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平成24年4月1日以後に開始する課税期間から、消費税の仕入税額控除に係るいわゆる「95%ルール」が見直されます。

課税売上高5億円超の事業者については、課税売上割合が95%以上の場合であっても、仮払消費税を全額仕入税額控除できなくなります。

ここで留意すべきことは、控除できなかった仮払消費税の法人税法上の損金算入要件です。

控除対象外消費税等は、法人税法上損金算入することができるのが原則ですが、「資産」に係る控除対象外消費税額等については、「損金経理」が要件となっています。

「経費」に係るものについては損金経理の必要なく損金算入が可能なので、両者を混同しないように注意しなければなりません。

該当企業は、税抜き処理会計システムを個別対応にするか、などの対応に追われていることでしょうが、法人税法上のシステム対応も必要とされるところです。

 

 

税制抜本改革法案では、新設法人の消費税免税制度について、当該法人の株式を50%超保有する事業者と「特殊な関係にある法人」の課税売上高が5億円を超える場合には、新設法人を免税事業者としない旨の規定が設けられていることを、前回お伝えしました。

この判定基準となる「特殊な関係にある法人」には、すでに解散した法人もカウントされるのだそうです。

新設法人の、設立日前1年以内、または基準期間のない事業年度開始の日前1年以内に解散した法人があり、その法人が新設法人の「特殊な関係にある法人」に該当していた場合で、解散法人の課税売上高が5億円を超えていた場合にも、この新設法人は免税事業者とされないよう、改められるとのことです。

解散と設立を繰り返すことで、消費税免税制度を悪用するスキームを封じ込めることを狙った改正です。

 

 

消費税率引き上げを含む「税制抜本改革法案」は、所得税の最高税率引き上げを除いて、平成23年度税制改正の内容をそのまま引き継ぐ内容であることが判明しました。

このため、全体に目新しさは感じられませんが、消費税の免税制度に関する規定について、社会保障と税の抜本改革大綱以上に踏み込んだ箇所があり、注目されています。

社会保障と税の抜本改革大綱では、新設法人を直接・間接に50%超保有する事業者の課税売上高が5億円を超える場合には、当該新設法人を免税事業者としない旨が記載されていました。

今回の税制抜本改革法案は、これに加え、当該50%超保有する事業者と「特殊な関係にある法人」の課税売上高が5億円を超える場合にも、当該新設法人を免税事業者としない旨の規定が設けられています。

これによると、新設法人を直接・間接に保有する法人の課税売上高が5億円を超えない場合においても、例えばその法人の実質100%出資法人の課税売上高が5億円超である場合、新設法人は免税事業者として認められないことになります。

新設法人を利用した節税スキームに対しては徹底した封じ込めをしようという、財務省の強い意思が見られます。

 

 

平成24年度税制改正大綱では、給与収入1500万円超のサラリーマンの給与所得控除を頭打ちにするよう改正が予定されています。改正されれば平成25年分給与からの適用です。

平成23年度改正案に盛り込まれていた役員給与についての大幅縮減は、税と社会保障一体改革大綱からも抜け落ちているので、平成25年度税制改正で復活することもないでしょう。 以上は、既報のとおりです。

さて、そもそもの問題の発端となった「特殊支配同族会社課税」(平成22年度廃止)導入の裏話を聞くと、税務を「なりわい」としている者としては意気阻喪させられる思いです。

表向きは、新会社法導入に伴って、「法人成り」による過度の節税に歯止めをかけ、課税の公平をはかるというのが、オーナー課税導入の目的でした。

ところが、主税局の意向としては、あえて中小企業向けに厳しい税制を導入し、近い将来到来する消費税率引き上げに当たって、あたかもバーターのごとく、これを緩和することを、考えていたのだそうです。 つまり、消費税率引き上げの呼び水です。

本来所得税で調整すべきことを、法人税で調整するのはおかしいと、誰もが批判していたおかしな税制でしたが、仕掛けた当人(財務省)が、それを百も承知で導入していたようなのです。

国家百年の計を立てるために正確な歳入見通しを立てることと、歳入増のために持ち駒のように納税者を操ることとは、千里の隔たりがあります。

消費税率引き上げのような重要な事柄についての操作なら、なおさら罪は重いと思います。

 

