法人税の税務最新情報

去る10月12日、法務省は休眠会社等の整理作業を行うため、12年以上登記のない会社、5年以上登記のない一般社団・一般財団法人に対する法律の規定に基づく法務大臣の公告を行うとともに、該当する休眠会社等に管轄登記所からその旨の通知書を発送しました。

 

この公告により、これらの休眠会社等は、公告の日(10月12日)から2ヵ月以内となる今年12月12日までに、
1)役員変更等の登記の申請、
2)「まだ事業を廃止していない」旨の届出
のいずれか行わない場合は、同月13日付で解散したものとみなされ、職権で解散の登記がされます。

 

なお、対象となる12年以内又は5年以内に登記事項証明書や代表者の届出印の印鑑証明書の交付を受けていたかどうかや、通知書が届かない場合も、関係なく期限を過ぎると解散となることから、経営者等は確認が必要です。

 

 

税務調査に当たって、納税者のメール閲覧が許されるか否かは、税務調査のたびに調査官と法人との間で議論になるところです。

かりに閲覧が許されるとしても、「閲覧する対象の人」や「閲覧する期間」をめぐって限りない議論が続くことになります。

合理的な理由により、税務署によるメール閲覧を回避するに至ったケースが挙げられていましたので、ご紹介します。

ひとつは社内メールが「コンプライアンス・デスク」への伝達手段として使われていた、つまり内部告発などを受け付ける窓口として使われていたケースです。

税務調査を含め第三者がそのメールの中身を閲覧することが予想されるならば、制度自体の崩壊につながる恐れがある、というのが合理的な理由です。

もうひとつは取引先との秘密保持契約を締結していたというケースです。

税務調査といえども、情報を第三者に開示するためには、各情報につき取引先の了解を得ることが必要です。

しかしながら、複数社に対して個別情報の開示の了解を得ることは、事実上困難である、というのが閲覧を拒否する理由でした。

閲覧する側の根拠としては、昭和48年最高裁判決の「質問検査の必要があり、社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられている」という判例に拠ることが多いようです。

しかしながら、この「社会通念上相当な限度」や「合理的な選択」という文言自体、恣意的な判断に左右されやすい、あいまいな基準であると思います。

納税者自身が厳しいルールに縛られて経済活動を行っているならば、税務当局が、そのルールをまず尊重することは当然のことであると考えます。

 

 

法人税率引下げに伴う財源探しが続くなかで、役員や従業員の「福利厚生費」が標的になりそうです。

平成10年度税制改正では、社宅家賃をはじめとする福利厚生費が課税ベース拡大のターゲットとして挙げられましたが見送られた経緯があります。

過去の議論でペンディングになっていた項目は、法人税率引き下げに伴って、ふたたび見直しがなされることは避けられません。

福利厚生費に関しては、役員や従業員の給与所得課税の強化という側面と、法人の損金算入枠を新たに設けるという側面の2つの課税強化の方向が考えられます。

後者に関しては、一定枠以上の福利厚生費支出は利益分配であるという理論構成になるようです。

真っ先に狙い撃ちされそうなのが、社宅家賃の算出方法の見直しであるとも言われています。改正の動向を見極めながら、労使間の意見のすり合わせを早めに行う必要がありそうです。

 

 

平成26年度税制改正では、交際費等の額のうち、飲食のために支出する費用の50%の損金算入を認める特例が設けられており、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度に適用されます。

この制度の解釈を巡って、大綱発表当初から、若干の混乱が見られましたので整理をしてみます。

1. 大法人も、5,000円基準を適用可能

 大綱の書きぶりが、中小法人について飲食費50%との選択が可能というものだったため資本金1億円超の大法人については、「特例」の選択が認められないと解釈する向きもありました。 その後、大法人についての5,000円基準適用が確認されています。

