2012年4月18日 持分のない医療法人へ移行時の贈与

昨年の国税不服審判所裁決のうち、医療法人に対する贈与に関するもので、興味深い事例が公表されています。

定款変更によって持分の定めのない医療法人に組織変更した法人が、土地の寄付を受けました。課税庁は、これを医療法人の受贈益として更正処分を行ったのに対し、納税者は医療法人の設立の際に贈与を受けた資産に該当するとして、法人税施行令136条の4を根拠に、益金不算入を主張していた事案です。

これに対して審判所は、法令の趣旨を解釈したうえで、納税者は医療法施行規則に基づいて、定款変更の方法で「持分の定めのない医療法人」へ組織変更したものであり、従前の医療法人の解散、清算の手続きを経た上で新たに設立されたものではないから、法人税法施行令136条の4の規定を外れると判断しました。 医療法人に対して受贈益課税が発生するという判断です。

妥当な判断だと思います。

持分のない医療法人には、出資評価に伴う相続税の心配がないことから、節税目的で医療法人への財産移転を図るケースは今後、絶えないのではないかと思います。税務上の問題のみならず、ケースによっては安定的な事業承継のありかたとしても、問題があると考えます。