2014年の記事

平成27年度税制改正大綱が、本日公表されました。

教育資金贈与の非課税措置は平成31年3月31日まで延長され、結婚・子育て支援資金贈与は平成27年4月から平成31年3月までの時限措置として導入されます。

住宅取得資金の贈与非課税措置も平成31年6月30日まで延長されるので、次世代への大型非課税贈与措置が平成31年まで3つ並存することになります。

さて、教育資金については、もらった側が30歳までに使い切れなかった場合には、その使い切れなかった残額につき、もらった側に贈与税が課せられるという制度でした。

結婚・子育て支援資金についてはどのような取り扱いになるのか興味津々でしたが、思わず「ウーンとうなってしまう」内容です。もらう側の年齢条件は20歳から50歳までで、50歳を過ぎても使い切れなかった場合には(結婚も出産も子育てにも関係なかった場合には全額に対して)、もらった側に贈与税が課せられます。これは教育資金と同様です。

それだけにとどまらず、もらった側が50歳に達しておらず、贈与者(あげた側)が死亡した場合には、あげた側の「相続財産」として認識するという制度設計になっています。

結婚資金については300万円の上限が設けられたうえ、「子育て」の内容も、妊娠、出産、子の医療費、保育料といった使途に限定され、けっして「おおらか」な制度設計ではありません。

一定年齢までに結婚して、さっさと子を産んで、子育てしないと、非課税であげたはずの資金に高い贈与税が課せられるし、目の黒いうちに孫の顔を見せないと相続税がかかってしまう、という、いじましい制度になってしまいました。

仕組みを考えた側の立場に立てば、そうせざるを得ない理由もよくわかりますが、このような意地の悪い制度は、使う側の気持ちも歪めてしまうのではないでしょうか。「例のあの贈与のこともあるし・・・、はやく孫の顔を見せておくれ」という会話が、お茶の間で交わされることになるのかもしれません。

 

 

年の瀬選挙の影響で、来年中旬に延期とみられていた平成27年度税制改正大綱は、今年12月30日にまとめられることになりました。

具体的な内容として、法人税改革では、繰越欠損金の控除限度額の引き下げ、受取配当益金不算入の見直しを行うなど、厳しい方針が示されている一方、懸念されていた中小法人課税の見直しについては見送りとなるようです。

法人税率引き下げに伴い、中小法人の軽減税率見直しや特例措置の見直し、法人成りによる個人・法人間の税率差の歪みの是正など、中小法人にとって厳しい改正が予定されていましたが、平成27年改正では「見送り」となる様子で、ひと安心です。

留保金課税の中小法人への適用や給与所得控除の見直しなどの「狙い撃ち課税」は納税者の納得が得られにくく、いっそう重税感を募らせるだけだからです。

ともあれ、今年の大みそかは平成27年度税制改正大綱の読み込みを行って、一年の締めくくりをすることになります。

 

 

シンガポールなど株式等のキャピタルゲインが非課税になる国に移住することによる譲渡所得課税の回避を防止するために、平成27年度税制改正では「出国時課税制度」の導入が検討されています。

出国時に株式・国債・社債・匿名組合出資などの評価額が1億円以上を所有する者(出国直近の10年間で5年以上居住者であった者)について、未実現のキャピタルゲイン課税を行うというものです。ただしこの制度は「納税猶予」の仕組みがセットになっており、出国期間中に資産売却を行わず「5年以内」に帰国した場合には、納税猶予となった所得税が免除されるという段取りになります。

この納税猶予の制度は、出国時に担保を提供し、納税管理人の届を出すことが条件になっていますので、資産家はいわば人質を置いて海外移住することになります。

その他、現段階でこの制度について分かっていることとして、以下のような事項が挙げられます。

・ビジネスの事情などで5年を超える海外滞在が必要な場合には、5年間の延長を認める措置があること。

・猶予期間中に一部資産を売却した場合には、その売却した資産分についてのみ納税猶予が取り消されること。

・猶予期間中に資産を売却したものの、出国期間中に資産価値が下落していた場合には、出国時の時価と売却価額との差額に相当する所得税について更正請求ができること。

・施行日は、平成27年6月1日からではないか。

などです。

資産家および資産家の海外移住に対するマークは、一層厳しくなります。

 