2. 飲食費の50%は5,000円基準該当分を差し引いた残額に対して中小法人が「選択」できるのは、飲食費の50%損金か800万円頭打ち損金かのいずれかなので、5,000円基準はどちらを選択しても適用されます。

 したがって、50%飲食費の制度を採用する際にも、5,000円基準該当分は、まず差引いて計算することになります。

3. 社外交際の飲食費ならすべてOKではない

 50%損金飲食費は、5,000円基準における飲食費の範囲と同様になるとみられるので、ゴルフ、観劇、旅行等の催事に際しての飲食費は対象になりません。

 

 

課税当局は、中小企業投資促進税制の適用誤りの「よく見られるケース」について発表しています。

それによると、

① 資本金1億円の法人が税額控除を適用するケース

② CTスキャナなどの医療機器を機械装置として適用するケース

③ 貨物運送用小型自動車を適用対象とするケース

などの誤りが多いそうです。

①については、税額控除は資本金3千万円以下に限定。

②については、医療機械は「器具備品」であって「機械装置」ではない。

③については車両総重量が3.5トン以上のみ適用可。

なので、①、②については書類チェックレベルですぐに間違いに気が付く事項です。 

CTスキャナなど「見た目は明らかに機械」ですが、よくある間違いであることは、前から指摘されているポイントです。

3月決算に向けて間違いの無いよう気を付けたいところです。

 

 

平成26年度税制改正に、飲食費の50%相当分の損金算入を認める交際費課税の拡大が盛り込まれていることは周知のところです。

ところで、この改正が平成26年4月1日以後の「支出ベース」なのか、平成26年4月1日以後「開始事業年度ベース」で適用されるのかが不明確でした。

平成18年に導入された5千円基準が「支出ベース」で適用されたことから、いずれとも判断のつかないまま、当局の発表が待たれるところでした。

このたび、平成26年4月1日以後、開始事業年度から新制度が導入されることが明らかになり、この問題に決着がつきました。この制度の恩恵を受ける企業の多くが大法人であり、3月決算が多いことから混乱は少ないものと思われます。

 

 

平成26年度税制改正では、資本金1億円超の大法人にも、飲食費の50%が損金算入可能となりますが、「5千円基準」との関係について議論がありました。

税制改正大綱の文言では、中小法人について、50%損金算入特例との選択が可能との表現であったため、大法人について「5千円基準」特例の選択が認められないという判断が、一部実務家の間でなされたためです。

これについて、当局は大法人について5千円基準を制限するような法令を定める予定はないということで、この問題に関する混乱は収拾しました。

大法人としては、50%基準よりも5千円基準のほうが結局は有利ではないかとの意見もあり、今後実務の現場で試行錯誤を重ねていくものと予想されます。

 

 

2013年12月27日交際費課税の緩和

顧問先の忘年会などのお誘いを受けると、交際費に対する課税が緩和されることに話題が及ぶことが多くなりました。

平成26年度税制改正大綱で、大企業にも飲食費に限り、支出額の50%までが青天井で損金算入可能になったことが特に話題になっています。

この措置は中小企業にもおよび、800万円までを損金とするか、飲食費の50%を損金とするかが選択可能となります。

単純計算では、飲食費が1600万円を超える場合には、800万円の枠を使うよりも飲食費の50%の方が損金計上額は上回ることになりますが、まれなケースだと思います。

なお上記「飲食費」には、社内交際費は含まれませんので、充分な注意が必要です。 
また業務に関連しない役員のプライベートな交際費は、当然に損金算入の対象にはなりませんので、改めて注意をしてください。

 

 

平成26年度税制改正大綱に盛り込まれた、「生産性向上設備投資促進税制」について、「生産ラインやオペレーションの刷新・改善」によって同制度の適用を受ける場合、設備の取得は経産局の確認を受けた後でなければならないことが明らかになりました。