 

見直しが検討されていた、法人契約がん保険の税務処理について、国税庁からパブリックコメントが出ています。  この件でパブリックコメントが出たのは初めてであり注目を集めています。

国税庁HP↓
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=410240007&Mode=0

法人を契約者および保険金受取人とし、役員および従業員を被保険者として加入した場合、一定の要件をクリアすることで、支払保険料の全額損金算入が認められるため、がん保険節税として知られていました。

以前から、保険料の前払い部分も損金算入できることについては、問題視されていましたが、今回、国税庁がついに通達改正に向けて一歩を踏み出しました。

パブリックコメントによると、全額損金で処理をしていた法人がん保険が、改正後は1/2損金になるという内容です。ただし、既加入契約に関しては全額損金のままで、改正後の契約分からは1/2になる模様です。

パブリックコメントの締切日が3月29日なので、少なくともこの日までは既契約として大丈夫なのではないかなど、憶測を呼んでいます。

改正の境目(と思われる日)に向けて、駆け込み需要が発生する可能性もあります。

 

 

昨年12月に公布された「税制構築法」等により、法人の減価償却制度が改正され、平成24年4月1日以後に終了する事業年度から適用されます。

国税庁HPでQ&Aが公表され、個別の取扱いが整理されています。

国税庁HP↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2011/pdf/1112kaisei_faq.pdf

原則として平成24年4月1日以後取得の減価償却資産について、従来の償却率が引き下げられ、250%定率法は200%定率法に変更されます。

注意すべき点は以下の事項です。

改正事業年度において減価償却資産について定率法を選定している場合には、平成24年4月1日からその事業年度終了の日までの期間内に取得をされた減価償却資産については、その減価償却資産を平成24年3月31日以前に取得をされたものとみなして、250%定率法により償却することができる特例が設けられています。
( この特例措置は法人が任意に選択することができ、選択するに当たり所轄税務署長への届出の必要はありません)。

また、この逆パターンの選択も可能です。

「200%定率法の適用を受ける旨の届出書」を税務署に提出することにより、250%定率法の適用対象資産についても、改正後の事業年度において200%定率法を適用することが可能です。
事務手続きの煩雑を避けるためなどのための配慮です。

今年4月決算法人から適用される改正ですので、今から注意をし準備をしておく必要があります。

 

 

30%の特別償却、7%の税額控除のいずれかを受けることができる「中小企業投資促進税制」は、平成24年度税制改正大綱において平成26年3月31日まで延長することとされています。

ここで注意すべきことは、従来、適用要件に柔軟性があった「デジタル複合機」に厳格な要件が課されるようになるという点です。

現行では、デジタル複合機に関して、複数台購入した合計額が120万円以上になれば制度の適用が可能でした。
国税庁HP↓
http://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5433.htm

ところが平成24年4月1日以降は、1台・1基の価額が120万円以上のデジタル複合機のみが適用対象となります。

まとめ買いによる特例適用が可能なのは、平成24年3月末までとなりますので、3月期決算の検討課題にされてはいかがでしょうか。

 

 

平成24年度税制改正で注目される点のひとつに、特定資産の買換え特例の延長があります。

非常に使い勝手のよい「9号買換え特例」は3年間延長されたものの、土地に買い換える場合、買換資産の用途制限と土地面積制限(300㎡以上)が加えられました。

買換資産の用途制限のうち、「賃貸用住宅」が含まれるのか否か、「政令」の内容待ちでしたが、賃貸マンションも「可」となる見込みのようです。

ただし、300㎡要件が課されることで、マンション1室への買換えは困難となります。

なお用途制限により「駐車場」は原則「不可」とされますが、「やむをえない事情がある」場合のみ、特例の適用が認められとされています。 この「やむを得ない事情」とは、例えば開発許可申請を行っており、許可がおりるまでの間、駐車場として利用するような事情を指すのだそうです。

例外規定も厳しいため、駐車場への9号買換え特例適用は難しいと考えるべきでしょう。

 

 

