所得税の税務最新情報

住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月15日に施行されました。国税庁は13日、「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業(いわゆる「民泊」)により生じる所得の課税関係等について(情報)」を公表しています。
国税庁HPはこちら↓
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/0018005-115/0018005-115.pdf

 
これによると、所得区分は、自己が居住する住宅を利用して民泊を行うことによる所得は、原則として雑所得に区分されます。利用者から受領する対価には、部屋の使用料のほか、家具等の賃貸料やクリーニング代、水道光熱費、室内清掃費、日用品費、観光案内等の役務提供の対価などが含まれています。

 
ただし、不動産賃貸事業者が、一時的な空き部屋を利用して民泊を行った場合に得る所得は、不動産所得に含めても構いません。
また、専ら民泊で生計を立てるなど、民泊が所得税法上の事業として行われていることが明らかな場合は、その所得は事業所得に該当するとしています。

 

 

なにかと話題の多い仮想通貨ですが、昨年ビットコインなどの仮想通貨で儲けを得た方は、3月15日までに確定申告が原則必要です。所得区分は、一般的には「雑所得」となります。

 

ただしサラリーマンで、儲けが20万円以下の方については、その他に所得がない場合、確定申告は不要です。

 

仮想通貨の利益とは、単に売却をしてキャッシュを得た場合以外にも発生するので、注意が必要です。
たとえば仮想通貨を使って買い物をした場合には、仮想通貨の購入時価と買い物決済時価の時価差額を利益と認識します。
また、仮想通貨を他の仮想通貨と交換した場合にも、仮想通貨の購入時価と交換時点での時価差額を利益と認識します。

 

逆に仮想通貨で雑所得の損失が生じた場合、雑所得以外の他の所得と損益通算することはできず、損失の繰越もできませんので、税務上の救済はないと考えなければなりません。

 

 

国税庁は1月4日、HP上に「医療費控除に関する手続きについて(Q&A)」を掲載しました。

 

国税庁HP↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/iryohikozyoQA.pdf

 

平成29年度税制改正で同年分以降の所得税の確定申告において、医療費控除の適用の際に、医療費の領収書を確定申告書への添付又提示から、医療費の領収書に基づいて必要事項を記載した「医療費控除の明細書」の添付へと改正されたことを受けたものです。
Q&Aでは、主に医療費控除の明細書に代えて一定の記載があることを条件に提出が認められている、医療保険者が被保険者に交付する「医療費通知」の注意点を中心に掲載されています。

 

例えば、医療費について自治体の助成、未収金などにより、窓口で自己負担額の減免があるにもかかわらず、その金額が「医療費通知」に反映されていない場合は、減免分を除く実際に負担した医療費の額に基づいて医療費控除の額を計算することになります。
そこで「医療費控除の明細書」の「1 医療費通知に関する事項」のうち「(2) (1)のうちその年中に実際に支払った医療費の額」欄へ実際に支払った医療費の合計額を記載し、「医療費通知」に減免分がある旨を付記した上で、「医療費控除の明細書」と「医療費通知」を確定申告書に添付する必要があるとしています。

 

 

平成28年度税制改正で、相続によって取得した被相続人の居住用不動産の売却にも、3千万円控除の道が開けるようになりました。
ところが相続のご相談で、その売却物件が「昭和56年5月31日以前に新築」の要件を満たしておらず、3千万円控除の特例が使えないケースが多いことにも気づきます。

 

日付によって特例適用に差があるのは、昭和56年6月の建築基準法の改正により耐震基準が大きく改善されており、それ以前の建築については「空き家」のリスクが大きく、特例による救済が必要という政策的な判断からです。

 

さて、昭和56年5月31日以前に新築した物件で、未登記の場合には、「確認済証(同日以前に交付されたもの)」や、「検査済証(交付年月日が同日以前のもの)」、「建築に関する請負契約書」により証明できれば特例の適用が認められます。
また、新築日は昭和56年5月31日以前だが、その後増築したことが登記事項証明書に記載されている場合でも、3千万円控除の特例の適用は可能です。

 

 

国税庁はホームページに「29年分確定申告の医療費の明細書添付の義務化のお知らせ」を掲載しました。

 

国税庁ホームページ

↓ ↓ ↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/iryoukoujyo_meisai.pdf

 

平成29年度税制改正では所得税の医療費控除の見直しが行われ、これまで医療費控除の適用を受けるために確定申告書とともに必要だった医療費等の領収書の添付又は提示から、「医療控除の明細書」の添付に変更されました。

 

HPには、今回の改正のポイントとして医療費控除の明細書の添付が必要になったこととともに、確定申告期限等から5年間、医療費の領収書を保存する必要があり、税務署から求められた場合には提示又は提出する義務があること、医療保険者から交付を受けた医療通知書を添付することで明細の記入を省略できることを説明しています。

 

また、経過措置として平成29年分から31年分までの確定申告については、これまでの医療費の領収書などを確定申告書に添付するか、確定申告書を提出する際に提示することも認められていることを説明しています。

 

 

