合にも複数の相続人がおり、遺産分割協議が成り立つので、上記のような面倒な手続きは必要ありません。これでは判決の意図するところがわからず、司法書士さんにも大変不評な判決です。

 

判決全文→http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/478/084478_hanrei.pdf

 

税務上は「相次相続控除」という仕組みがあるので、結果の税負担は同一であるようにも見えますが、例えば第一次相続の財産が基礎控除以下であって、第二次相続の相続財産が大きな場合では、税負担に差異が生じるのではないでしょうか。
第一次相続ですべて子が相続しておれば、第二次相続の税負担が少なかったはずなのに、共有持分となってしまったばかりに、第二次相続の負担が大きくなるのではと思います。

税負担の平等という観点からも、手続きに見直しが必要ではないかと考えます。

 

 

国税庁は現行事務年度から、東京、名古屋、大阪の3局にプロジェクトチームを設置し、資産規模の特に大きい「超富裕層」に対する管理を強めることにしています。

 

調査を行う上で指針となる「試行通達」をこの事務年度中(H27.7~H28.6)に示したうえで、来事業年度(H28.7~H29.6)から取り組む予定とのことです。
わずかに漏れ聞こえる情報では、A・B・Cに3区分された対象者により国税当局の対応が異なるという話ですが、その資産規模の分類基準などは公にされていません。

 

なお、この試行通達は国税局のHPなどで公表させることのない、完全な内部文書扱いになる予定とのことです。

 

 

1日の路線価発表に伴い、相続税のご依頼を受けているお客様に、財産評価の変更点をお知らせしました。
 

福岡市内では、最高値の中央区天神2丁目が5.6%の伸びを見せており、再開発の進む博多駅前2丁目(駅前通り)で9.8%増という大きな伸びが見られます。

市内中心部については、商業地、住宅地に係らず堅調な伸びですが、今回ご相続案件の物件を見ていて、さほど人気スポットともいえない住宅地区も5%~6%の伸びを見せているところが目立ちます。
 

東京資本の福岡都心部への投資が熱を帯びる一方、過熱気味であるという共通認識も芽生え始めており、いったん冷却させる動きが出てくるかもしれない、とのメディアでのプロのコメントも見られました。

 

 

「結婚・子育て支援信託」や「教育資金贈与信託」は俗に「税理士いらず」とも呼ばれ、税理士の評判が極めて悪い制度です。

これは単に職域を荒らされるといった単純な理由からではなく、我々に任せてもらえれば、もっとタイムリーかつ効果的な贈与計画が立てることができるし、途中でよりよい制度への切り替えもできるのに、という税理士の「歯がゆい思い」からです。
 
それでも、なぜ納税者がこの制度を選択するのかといえば、言うまでもなく信託銀行の信用力があるからでしょう。
そしてもうひとつ、財産を残す側が「認知症」になって成年被後見人になってしまった場合、相続対策として打てる手が全くなくなってしまうからでもあります。
判断能力があるうちに、打てる手はすべて打っておきたい、そのためには複数の相手にまとまった金額を移転できる制度を最大限利用しよう。財産を残される側の気持ちとしては痛いほどわかります。
 
先般、家庭裁判所から専門職後見人に任命され、「成年後見支援信託」を開設するお手伝いをして、認知症の資産家を親族に持つ方のご苦労を、身近に経験しました。また本人の判断能力さえあれば、打つ手はいくらでもあるのに、という悔しい思いを生で聞く機会を持ちました。

我々税理士も、かりに元気な資産家からのご相談であっても、本人の判断能力は永遠に健在ではないという事実に立ち返って、アドバイスをしなければならないと痛感するところです。

 

 

医療法人の出資持分を、出資者全員が放棄し、相続税法66条4項に照らして贈与税が課せられるとして、その場合の贈与税課税の対象額がいくらになるのか。
たとえば出資金相当額を「基金」に振り替えるとして、その出資金相当額が課税対象になるのかどうかについて、明文での説明がなかなか見いだせないため、実務家の判断を迷わせるところです。
 