相続によって土地を取得したとき、その評価は当然に相続開始時の時価で算定されます。
一方、この相続によって取得した土地を売却した場合、譲渡所得の計算上、控除できる取得価額は、被相続人の取得価額を引き継ぐとされています。 つまり、被相続人が取得して相続開始までの値上がり益は譲渡所得の計算上控除されません。 このため、相続時までの増加額という経済的価値が相続税の課税対象額と、その後の譲渡所得の課税対象額に二度含まれることになるので、相続税と所得税の二重課税に該当するという主張は根強くあります。

長崎年金訴訟で、相続税と所得税の二重課税の問題を追及した納税者の主張が、最高裁で認められて以来、とくに相続税と所得税をめぐる二重課税について議論が活発になりました。

そのようななか東京国税不服審判所は昨年末、土地譲渡にあたり被相続人生前の値上がり益分を、譲渡所得計算上控除すべきだとする納税者の主張を退ける裁決を下しました。

納税者は、相続開始時までの値上り益相当額は、所得税法9条1項15号の非課税所得に当たると主張しましたが、裁決は、贈与等により取得した資産の取得費等はいわゆる取得価額引継方式を採用していることを理由に、値上り益分も課税対象に含まれると判断しました。

法は被相続人の保有期間中の値上り益をも含めて課税を行うことを予定している、という解釈です。

所得税法の規定ぶりから考えて、裁決の判断は致し方ないと思います。二重課税の議論を深めて、立法に反映させる努力が必要と感じます。

 

 

東日本大震災の義援金に対する所得税確定申告の取扱いで、一部誤解が見られるという報道がありましたのでご紹介します。

義援金等が、国又は地方公共団体に対する寄附金や財務大臣が指定するものなど、一定のものであるときは、「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。

このうち、中央共同募金会の「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」など、「特定震災指定寄附金」については、寄付金控除との選択により、「税額控除」の適用も受けることができます。

国税庁HPの東日本大震災義援金についての解説↓
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/gienkin/toriatsukai.htm

一部、誤解が見られる事案とは、日本赤十字社の「東日本大震災義援金口座」に直接振り込まれた義援金について、「税額控除」が可能と理解されているケースです。

公益性の高い団体の活動への寄付であるため、そのように理解されるのでしょうが、この寄付金に対しては「寄付金控除」の適用のみ認められているため、注意を要します。

税額控除について、中央共同募金会が「可」で、日本赤十字社が「不可」であることには、一般の理解を得られにくいところでしょうが、震災特例法と平成23年度税制改正法案の成立時期のズレなどから、このようなかたちになってしまったようです。

 

 

政府は昨日、社会保障・税に関わる共通番号制度に関する法案(マイナンバー法案)を閣議決定しました。

消費税増税に伴う、低所得者対策である「給付付き税額控除」を導入するならば、共通番号制度は欠かせないものでしょう。 一方で、国民に対する制度自体に対する周知不足と、プライバシー侵害への不安が、法案成立の大きなハードルになることは必至です。

ちなみにアメリカでは社会保障番号(social security number=SSN)が、事実上の国民識別番号として利用されています。 納税者番号、社会保障サービス受給番号としての利用に留まらず、運転免許証取得や更新、銀行口座の開設など、あらゆる場面で個人認証のための手段として使われています。

筆者はアメリカ滞在中、SSNで無作為に選ばれる「陪審員」に当たってしまい、大変な思いをしたことがあります。

わが国で共通番号制度を導入する場合、生体認証を組み込んで「なりすまし」などによる被害を排除することもあらかじめ検討しておかなければならないと思います。 生体認証には当然に「人権」の問題もかかわってきます。

難しい問題にいよいよ手をつけたという感がありますが、拒絶反応だけで議論自体を拒絶することは最も慎むべきことだと思います。

 

 

相続開始後に相続人が行った契約の解除によって、相続財産の法的位置づけが代わるのかどうかについて、興味深い判決が広島地裁で下されました。

この事件は、被相続人が土地建物の売買契約を交わして手付金を受け取った後に相続が開始し、相続人が手付金の倍額を支払って売買契約を解除した後、課税財産を土地建物として申告したケースです。 

課税庁は、課税財産は土地建物ではなく、売買残代金請求権であるとして更正処分をしてきたため、相続人がその取消しを求めていました。

土地の相続税評価額は、一般的に時価の8掛け程度、建物の相続税評価はさらに低くなるのが相続税評価の世界であるため、相続財産が土地建物なのか売買代金請求権なのかによって税負担が大きく異なるわけです。

