2018年1月の記事

法務省は16日、被相続人の遺産分割で配偶者の優遇を図る民法改正案を次の通常国会に提出する方針を固めました。配偶者が相続開始時に居住していた建物に住み続ける権利「配偶者居住権」を新設するのだそうです。
居住不動産を遺産分割で取得してしまうと、法定相続分で考えた場合、自宅以外の相続財産の取り分が少なくなるので、自宅をより評価の低い「配偶者居住権」に置き換えて、他の財産もより多く取得させてあげようという話のようです。

 

さて、自宅評価で他の財産の取り分が少なくなってしまう、という相続なので、さほど大きな相続案件ではないでしょう。1億円をMAXと考えればよいかと思います。
たとえば土地2500万円、家屋500万円で、自宅評価総額3000万円であったとします。
配偶者居住権をどのように評価するのかわかりませんが、かりに1000万円とすると、居住権を伴わない自宅評価額は、これを差し引いた2000万円になるのかと思います。
配偶者居住権で保護されなければならない環境の配偶者と、子は同居していないでしょうし、子は自宅を別に所有していると考えられます。居住権なしの自宅評価は、おそらく小規模宅地の特例の恩恵を受けないことになります。

 

ここで、上記のケースで相続財産が1億円であったとき、配偶者がそのまま居住用不動産を相続した場合と、配偶者居住権を相続した場合の相続税を比較してみます。配偶者と子2人のケースです。
配偶者が居住用不動産を相続した場合、小規模宅地の特例が使えるので、土地評価の80%すなわち2千万円が減額されます。自宅評価は1千万円ですが、分割は評価減を行う前の3千万円をベースにします。法定相続分で残り取得すべき財産は2千万円。相続税評価に戻すと、自宅1千万円+その他2千万円=3千万円となって、相続財産総額の50%に届かず、配偶者軽減の恩恵が少なくなります。税負担はおよそ220万円。
これに対して、配偶者居住権を相続した場合で、小規模宅地特例が使えない場合の、同条件の相続税は315万円。
相続税負担は100万円ほど増え、負担者は子になります。
二次相続は、いずれも5千万円の相続なので、80万円の同負担額になります。

 

配偶者居住権で保護しなければならない親と、おそらく仲の良くない子の、利害の対立する相続です。わずか100万円が両者の溝を決定的にしなければよいのですが。そう思います。

 

 

国税庁は1月4日、HP上に「医療費控除に関する手続きについて(Q&A)」を掲載しました。

 

国税庁HP↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/iryohikozyoQA.pdf

 

平成29年度税制改正で同年分以降の所得税の確定申告において、医療費控除の適用の際に、医療費の領収書を確定申告書への添付又提示から、医療費の領収書に基づいて必要事項を記載した「医療費控除の明細書」の添付へと改正されたことを受けたものです。
Q&Aでは、主に医療費控除の明細書に代えて一定の記載があることを条件に提出が認められている、医療保険者が被保険者に交付する「医療費通知」の注意点を中心に掲載されています。

 

例えば、医療費について自治体の助成、未収金などにより、窓口で自己負担額の減免があるにもかかわらず、その金額が「医療費通知」に反映されていない場合は、減免分を除く実際に負担した医療費の額に基づいて医療費控除の額を計算することになります。
そこで「医療費控除の明細書」の「1 医療費通知に関する事項」のうち「(2) (1)のうちその年中に実際に支払った医療費の額」欄へ実際に支払った医療費の合計額を記載し、「医療費通知」に減免分がある旨を付記した上で、「医療費控除の明細書」と「医療費通知」を確定申告書に添付する必要があるとしています。