平成26年1月23日付 厚生労働省医政局指導課事務連絡のなかのQ2に実務上の判断が詳しく載っています。
↓ ↓ ↓
下記アドレスに掲載
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000035432.pdf
 
出資金相当分は贈与税の課税対象から外されるというのが正解です。
厳密な法解釈上は、問題ありなのかもしれませんが、これは課税庁とのすり合わせ済みの文書であることも付言されています。

 

 

昨日に引き続き、平成27年 類似業種比準価額の公表について
 
公表数字は国税庁の下記サイトをご覧ください。
↓ ↓ ↓

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hyoka/150601/index.htm
 
内容をよく見てみますと、業種による程度の差はありますが、昨年12月の値に比較すると株価Aは全般に引き下げられており、平成25年平均と平成26年平均とを比較すると、さほど大きな変動はない、というのが全体のトレンドのようです。
 
製造業(10)H25年平均 260 → H26年平均 222
卸売業(72)H25年平均 179 → H26年平均 199
小売業(84)H25年平均 278 → H26年平均 274
不動産(97)H25年平均 290 → H26年平均 281
その他(110)H25年平均 446 → H26年平均 248
 
左側のH25年平均値は今年春に公表された数字、右側のH26年平均値は今年、標本会社を入れ替えて6月15日に公表した数字です。
平均値の変動という点に注目すると、「その他の産業」の下落が特に目立ちます。

 

 

平成27年1月、2月の類似業種比準価額がようやく公表されました。

医療法人が適用される「その他の産業」の値が標本会社の入れ替えによってどのように変わるのか、非常に興味深いところでしたが、大幅な評価の引き下げという、思わぬ結論に達しました。
 
今年春に公表された平成26年12月のA値は591でしたが、標本会社の入れ替えによって、平成26年のA値平均は248と半額以下まで下がっています。
出資持分のある医療法人にとって、事業承継対策のとりやすい環境が整ったことになります。
 
標本会社の入れ替えによって、出資評価の基準が大幅に変更されることは予測可能性を阻害する要因として批判されてきましたが、過去2年間の極端な高値と、今回公表値との落差を見ると、特にその思いを強くします。

 

 

平成27年度税制改正に盛り込まれた「財産債務調書」の提出義務について、その解釈にばらつきがありましたが、以下のように解するのが正解だそうです。

 

1. その年分の所得金額が2千万円超であること

 

という条件に当てはまり、

「なおかつ」

下記2「または」3の条件に当てはまる人は提出義務者である。

 

2. その年12 月31 日において有する財産価額の合計額が3億円以上であること

 

3. 同日において有する国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の対象資産の価額の合計額が1億円以上であること(つまり有価証券等の保有額が1億円以上であること)

 

従来は、所得2千万円超である人は「財産債務明細書」を提出することになっていましたが、平成27年度分の確定申告(来年3月申告期限分)から「財産債務調書」の提出に変わり、提出しない場合には所得税・相続税の加算税にペナルティが付くことになります。

 

その提出義務者が、従来の2千万円超の「高所得者」ではなく、2千万円超の高所得者であり、なおかつ上記2または3の条件に合致する「資産家」に絞られることになります。

提出義務者に制限を加えたうえで、提出しない者へのペナルティ(提出した者への軽減も)を課して、手続きを厳格化するという改正です。

 

 

平成27年度税制改正大綱で、直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税措置が、平成31年6月まで延長され、拡充されています。

大綱では消費税率引き上げ前の駆け込み需要や、引き上げ後の受注落ち込みを抑制する目的で、引き上げ前後の期間(平成28年10月~平成29年9月)には、3千万円の非課税枠を設けるなど、大胆な措置を講じています。

 

さて、大綱では消費税率が10%である場合と「それ以外の場合」とに分けて、時系列の非課税限度額一覧表を掲げています。

この「それ以外の場合」に消費税率引き上げの平成29年4月以降の時期も含まれることが何を意味するのか、一目では判然としません。

 