 

有料老人ホームは、老人福祉法によって施設名称や管理者などを都道府県に届け出ることが義務付けられています。

厚生労働者の平成25年10月末時点での調査結果では、全国の有料老人ホームのうち未届のものは 911件にのぼり、その前年の調査の 2.3倍に急増したということです。
また、この未届ホームの全施設に占める割合は、9.3%と 1割近くにものぼるのだそうです。

これら未届施設に関しては、管理のずさんさが想定され、いずれ入居者の不利益につながるのだと思います。

ここで強調しなければならないことは、不利益を被るのは、入居者にとどまらず入居者の相続発生に当たって、相続人も税法上の大きな不利益を被るということです。

平成25年度税制改正により、平成26年発生の相続から有料老人ホームに入居して空家になった自宅の土地に関しても、小規模宅地の特例が適用され、80%の評価減が可能になりました。

しかしながら、入居していた有料老人ホームが未届であった場合には、特定居住用宅地とは認められず、80%の評価減の対象とはならない、とされています。

有料老人ホームの入居時にはこの点を十分確認しないと、税負担はとてつもなく大きなものになる可能性があります。

 

 

身体障害者用の物品、例えば義肢、盲人用杖、車椅子などが消費税法上、非課税に分類され、その譲渡に当たっては消費税が課されないことは、よく知られた事実です。

また、車両に取り付ける身体障害者用の補助装置も非課税であることは、同じ理屈ですんなりと理解できます。

しかし、一般の車両を購入し、これを改造する形で身体障害者用の補助装置を設置した場合、車両本体の消費税も非課税になるというのは、なかなか気が付かないことです。

驚くべきことに、健常者が一般の車両(とりわけ高級外車)を購入した際に、わざと簡易な補助装置を設置し、相当額の消費税を「節税」しているケースがあるというのです。 そして取り付けた補助装置は、購入後に取り外すのだそうです 

これを、一部の税理士が「節税スキーム」として指南しているというから開いた口がふさがりません。

税務当局はこれを問題視し、平成27年度改正で、車両本体分の非課税措置をはずすことを検討しているそうです。

車両の登録には相当のプロセスを要するのに、消費税に関してこのような悪質な「節税スキーム」の存在を許していたこと自体が不思議でしようがありません。

身体障害者に不利益が及ぶことがないよう留意しながら、早急な改正対応をしてもらいたいと思います。

 

 

税務調査に当たって、納税者のメール閲覧が許されるか否かは、税務調査のたびに調査官と法人との間で議論になるところです。

かりに閲覧が許されるとしても、「閲覧する対象の人」や「閲覧する期間」をめぐって限りない議論が続くことになります。

合理的な理由により、税務署によるメール閲覧を回避するに至ったケースが挙げられていましたので、ご紹介します。

ひとつは社内メールが「コンプライアンス・デスク」への伝達手段として使われていた、つまり内部告発などを受け付ける窓口として使われていたケースです。

税務調査を含め第三者がそのメールの中身を閲覧することが予想されるならば、制度自体の崩壊につながる恐れがある、というのが合理的な理由です。

もうひとつは取引先との秘密保持契約を締結していたというケースです。

税務調査といえども、情報を第三者に開示するためには、各情報につき取引先の了解を得ることが必要です。

しかしながら、複数社に対して個別情報の開示の了解を得ることは、事実上困難である、というのが閲覧を拒否する理由でした。

閲覧する側の根拠としては、昭和48年最高裁判決の「質問検査の必要があり、社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられている」という判例に拠ることが多いようです。

しかしながら、この「社会通念上相当な限度」や「合理的な選択」という文言自体、恣意的な判断に左右されやすい、あいまいな基準であると思います。

納税者自身が厳しいルールに縛られて経済活動を行っているならば、税務当局が、そのルールをまず尊重することは当然のことであると考えます。

 

 

医療法人が理事長に対して多額の貸付金を有することは時折見られます。

医療法人の口座から一括して引き落とされる諸経費の中に、私的な支出が混在していり、社会福祉法人への寄付を立替えているうちに、それを精算する機会を逸してしまい、利息とともに雪だるま式に増えてゆくというパターンがあります。