課税庁の論理は、被相続人と買い手との間には、強固な売買契約履行の意思があった為、相続人の意思や行為に関わりなく、代金債権こそが相続財産であるというものでした。

広島地裁は、事実関係を整理した上で、売買契約の解除は手付契約に基づく解除権の行使による解除であるから、国税通則法23条2項3号の「解除権の行使によって解除された場合」に該当すると認定し、納税者の主張を認めました。

判決によると、手付契約に基づく解除であるから土地建物の売買契約は被相続人が売買契約を交わした日に遡って消滅し、相続開始日においては売買契約が存在せず、売買代金債権も存在しなかったという解釈になります。

相続開始時には契約を解除しうる状態にあり、これに基づいて現に契約が解除されている以上、被相続人の意思や契約当事者との関係は、第二義的な意味合いしか有しないと考えるのが、当然だと考えます。

ちなみに、国側敗訴のまま判決は確定しています。

 

 

国税庁は、グループ法人税制で繰り延べられた譲渡益が実現した場合などの、非上場株式評価について、質疑応答事例を公表しました。

これによると、完全支配関係がある法人(譲受法人)において、当該資産を再譲渡した場合など、譲渡会社において当初繰り延べていた「譲渡益」が法人所得に計上される場合には、譲渡会社の株式評価(類似業種比準方式)に当たって、「1株当たりの利益」に組み入れる必要はない、ということです。

すなわち、いったん繰り延べており外部事情で実現した譲渡益は、非経常的な利益であるため、これを除外して考えて良いということです。

至極、常識的な考え方だと思います。

一方で、含み損がある資産を譲渡し、グループ法人税制によって実現されずに繰り延べられる譲渡損失がある場合にも、譲渡損失はなかったものとして株式評価が行われます。

資本関係のない外部に売却した場合には、株価を低く抑えられるのと比較すれば、不利になりますが、そのような狙いも込めてのグループ法人税制でしょうから、これも当初の予想通りの結論です。

資産税のタックスプランニングにおいて、グループ法人税制から離れて非上場株式の評価を行ってはいけない、ということです。

 

 

法人契約の養老保険契約の満期保険金について、その一時所得計算の判断で、納税者が敗訴する判決が最高裁で下されました。

契約者=医療法人、被保険者=理事長の子、死亡保険金受取人=医療法人、満期保険金受取人=理事長 とする契約で、法人税基本通達9-3-4(3)の死亡保険金、満期保険金の受取人が逆となるため、「逆パターン養老保険」とも呼ばれています。

医療法人は、支払保険料のうち2分の1を役員報酬とし、残り2分の1を法人の支払保険料としていたところ、理事長の満期保険金の一時所得計算に当たり、法人が負担した保険料全額を控除していた点が問題とされていたものです。

最高裁判決では、一時所得計算上控除できるのは、一時所得を得た個人が自ら負担したものに限定されるとし、役員報酬として処理した分についてのみ控除が認められるという判断を下しました。

ちなみに、平成23年度税制改正では、すでに一時所得の計算方法を今回最高裁判決と同様にするよう明文化しています。

 

 

1月6日に政府・与党で決定された 「税と社会保障の一体改革」 素案ですが、その中に、役員給与の給与所得控除を改正する旨の記述がありません。

平成24年度税制改正大綱では、給与収入が1500万円を超える給与所得控除について245万円の頭打ちを設けるよう改正したものの、役員給与等に係る給与所得控除については「税率構造を含む改革の方向性を踏まえ、引き続き検討していきます」と述べるに留まっていました。

そこで、一体改革法案のあり方が注目されていたのですが、法案素案では言及がまったく見られないことから、野党の反発を見越して改正そのものを棚上げした、という見方が支配的です。

もともと、特殊支配同族会社に対する課税があまりに悪評で、これを選挙公約通り廃止するのと「差し替える」ように提示されたのが、役員給与の給与所得控除の縮減案でした。

平成23年度税制改正法案が通っていれば、「天下の悪法」として成立していたものですが、当面、復活はないものとみて良いと思われます。