この「10%が適用される以外の場合」とは中古住宅の個人間売買を想定しているのだそうです。売主が「事業者」でない個人から住宅を取得した場合、消費税10%適用外となるので、このようなケースにまで大幅な非課税枠を設ける必要はないとの判断のようです。

 

さて問題は、この法の趣旨を理解せずに3千万円の非課税枠を前提に、親が取得資金を負担してしまった場合のことです。「良質な住宅用家屋」を個人間で取引した場合には、1200万円の非課税枠しか使えず、差額の1800万円に贈与税がかかることになります。

十分な注意が必要とされるところです。

 

 

勇は5人姉妹のうち誰かが、義父と喜んで同居すると言い出すとは思えなかったし、断られると分かって義父が相談を持ちかけているとも考えられなかった。大吉のプライドの高さはよく知っているからだ。
そうすると、最近、大吉の店に泊りがけで仕事をすることもある日向子の顔が、突如頭に浮かんできた。
純粋培養で育てられて、自分の人生を打算抜きで真っ直ぐにしか見ることのできない、あの日向子に、まさか大吉を籠絡するような企みが浮かぶはずはない。勇はそう思うのだったが、どうしても日向子の顔が頭から離れないのだ。

 

いや、待てよ。日向子の母親の長子はちゃっかり者で、こういう「利に聡い」話に絡んできそうだ。これまでの物語展開からすると、ちょうど彼女に出番が回って来る頃だ。そう言えば、いかにもそのような気がする。
もうこの物語に誰が登場して、自分が誰なのかも判然としなくなってきた。頭の中が混沌とした小宇宙のように渦巻いている小島勇の正月であった。
(完)

 

というわけで、筆者にはこれ以上の物語を続ける「堪え性」が無いのですが、どうも、このような愉快な想像をかき立てる、湧き立つような気分が、去年の暮れあたり財務省の一室に横溢していたのではないか、と思うのです。

 

「児玉くん、この結婚資金300万てあたり、冴えてるねー。」
「先輩、茶化さないでくださいよ。出来るだけ資金使途はバラすようにっていうお達しでしたから、ちゃんと国会図書館で統計を見てきたんですから。」
「いや、悪い悪い。お勤めご苦労様です。」

 

なんていう明るい会話が、霞が関の煌々と明かりの灯る執務室で、展開されていたのだと思います。いや、そうに違いありません。

 

 

大吉の表情に一気に困惑の色が広がった。
孫の日向子はどうしようもなく可愛い。しかし、あの子だけを特別扱いするつもりなど毛頭なかった。ましてや5人姉妹の娘たちの人間関係がようやく落ち着きかけた今になって、こんな話を娘たちに出来る道理はなかったからだ。
それにしても、まだ少年のあどけなさを時折見せる高木に、これほどの説得力と威圧感とを持たせてしまう相続税の仕組みというのは、冗談ではなく魔界の妖力を帯びているのではないか、と背筋の寒くなる思いもする大吉であった。

 

そういう経緯があって、大吉はこのたぐいの話に動じない五月に、二世帯住宅の話があることを話す気持ちになったのだ。もちろんそこに同居するのが日向子かもしれず、その場合には遺言でもって日向子を相続人に加えなければならない、などということはおくびにも出さなかった。

 

「営業の高木くんが、俺の体の自由が効かなくなった時のことなんかを心配してな。誰か同居してくれる人がいれば安心でしょう、なんてことを言うんだよ。」
娘たちの誰一人として、すすんで同居すると言いだすはずがないと大吉なりに考えたからこそ、「じゃあ、板前修行の日向子がいいんじゃない」と娘たちの方から言ってくれるかもしれない、そういう目論見もあった。

 

相続税対策の営業戦略とは気がつかない五月は、誰が父さんの身の回りの世話をすることになるのかしら、という具合に、勇に相談をしてきた。これを聞いた勇は自分自身の生前贈与のドタバタもあったので、これは怪しいとピンときたのだ。

(続く)