そして、この貸付金がネックになって、特定医療法人や社会医療法人に組織変更ができないという問題を誘発します。

とある税理士法人が、この問題を解決するとして、貸付金を法人の「営業権」として認識し直し、そのように経理処理をおこなったことがありました。

後日、税務調査において、これは理事長に対する債務免除であり、理事長への賞与として源泉所得税の納付義務があるという課税処分を受けます。

問題はここで終わりません。

課税処分を受けた医療法人は、源泉税の課税リスクを説明しなかったとして、税理士法人を相手取って損害賠償請求訴訟を起こしました。

東京地裁は、医療法人の主張を認め、税理士法人に損害賠償を命じましたが、最近の東京高裁判決では、税理士法人の主張を認める逆転判決を言い渡しました。

医療法人は特定医療法人への移行を切望していたため、かりに源泉税の課税リスクについて説明を受けていたとしても、同様の会計処理を行ったであろうというのが判決理由です。

ことのいきさつをたどっていくと、何とも気の滅入るような事案です。

もって他山の石としたい、というところです。

 

 

2014年5月30日税務調査の重点項目

課税庁にも、当年度の努力目標が掲げられており、それによると平成25年度の調査事務充実を目指す事項として「富裕層事案」「無申告事案」「海外関連事案」「消費税課税適正化」が挙げられています。

富裕層、海外関連は今後も重点項目として掲げられるのでしょうが、今年は特に消費税への対応に力を入れるようです。

具体的には、平成25年度所得税の確定申告が行われており、 消費税のみが無申告の場合、平成26年4月から6月にかけて、全件に文書照会をおこなって、自主申告されないときには、7月から随時、着眼調査(半日ほどの簡易な調査)をおこなう方針だということです。

さらに、所得税・法人税を「主」とし消費税を「従」とする税務職員の意識を改革させるべく、調査における消費税の重要度割合を高めてゆく方針だそうです。

消費税については、少なくとも基準期間の課税売上高は、もれなくチェックされていると考えなければいけません。

 

 

公正取引委員会は4月23日、昨年施行された「消費税転嫁対策特別措置法」に基づく処分で、初の社名公表を行いました。

公取委のHPはこちら↓
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h26/apr/140423tenka-kouhyou.html

社名を公表されたJR東日本の子会社は、納入業者による消費税増税分の仕入れ価格への転嫁を拒否したとして、業者負担分の支払いや再発防止を公取委から勧告されています。

4月1日以降、売上減を防止するためセールを企画し、全納入業者161社に文書で企画の参加を要請し、価格の引下げを要求していた点が、特別措置法第3条1号の納入業者に値引きを迫る「買いたたき」の規定に違反するとされました。

公取委は、これまで社名の公表はしない「指導」にとどめてきましたが、同社の売上規模や納入業者数を考慮のうえ判断し、社名公表に踏み切ったと言います。

最も重たいペナルティーをあえて課して、公取委は価格転嫁の徹底を呼びかける選択をしたということです。

 

 

法人税率引下げに伴う財源探しが続くなかで、役員や従業員の「福利厚生費」が標的になりそうです。

平成10年度税制改正では、社宅家賃をはじめとする福利厚生費が課税ベース拡大のターゲットとして挙げられましたが見送られた経緯があります。

過去の議論でペンディングになっていた項目は、法人税率引き下げに伴って、ふたたび見直しがなされることは避けられません。

福利厚生費に関しては、役員や従業員の給与所得課税の強化という側面と、法人の損金算入枠を新たに設けるという側面の2つの課税強化の方向が考えられます。

後者に関しては、一定枠以上の福利厚生費支出は利益分配であるという理論構成になるようです。

真っ先に狙い撃ちされそうなのが、社宅家賃の算出方法の見直しであるとも言われています。改正の動向を見極めながら、労使間の意見のすり合わせを早めに行う必要がありそうです。

 

 

4月分家賃の3月前受分については、新消費税率8%が適用されることは、既報の通りですが (2014年01月31日)、この処理についての問合せが多く寄せられます。

消費税法基本通達9-1-20で 「資産の譲渡等の時期は、当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日とする」とあるため、3月支払の前受家賃は5%でよいという解説記事などが出ていたため、混乱を招く結果になりました。

