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昨年の国税不服審判所裁決のうち、医療法人に対する贈与に関するもので、興味深い事例が公表されています。

定款変更によって持分の定めのない医療法人に組織変更した法人が、土地の寄付を受けました。課税庁は、これを医療法人の受贈益として更正処分を行ったのに対し、納税者は医療法人の設立の際に贈与を受けた資産に該当するとして、法人税施行令136条の4を根拠に、益金不算入を主張していた事案です。

これに対して審判所は、法令の趣旨を解釈したうえで、納税者は医療法施行規則に基づいて、定款変更の方法で「持分の定めのない医療法人」へ組織変更したものであり、従前の医療法人の解散、清算の手続きを経た上で新たに設立されたものではないから、法人税法施行令136条の4の規定を外れると判断しました。 医療法人に対して受贈益課税が発生するという判断です。

妥当な判断だと思います。

持分のない医療法人には、出資評価に伴う相続税の心配がないことから、節税目的で医療法人への財産移転を図るケースは今後、絶えないのではないかと思います。税務上の問題のみならず、ケースによっては安定的な事業承継のありかたとしても、問題があると考えます。

  

 

 

計算ミスや法令の読み間違いなどで、申告した税額が過大であった場合、当局に税額の訂正を請求する制度を「更正の請求」と言います。

従来、更正の請求が出来る期限は、法定申告期限から1年間とされており、税額が過小であった場合の遡り期間である3年(個人)、5年(法人)とのバランスが問題となっていました。

今回の税制改正によって、更正の請求期限が原則5年間に延長されています。

ただし、この改正は、改正法が施行された平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来するものから適用になるため、それ以前のものは適用にならないというのが法律の建前です。

これでは、適用までに時間を要するため、国税庁は更正の請求に係る税制改正の留意事項を公表しています。

国税庁HP↓
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/kosei_proposal/tetsuzuki/01.htm
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/kosei_proposal/tetsuzuki/02.htm

これによれば、平成23年12月1日以前に法定申告期限が到来する申告の更正の請求期限は、従来どおり1年としながらも、増額更正ができる期間内であれば、「更正の申出書」を提出することにより、柔軟に対応し更正に応じるとのことです。

当面は、「更正の申出書」の提出そのもの、そして提出期限について神経を使わなければなりません。

 

 

この4月から、一般社団法人、一般財団法人として再スタートを切られた法人は、初めての一般法人としての総会のあり方に、戸惑われておられると思います。

多く寄せられる質問は、事業計画および収支予算案は、総会の決議事項なのかどうかというものです。多くの一般法人で予算案の総会承認を得ているケースが多いようなので、確信が持てないのだそうです。

一般法人の標準規定は、社員総会の決議事項とはなっていません。従って、基本的に理事会承認と考えて良いようです。しかし定款で事業計画および予算案を総会の決議事項としている法人も多いようなので、定款の確認が必要です。

また定款で総会の決議事項としていない一般法人であっても、理事会の承認を得たうえ総会で報告事項とする、などの配慮は必要と考えます。

 

 

消費税法等の一部改正案が成立した場合、新設法人の消費税免税制度について、新しい規制が設けられることについては、すでにお伝えしました。

新設法人を、直接間接に50%超保有する事業者の課税売上高が ①5億円超である場合、②5億円以下であっても、その50%超保有する事業者と「特殊な関係にある法人」の課税売上高が5億円超であった場合、当該新設法人に免税点制度が適用されないという点が注目されています。

改正法案では、新設法人が50%超保有する事業者に対して、課税売上高が5億円を超えるかどうかの情報提供を求めた場合、情報を求められた事業者はこれに答えなければならない旨、定められています。

ただし、財務省によると、この情報提供に対する具体的な方法や手続などを財務省令等で明らかにする予定はないということです。

同族関係など、情報収集をしやすい関係であるからという理由でしょうが、課税売上5億円超の判定等は納税者に下駄を預けたかたちになるようです。

 

 

今国会で成立する予定のマイナンバー法によって、上場・非上場株式等の配当、譲渡にかかる所得が名寄せされることを、前回お伝えしました。

上場株式については、証券保管振替機構(ほふり)が管理する台帳に、番号を振ることになると考えられますが、このコストを誰が負担するのかという問題が残っています。

株主のマイナンバーを確実に把握し、間違いなく税の捕捉につなげるためには、相当の労力と注意義務が必要と考えられます。

このコストを「ほふり」が単独で負担することは困難と考えられるため、結果として株式の発行体(企業)が負担するものと予想されています。

株主数が相当数に及べば、極めて大きなコストを覚悟しなければならないと考えられます。

また、非上場会社においても、事務作業の負担は計り知れないと予想されます。

 

 

今国会で成立することが見込まれている、「マイナンバー法案」ですが、上場株式の配当、譲渡にとどまらず、非上場株式の配当、譲渡に関しても、この制度によって名寄せされることが取材によって明らかにされました。