同制度のうちBパターンに該当する「生産ラインやオペレーションの刷新・改善は投資収益率が(中小企業に関しては)5%以上であることが求められ、その事実を税理士・会計士が「事前確認書」でまとめなければなりません。

この事前確認書を最寄りの経産局に提出し、その後1か月以内に「確認書」が発行される手順になっています。

事業計画がまず先にあり、設備投資が決まっているにもかかわらず、減税措置を受けるために、ぐずぐずと導入を先延ばしするという可能性もあるわけです。

早期の着手を心掛けなければなりません。

 

 

税務調査の結果、重加算税が課せられる項目のトップが「期ずれ」なのだそうです。

本来、当期に上がるべき売上を翌期に延ばしたり、経費の先取りをしたりといった内容を「期ずれ」と呼び、税務調査では、必ずチェックの対象となる項目です。

しかし、長期の視点で見れば、所得計算にマイナスが生じるわけでもないため、重加算税の対象と考えるには、極めて抵抗のある非違事項でした。

売上の繰り延べを意図的に行った場合でも、たとえば、来期の売上ノルマのハードルを引き下げるためなど、必ずしも税負担軽減を図っているとはいえないケースが見られるようです。

従って、同じ「仮装」でも、「質」が違うという認識がどこかにありました。

また、課税庁の側でも「期ずれ」に重加算税を課さないという内部通達があったようで、これが期ずれと重加算税が結びつかない大きな要因ともなっていました。

しかし、このような「常識」も完全に過去のものとなってしまったようです。

期ずれが重加算税の項目トップという事実は、当局の強い姿勢を表しています。

 

 

会社創業者など事実上会社をけん引してきた人物が、代表権を返上し平取締役などに就任する際、退職金を支給するケースがあります。 これを「分掌変更による退職金の支給」と言います。

代表権を返上すること、非常勤になること、給与は従前のおおむね半分以下にすること、重要な経営方針決定に関与しないこと、などの厳しい要件をクリアしてはじめて退職金の損金算入がみとめられます。

先日、国税不服審判所の裁決で、納税者にとって厳しい判断が示されました。

非常勤役員となった元代表者は、給与も3分の1程度に減額し、経営判断の根本に関わるアドバイスも行っていなかったといいます。おおむね上述した損金算入の要件を満たしているとも考えられる事案だったようです。

課税庁はこの元代表者が、主力商品の製造管理に関する技術指導を行っていたこと、会社の発行済株式の半数以上を所有していたことから、会社において重要な業務を行い、影響力ある地位を占めていると認定し、退職金を損金不算入としていました。

不服審判所も当局の見解を支持しています。

主力商品の製造管理のアドバイス行っていたとしても、それは熟練者が後継指導をしていたと考えれば、退職後の行為として妥当ではないかとも考えます。また会社に対する影響力をはかる基準として持ち株比率を持ち出すのは、いたずらにハードルを引きあげる判断ではないかと考えます。

経営の根幹にかかわっているかどうかは諸事情を総合判断しての結論であるとは思いますが、報道されている範囲内では納税者に酷な判断であるという印象を持ちました。

 

 

税制改正大綱のなかで注意しなければならない項目に「検討事項」があります。

最後に付け足しのように書かれているものの、今後の税制改正では俎上に上げるというメッセージ性の高い内容です。

平成25年度税制改正大綱には次のような文言が見られます。

 「小規模企業等に係る税制のあり方については、個人事業者、同族会社、給与

 所得者の課税のバランス等について、幅広い観点から検討する」

悪名高い「特殊支配同族会社課税制度」は、自民党時代に制定され批判によって縮小されながら、民主党政権時代の平成22年に廃止された経緯があります。

これとバーターするようなかたちで、給与所得控除の「頭打ち制度」が導入されて、同族会社の役員に対する課税問題は一段落したものと考えられていました。

自民党政権下では、この問題はまだ未解決であり、課税強化も検討するという認識であることのアナウンスです。

今後の税制改正の議論の中で、要注意の事項です。

 