1月20日国税庁発表のQ&Aで、3月支払分でも4月家賃は8%になるとの解説があり、急きょ、上記見解に統一されました。

さて、3月受取り(支払い)の4月分家賃の消費税は、8%税抜き後5%分を仕入税額控除に当て、3%分を仮受金(仮払金)処理して翌期に繰り越したのち、翌期の仕入税額控除に当てることになります。

わずらわしい限りですが、このような会計処理を行ってください。

 

 

平成27年1月からの相続税大改正(大増税)と同時に、直系尊属からの贈与につき、税率の引き下げなどの措置がとられます。 生前贈与をしやすい環境が整うことになります。

確定申告の説明時に、「平成27年からですが」と強く前置きして、相続税対策としてご説明するようにしています。

110万円の基礎控除を引いた後の贈与額が、200万円超 400万円以下で5%税率引き下げ、400万円超 1000万円以下で10%税率引き下げですので、節税効果も相続税増税と相まって大きくなっていきます。

同時に、贈与税の調査件数が増えることも、念頭に置かなければなりません。「登記所通いは新人調査官の日課」と言われるように、登記簿情報は課税庁に筒抜けですし、法定調書の整備によって課税庁は調査のターゲットを絞りやすくなっているようです。

贈与の事実を把握して確実に申告することはもちろん、贈与者・受贈者の意思確認、受贈者が贈与税を負担すべきことの確認など、徹底して行わなければなりません。

 

 

消費税率引き上げを目前にして、転嫁対策法違反(所謂「下請けいじめ」)の特定事業者への立ち入り検査が本格化しているそうです。

多くの場合、政府の総合窓口センターへ「タレ込み」のあった事業者が対象になっているとみられます。

1月下旬に公表された調査結果では、164件のうち139件、つまり約85%が当局の指導を受けているということです。

立ち入り検査があった場合に、素直に検査を受け入れている限りは、勧告内容の公表などといった事態には発展しないようですので、まずは素直に検査を受け入れることと、納入業者への報復などは絶対に行わないことが肝心のようです。

 

 

平成27年から導入される相続税の増税に伴って、相続税の税務調査についてより深度あるものとすべく、税務当局はマニュアルを作成して準備をしているということです。

たとえば、「名義預金」とされるものの所属をめぐっては、客観的な証拠を集める事は難しく、その管理状況や運用状況について、相続人の証言に基づいて判断することが多いのが実情です。 このため法廷で納税者が証言を覆すことによって重加算税の根拠がなくなることも少なからずあります。

これに対応するため、マニュアルでは聴取書や調査報告書をその都度細かく作成して、証拠固めをするよう促しているそうです。

現在でも重加算税を課そうとする場合には、必ず修正申告前に「一筆」納税者に入れさせる慣行がありますが、あらかじめ課税庁職員が作成した原稿文を見ると必ずしも事実を正確に反映せず、拡大解釈を誘発させるものも散見します。

納税者にしてみれば何が重要な論点で、何を確認したいのかが不明確なまま、「その場の勢い」で署名させられるのではたまりません。

納税者も「一筆」入れる場合には、従来よりも一層注意をして不正確な申述を強いられないよう気を付けなければなりません。

 

 

二世帯住宅に対する小規模宅地の特例の緩和が、今年1月発生の相続から適用されますが、具体的取り扱いについての説明が、国税庁から公表されています。

 国税庁HPの説明箇所 (資産税課情報第1号) はこちら↓
 http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/sozoku/140115/pdf/01.pdf

事例を挙げた説明では、例えば、区分所有登記されていない建物に、被相続人甲と、相続人乙が居住しており、相続発生後相続人乙が居住を継続するとともに、いわゆる「家なき子」相続人丙が甲居住部分を取得した場合の適用について説明しています。

この場合、相続人甲取得分、乙取得分の土地はともに特定居住用宅地として、特例の適用になるとしています。

また問い合わせの多かった、甲と乙が「生計一」であった場合にも、丙取得土地に対して、特例適用があるとしています。