マイナンバーがふられる対象として、税務では「国民が税務当局に提出する確定申告書、届出書、調書等」と規定されており、この「等」のカバーする範囲が極めて広そうだ、という情報です。

捕捉されづらかった自社株の配当所得なども、もれなく名寄せされ、申告漏れを厳しく指摘されることになります。

 

 

弊事務所スタッフ、別府伸一をメンバーとする研究グループが、リスクマネジメント協会主催2012年次大会特別講習・研究発表会において、見事、「理事長特別賞」受賞(優勝)の快挙を果たしました。

東京、大阪、名古屋、福岡の4会場、合計32グループによる研究発表のなかで、別府伸一が所属する「福岡企業リスク研究会ローファームグループ」による研究発表「中小企業のための事業継続計画(BCP)導入」が頂点を極めたのです。

税理士事務所の確定申告期における激務をこなしながらの堂々の受賞です。心からおめでとうを言いたいと思います。

来年の4月にはロサンゼルスで開催される世界大会に「日本代表」として出場します。

ロンドンで鍛えたクイーンズ・イングリッシュで、素晴らしいプレゼンをしてくれるでしょう。

 リスクマネジメント協会のHPはこちら↓
 http://www.arm.gr.jp/

 

 

平成24年度税制改正で、「長期所有土地、建物等からの買換え特例」(9号特例)の対象となる買換資産のうち土地についてその範囲を限定するよう変更がなされています。

改正により、事務所等の一定の建築物等の敷地の用に供されているもので、面積が300㎡以上のものに限定する見直しが行われましたが、「一定の建築物等」の詳細については政令に委ねられていました。

3月31日付官報で公布された政令で、この一定の構築物等の内容が明らかにされています。

これによると、「事務所、工場、作業場、研究所、営業所、店舗、倉庫、住宅その他これらに類する施設(福利厚生施設に該当するものを除く)」と規定されています。

また、駐車場として利用されており、「建物又は構築物の敷地の用に供されていないことについて政令で定めるやむを得ない事情があるもの」に宥恕規定が設けられていますが、「やむを得ない事情」について政令は次のように定めています。

1)都市計画法第29条第1項又は第2項の規定による許可の手続、
2)建築基準法第6条第1項に規定する確認の手続、
3)文化財保護法第93条第2項に規定する発掘調査、
4)建築物の建築に関する条例の規定に基づく手続き(建物又は建築物の敷地の用に供されていないことが当該手続きを理由とするものであることにつき国土交通大臣が証明したものに限る)その他の行為が進行中であることにつき財務省令で定める書類により明らかにされた事情

つまり、駐車場として利用している場合には、開発許可申請を行っており、許可がおりるまでの間等、まさにやむをえず利用するようなケースのみを想定しており、通常の駐車場への買い換えは事実上、「不可」と考えざるを得ません。

 

 

税制抜本改革法案では、新設法人の消費税免税制度について、新しい規制を設けています。

この中で注目されるのが、当該新設法人を直接間接に50%超保有する事業者の課税売上高が5億円以下であっても、その50%超保有する事業者と「特殊な関係にある法人」の課税売上高が5億円超であった場合、当該新設法人に免税点制度が適用されないという点です。

ここで問題になるのが、「特殊な関係にある法人」がどの範囲まで含まれるのかです。

すでに解散した法人もこれに含まれることは既報のとおりですが、株主と「生計一の親族」もこれに含まれるとのことです。つまり個人株主が50%超保有する新設法人を設立した場合この株主と生計一の親族が別会社を50%超保有しており、この別会社の課税売上高が5億円を超える場合には、新設法人は免税制度を利用できないということです。

新設法人については、生計一の親族の会社についても注意を怠らないようにしなければなりません。

 

 

国税庁は、「役員給与に関するQ&A」に、「業績の著しい悪化が不可避と認められる場合の役員給与の減額」を付け加えています。

国税庁HP↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf

これによると、現状では数値的指標が悪化しているとまでは言えないものの、役員給与の減額などの経営改善策を講じなければ、客観的な状況から今後著しく悪化することが不可避と認められる場合には、業績悪化改定事由に該当する、という判断が可能とのことです。

また、今後著しく悪化することが不可避と認められる場合であって、これらの経営改善策を講じたことにより、結果として著しく悪化することを予防的に回避できたときも、業績悪化改定事由に該当するという説明を付け加えています。

経営状態が明らかに悪化して、初めて役員給与引下げなどの手段を講じるのでは、経営判断として遅きに失しているのは明白です。

手段を講じなければ悪化することが明らかであること、手段を講じることによって結果的に悪化を免れることができたことは、いずれも業績悪化改定事由に該当するのは、当然だと思います。

Q&Aは至極、常識的な判断を付け加えたものと考えます。

 

 