 

今回も法人税調査事案です。

調査対象先企業は、節目の創立記念にあたり、従業員および取引先に記念品を贈呈しました。

この記念品の価額が高額で、現物給与に当たるのではないかという指摘です。

税務上のトラブルが発生しないように、処分価額が1万円を下回ることを確認していましたので、その資料を税務署に持参すると、今度は次の事例に該当するのではないかと指摘を受けました。

 自由に選択できる永年勤続者表彰記念品(国税庁HP)↓
 http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/gensen/03/07.htm

これは記念品について、文字通り「自由に」これが欲しいと希望できる場合の取り扱いを、照会事例として掲げたものに過ぎません。

調査対象法人は、4種類の記念品からの選択という方法を採用していましたが、授与者の希望通りの品物を贈呈することはしていません。

税務署の指摘は、文理解釈上の技術的な誤りではなく、端的に日本語読解力の欠如のなせるわざです。

もともとの記念品が現物給与に該当するという指摘にしたところで、通達の本旨は、儀礼的な要素の強いものであるから課税しない、ただし歯止めはかけるというものだと思います(法基通36-22)。

1万円という金額も、まったく恣意的に通達レベルで定められたものにすぎず、「お上に逆らうと煩いから」、やむなく納税者も配慮しているのが実情ではないでしょうか。

「税務の常識は一般の非常識」の例は、枚挙に暇がありません。

何でもよいから指摘してみて、課税できれば結果オーライという姿勢が露骨に過ぎるように思います。税務署もその見識を試されていることを心すべきでしょう。

 

 

2012年8月17日税務調査の顛末

法人税調査で、役員所有土地への法人地代復活を、「利益調整なので否認したい」と税務署が主張してきた件の顛末です。

地代支払い復活について、税務署側の主張が誤りであることを、しぶしぶ認めたのですが、地代の額が「適正ではないと感じる」ので、否認したいと主張してきました。

価額が適正でないという根拠も薄弱なまま、「何でもいいから、なんとかこちらの顔を立てられないか」という言いぐさです。

地代の額を改めて計算すると、いわゆる「通常の地代」の額に該当します。地代の額の根拠を示すと、すごすごと主張を撤回しました。

高齢の、濡れ落ち葉のような調査官の物言いならば、哀れも感じるところですが、まだ年齢も若く、現場の税務職員の模範として自らを律すべき統括官の、これが反応です。

現場の士気も落ちるでしょう。

怒りを通り越して、税務行政の行く末を案じさせるような一件でした。そして、ひょっとすると、このような滑稽な主張を繰り返すのは、それにおとなしく屈している税理士の存在が、原因としてあるのではないか、とも考えました。

 

 

前回ご紹介した、法人の支払地代をめぐる税務署の反応の続きです。

統括官が税務署に来るよう連絡してきたので、担当者に税務署に向かわせました。

担当者の報告では、支払地代を復活したのは「利益調整だ」と統括官は主張して譲らないのだそうです。

法人取引である以上、適正地代支払いを基準として、課税関係の判断をするべきだと、いくら主張しても理解できないといいます。40代の若い統括官だったというのですが。

そういえば別の調査で、不動産管理会社がマンション所有者から受け取る「管理料」が、どのような役務の対価なのかと若い統括官に真顔で聞かれて、彼の真意を測りかねたことを思い出しました。本当に管理料が何かを知らなかったようです。 これも2カ月ほど前の出来事です。

団塊の世代が退職したあとの税務署は、「空洞化」しているのではないでしょうか。

「これを喋ると程度が知れる」「のちのち組織全体が恥ずかしい思いをする」という判断は現場で恥をかいて、先輩にしかられて身に付く知恵だと思います。

今回のケースも、つまらない指摘をした担当調査官が署に帰って統括官にしかられて、恥をかくべき事項のはずです。

猛省を促したいと思います。