10月2日国税庁より、本人交付用の源泉徴収票や支払調書などには、マイナンバーを記載しないよう取り決めた旨の発表がありました。

国税庁HP
↓↓↓
https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/pdf/mynumber_gensen.pdf

 

源泉徴収票は住宅ローンをはじめ各種ローンの申し込みや、奨学金の申請、保育所への提出など、「民」への提出の機会の多いものです。
これらすべてについて、マイナンバーのマスキングを施すなどの措置がなく第三者が書類を提出すれば、「情報漏洩」に該当するところでした。

今回のマイナンバー不記載の決定によって、上記リスクは軽減されることになります。

本人交付用で記載が不要になるのは次の書類です。
・給与所得の源泉徴収票
・退職所得の源泉徴収票
・公的年金等の源泉徴収票
・配当等とみなす金額に関する支払通知書
・オープン型証券投資信託収益の分配の支払通知書
・上場株式配当等の支払に関する通知書
・特定口座年間取引報告書
・未成年者口座年間取引報告書
・特定割引債の償還金の支払通知書

 

 

シンガポールなど株式等のキャピタルゲインが非課税になる国に移住することによる譲渡所得課税の回避を防止するために、平成27年度税制改正では「出国時課税制度」の導入が検討されています。

出国時に株式・国債・社債・匿名組合出資などの評価額が1億円以上を所有する者(出国直近の10年間で5年以上居住者であった者)について、未実現のキャピタルゲイン課税を行うというものです。ただしこの制度は「納税猶予」の仕組みがセットになっており、出国期間中に資産売却を行わず「5年以内」に帰国した場合には、納税猶予となった所得税が免除されるという段取りになります。

この納税猶予の制度は、出国時に担保を提供し、納税管理人の届を出すことが条件になっていますので、資産家はいわば人質を置いて海外移住することになります。

その他、現段階でこの制度について分かっていることとして、以下のような事項が挙げられます。

・ビジネスの事情などで5年を超える海外滞在が必要な場合には、5年間の延長を認める措置があること。

・猶予期間中に一部資産を売却した場合には、その売却した資産分についてのみ納税猶予が取り消されること。

・猶予期間中に資産を売却したものの、出国期間中に資産価値が下落していた場合には、出国時の時価と売却価額との差額に相当する所得税について更正請求ができること。

・施行日は、平成27年6月1日からではないか。

などです。

資産家および資産家の海外移住に対するマークは、一層厳しくなります。

 

 

2014年2月20日立退料の所得区分

先般、弁護士が原告となる税務訴訟で、弁護士会役員が懇親会等に出席する費用が必要経費として認められる最高裁判決が出たところですが、今日ご紹介する事案は、裁判所が原告弁護士に不利益な判断を下したケースです。

弁護士である原告が、法律事務所の移転に伴い賃貸人から取得した「立退料」の所得区分が問題となっていた事案で、東京地裁は1月25日、立退料は事業所得に該当するとの判断を示しました。

原処分における事業所得との判断に対して、原告である弁護士は、立退料は弁護士の職務とはまったく関係ない収入であるため事業所得に該当せず、一時所得であると主張していました。 裁判所はこの判断を退け、課税庁の主張を認めたわけです。 

裁判所は、弁護士が業務を行う際には、弁護士法により法律事務所を設けることが必要とされ、その維持および管理の業務は、所得税法施行令94条1項の注書きにおける「事業所得を生ずべき業務」に含まれる、としています。 そのうえで、今回の立退料は、旧事務所から新事務所への法律事務所の移転に伴い増加する事業所得に係る必要経費を補填する趣旨のものであるから、所得税法施行令94条1項2号の規定により、事業所得に該当すると結論付けています。

所得税法施行令94条

不動産所得、事業所得…を生ずべき業務を行なう居住者が受ける次に掲げるもので、

その業務の遂行により生ずべきこれらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するものは、これらの所得に係る収入金額とする。

 二 当該業務の全部又は一部の休止、転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの

 

 

法人や個人が特定事業用資産(店舗、事務所やその敷地)を譲渡し、一定の要件を満たす事業用資産について買い換えた場合、課税を繰り延べる措置について、3年間延長する旨が平成26年度税制改正に盛り込まれています。

措置法37条5号では譲渡資産について短期所有(5年以下所有)の土地には、この特例を適用しない旨が規定されている一方で、同条10項では「個人」のみ短期所有物件の譲渡でも適用可能とされていました。 つまり、10年間の所有期間の定めのある1号・9号買換「以外」の買換え特例につき、短期所有土地について、法人は「不可」、個人は「可」という区別がされてきました。

今回の税制改正大綱では、法人課税についての記載はあるものの、「所得税についても同様とする」という文言があるのみで、個人についての短期所有土地の取り扱いが、従来通りなのかどうかが不明確でした。

担当省庁などからの回答では、個人については従来通り、短期所有土地についても課税繰り延べ措置が認められるということです。 よく使われる9号買換えについては10年間の所有が要件であるため、いずれにしても短期所有土地には適用はありません。

 

 