毎年恒例になりました、奥様医業経営塾の日程が決まりましたのでお知らせします。

診療でお忙しいドクターをかげで支える奥様に、分かりやすく医業経営についてご説明いたします。

節税にとどまらず、医業経営の勘どころをまんべんなく押さえることのできる、よい機会だと思います。 弊事務所会議室にて開催いたしますので、ご希望の方はご遠慮なくご連絡下さい。(092-715-55551 担当:隈和宏税理士)

なお、日程は以下のようになっております。

 第一講 6月 6日(水)10:30~12:30
     決算書の見方、税務調査について、
     資金繰り、医療経営の変化について

 第二講 6月20日(水)10:30~12:30
     やさしいマネー講座

 第三講 7月 4日(水)10:30~12:30
     クリニックのマーケティング戦略と労務対策

 第四講 7月18日(水)10:30~12:30
     節税対策、医療法人化・MS法人等の検討

 

 

国税庁は、去る3月21日、平成22年度の法人企業の実態調査として、会社標本調査の結果報告を行っています。

国税庁標本調査結果↓
http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/kaishahyohon2010/kaisya.htm

これによると欠損法人の割合は72.8%にのぼり、過去最悪といわれた平成21年度と同率となっています。 黒字を出しているのは、4社に1社だけということになります。

欠損法人割合が高い業種は、料理飲食旅館業(83.8%)、繊維工業(83.1%)、出版印刷業(80.9%)の順で、これも平成21年度調査と変わりません。

なお、この調査は平成23年3月までに終了した事業年度を対象として調査のため、来年公表される平成23年度調査結果は、震災の影響を受け、より厳しい数字が予想されます。

また、平成22年度の交際費等支出額2兆9,360億円というのは、過去30年間で最低の金額となっています。調査時点からみて、震災の影響と言うよりも生き残りのための必死の削減努力の表れと見るべきでしょう。

寄附金の支出額は6,957億円となっており、前年度比で27.3%の増加で、寄付金の統計を開始した昭和37年分以降で過去最高額となっています。これは東日本大震災を受けての数字と考えられますので、平成23年3月に寄付金の額が集中したことを物語っています。

平成23年度標本調査では、交際費の切り詰め、寄付金の増額が、よりくっきりしたかたちで数字に表れることが考えられます。

 

 

社会保障分野や国税、地方税の賦課徴収のために、個人および法人に番号をつける、マイナンバー法案が今国会で成立する見込みが濃厚となっています。

法案によればマイナンバーの利用される範囲は以下の内容に厳しく限定されています。

① 社会保障分野での事務、税の賦課徴収および防災にかかる事務

② ①の事務の申請、届出を行う者の事務処理上必要な範囲での利用

③ 災害時の金融機関での利用

利用範囲が限定されるため、巷間心配されるような、個人所得と法人所得とを紐付けして課税の強化を図るということは、当局も意図していないようです。

ただし、個人番号は届出書、調書等に記入されるため、給与所得以外の資産から発生する所得の名寄せは容易になります。 これにより給与所得だけからは把握しきれなかった個人所得の全体像が明確に把握されることになります。

なお預金口座に関しては、調書にないことから、マイナンバー法の対象になるかどうか未定のようです。

 

 

国税庁は4月1日以後開始の事業期間から、消費税仕入税額控除の「95%ルール」を改めることに伴い、仕入税額控除等に関するQ&AをHPで公表しています。

国税庁HP↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/kaisei/pdf/kihon.pdf

このなかで、消費税基本通達11-2-19記載の個別対応方式に関する説明が注目されます。

同通達によると「合理的な基準」により、課税資産の譲渡等によるものと、そうでないものとを区分している場合には、その区分したところにより、個別対応方式を採用して構わない旨が記載されています。この「合理的な基準」をめぐって、納税者との見解の相違が生じたこともあります。

今回のQ&Aでは、「生産実績のように既に実現している事象の数値のみによって算定される割合で、その合理性が検証可能な基準により機械的に区分することが可能な」課税仕入を指す、とされています(問20参照)。

「既に実現している」事象から算定され、その結果が「機械的に」検証可能なものというまとめになっています。

 

 

消費税増税を含む「抜本改革法案」では、相続税改革についても触れています。

改正内容は、平成23年度税制改革の際に用意されていたものと変わらず、基礎控除の引き下げ、税率構造の見直しが含まれています。

このなかで、生命保険の非課税枠500万円が設けられるのは、法定相続人が①未成年者、②障害者、③被相続人と生計を一にしていた者、に限定する旨が明記されています。

この点について、一部の専門家から、未成年者等が実際に保険金を受け取ることが要件とされているのかについて疑問が投げかけられていました。

財務省による回答では、未成年者、障害者等が保険金の受取人である必要はないということです。  つまり未成年者等の扶養者が保険金を受け取ることとなっても、非課税枠に変更はないと考えてよいのだそうです。

今回の改正をにらんでの保険契約の見直しなどは、さしあたり必要はないようです。