弁護士の弁護士会役員として支出した懇親会費などが、当の弁護士の必要経費になるか争われていた事案で、最高裁は上告していた国側の上告受理申し立てを受理しないことが明らかになりました。

これで、上記事案の支出は「必要経費」として認められることが確定しました。

納税者勝訴の高裁判決が、従来の課税実務の判断を覆すものだっただけに最高裁の判断が待たれていた事案です。

同様の「士業」の必要経費に関する考え方に、国税庁の判断変更を迫るものであることは間違いありません。

さらには、経費の要件として用いられることがある「事業にとって直接必要なものかどうか」という判断基準が、従来通りには機能しなくなることも考えられます。

 

 

ゴルフ会員権の譲渡損失に係る損益通算が、今年一杯で廃止という新聞報道が先月末になされたこともあり、いまだに今年中の廃止を前提に売買がなされているケースがあるようです。

12日発表の税制改正大綱では、廃止は来年4月1日以後譲渡からとされましたが、これについて周知されていないということです。

ゴルフ会員権は年内の売却を急ぐため「投げ売り」が発生し、相場が暴落しているという話も聞きます。

今回、納税者への不利益遡及となる1月1日廃止を避けたのは、平成16年の不動産譲渡損失の不利益遡及が多くの訴訟を引き起こしたため、同様のトラブルを避けようという思惑が働いたからだと言われています。

個人所得税の改正は1月1日が原則とされていた従来の考え方が、今回の改正によって完全に改められたと言えます。もちろん12月31日で特例措置が期限を迎えるものについては1月1日に新制度に移行します。マイホームの買換え特例など今年の不利益改正もこれに当たります。

 

 

ゴルフ会員権の譲渡所得の損失と他の所得との通算が、平成26年度税制改正で廃止になる見通しです。

廃止の方向は明白として、その実施時期がいつになるかが毎年の税制改正時期の関心事でしたが、ついに廃止のときが来るようです。

平成26年1月1日以後の取引から、損益通算が不可となるようですので、売却損を計上するならば、あと1か月しか残されていません。

この税制改正法案が国会を通過するのが来年3月あたりですので、あきらかに遡及して納税者に不利益な措置が法定されることになります。

平成16年に不動産の譲渡損失が、他の所得と損益通算不可となった時は遡及的に納税者に不利益になる法制の適否が最高裁まで争われましたが、問題なしとの判決が出ています。

繰り返しになりますが、ゴルフ会員権の売却損を有効に発生させるには、おそらく1か月の時間しか残されていません。悔いのないように決断すべき時です。

 

 

平成26年度税制改正大綱は12月12日(木)に決定する見込みで各項目の調整に入っています。

気になる動きとしては、「役員給与に係る給与所得控除の縮減措置」が財務省の強い意向で盛り込まれようとされていることです。

平成22年に廃止された、悪名高い「一人オーナー課税制度」に代わるものとして平成23年度改正案に盛り込まれながら見送られていた増税措置が、ここにきて再登場するという話です。

役員給与の額が、2000万円から4000万円の間は給与所得控除額が逓減され、4000万円を超えると125万円の控除で頭打ちになるというのが、23年度改正案でした。

給与所得控除を一定額を上限に、頭打ちになるという措置に関しては甘受できても、一定額を超えると減額される措置の合理性を見出すのは困難です。

自民党税調の議論を注視したいと思います。

 

 

平成24年度税制改正では、「グリーン投資税制」の拡充として、太陽光発電設備等にかかる即時償却制度が導入されました。

来年3月までに設備を取得し、1年以内に事業の用に供すれば、その事業年度に全額が経費になるという制度です。

ところが課税当局の見解では、個人が賃貸マンションを所有しており、その屋上に設備を設置した場合には「全量売電」の売却収入は、不動産所得になるとのことです。

税務上の取扱いは、余剰売電の場合と同様となり、事業所得に対する特例である即時償却は使えない、ということになってしまいます。

設備関連業者は、即時償却を前提とした利回り計算、投資回収期間計算を行って投資提案をしているため、今後一部で混乱が予想されます。

なお課税庁は、11月上旬にも質疑応答集を公表する予定だそうですが、すべての電力を売却する「全量売電」の場合には事業所得に該当するのではないか、と指摘する専門家もおり、この点をめぐって今後、見解の相違が発生する可能性もあります。

 

 

9月19日東京高裁で、弁護士会の役員が出席した懇親会の経費性につき、注目すべき判決が下されました。

昨年の東京地裁判決では、弁護士会役員として出席した懇親会について、その弁護士の事業所得計算上、いっさい経費性を認めないという判断を下していました。

今回の高裁判決では、弁護士会役員としての活動であっても、弁護士として行う事業所得を生ずべき業務に密接に関係しているとして、経費性を認める判断を下しています。

つまり納税者の逆転勝訴判決です。

裁判所は、弁護士会の公式行事後の懇親会であって、その費用の額が過大でないなどの4類型を挙げて、経費性を認めてよい旨を判示しています。

今回の判決が確定すれば、他の「士業」の経費性の判断にも変更が生じます。

今後の課税庁の出方が注目されるところです。