相続税の税務最新情報

国税庁は、扶養義務者である親や祖父母からの生活費、教育費等の贈与を行った場合の課税関係についてHPでQ&Aを公表しています。

  国税庁HPのQ&A↓
  http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/sozoku/131206/pdf/01.pdf

これは昨年の税制改正法附則によって「非課税範囲の明確化」が求められていたことに伴う措置なのだそうです。

Q&Aは、教育費、生活費、結婚費用、出産費用にかかる贈与について逐一解説する方法を採っています。

特段に目新しい記述などはありませんが、どこにポイントを置いて判断すればよいのか、どの領域が「悩ましい範囲」なのか、に関する整理はできると思います。

 

 

12月31日時点の国外財産の合計額が5千万円を超える居住者(非永住者除く)に対し、国外財産の種類や価額を記載した「国外財産調書制度」の提出義務が平成26年1月1日に施行されました。

国外財産調書の提出期限は3月17日(15日が土曜日のため)で、この期限までに正当な理由なく調書を提出しない場合には、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が課されるという重たい制度です。

また調書の提出がある・なしによって、その財産に係る所得税や相続税の過少申告加算税の税率も変わってきます。

従って、5千万円に届くかどうかが微妙なケースでは、「とりあえず出しておく」というのが正解だと思われます。

 

 

太陽光発電設備については即時償却が認められ、税制上の優遇措置が認められることは周知のとおりです。

この優遇税制を使うことで、会社の利益が圧縮できたため、自社株を低めに評価でき贈与などのチャンスだと考える方もおられると思います。

類似業種比準価額の計算の所得計算上、即時償却による損金計上分はマイナスして計算して構いません。この点、実務家の間で若干の不安があったようですが、問題なくマイナスして計算することができます。

ただし純資産評価額を計算するに当たっては、簿価ゼロのまま評価してはいけません。

定率法で償却したものとして、別途に評価しなおす必要があります。

自社株贈与などのチャンスであることは間違いないので、詰めの部分で間違いがないように気を付けたいものです。

 

 

最高裁判決が、非嫡出子の差別を違憲と判断したのを受けて、課税庁も相続税法の取扱を変更することを決定したことは既報の通りです。

国税庁のHPに詳細が記載されていますのでご紹介します。↓
nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h25/saikosai_20130904/

通常の実務において気を付けるべきは、9月5日以後に「申告期限」が到来するものについては、従来と取り扱いが異なると考えておけば間違いないでしょう。

ところで最高裁判決は、非嫡出子に対する取り扱いが違憲状態となっていたのは、平成13年ごろからであると判示しています。にもかかわらず、税務の取り扱いが平成13年まで遡って更正の請求などを認めていないのは、同判決に「確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものでない」旨の記述があるからだそうです。

個別の事案ごとに検討すべきことが多すぎるので、一律に過去に遡っての判断は難しいと考えたのだと思います。

 

 

非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定を、「違憲」とする最高裁判決を受けて、国税庁は相続税の取り扱いを改めることを公表しました。

判決翌日の9月5日分以後の申告または処分から、嫡出子と非嫡出子の相続分を平等なものとして、相続税額の総額を求めることになります。

従来は嫡出子の相続分が相対的に大きく、税率の高いところで計算したうえで、総額計算を行っていたのに対し、今回の改正で税率がフラットで相対的に低率を適用できる可能性があるため、相続税額総額が下がるケースも考えられます。

ちなみに、9月4日以前に申告したものについて、最高裁判決を理由に更正の請求をすることはできない、としています。

 

 

非嫡出子に対する相続分を2分の1とする民法の規定が違憲であるとした、9月4日の最高裁判決の影響が注目されています。

判決文は、判決以後の相続と判決時点で未分割となっている事案に関してその効力が及ぶとされ、さかのぼって過去の事案が違憲とされるものではないとしています。

しかし、非嫡出子側からは「違憲無効状態の民法」にもとづいて行われた遺産分割協議そのものが、「錯誤により無効」と主張されることが十分考えられます。

仮に錯誤無効の訴えが認められた場合、遺産分割協議のやり直しとなり、減額された側は「更正の請求」、取得財産の増加した側は「修正申告」となります。

問題なのは、遺産分割のやり直しは税務上「贈与」として認識され、財産の取得分が増加した側に「贈与税」が課されるという点です。

ただし、財産の取得分の減る方つまり嫡出子側に「贈与の意思」があるとは到底考えることはできないため、従来の常識通りに直ちに判断できないようです。

近い将来、民法は改正されるでしょうが、税務上は単純に「将来の問題」とは言えないかもしれません。

 

 

相続税法改正の影響で、首都圏を中心に二世帯住宅への関心が高まっているというニュースが大きく取り上げられていました。

4階建てで賃貸借スペースもあり、同居による小規模宅地特例と、貸家評価の減額などをねらった物件が紹介されていました。

首都圏の一等地ならば、大変な相続税節減効果が見込めるでしょう。

ところで、このような事例を聞くにつけ案じるのは、相続人の平等は保たれているのか、不満を抱く相続人はいないのか、という点です。

最近の裁判事例で、次のようなものがありました。

遺言に基づいて、ほとんど唯一の相続財産である賃貸建物の全部をひとりの相続人が相続しました。ところが他の相続人が遺留分減殺請求を求める訴訟を起こし、これが認められて建物は結局、共有持分となったそうです。

当初全部建物を取得した相続人は、この判決の翌日から2か月以内に税務署に対して更正の請求を行うべきだったものを、これを徒過したため払い過ぎの相続税を国から返してもらう機会を失ってしまいました。

そこで、この相続人は、もう一人の(共有持分を認められた)相続人に対して、「不当利得返還請求権」に基づく相続税負担の請求をする訴訟を起こしました。

東京地裁はこの5月、原告である相続人が税務署に対する更正の請求を徒過した時点で、相続税の課税関係は確定しており、不当利得返還請求権に基づく相続税負担分の請求権は認められない旨の判示をしました。

事後的な対応のまずさもあったとはいえ、やはり遺言のありかたや相続実務のスタート時点で問題があった事案だと思います。

数字ばかりを追う節税が、いかに危険であるかを物語る事案です。

 

 

二世帯住宅の小規模宅地評価減特例について、来年1月発生相続から要件が緩和されることは既報の通りです。また建物について親子で「区分登記」した場合には、親所有分として登記した分に対応する土地のみが評価減の対象になるので登記のあり方には注意をしなければならないことは、前回お知らせしました。

実務家の間では「建物区分所有法1条」には、独立して居住の用に供することのできるものがあるときには、独立して所有権の対象とすることが「できる」、という規定ぶりなので、実際に区分登記していなくても、区分登記できる状態の建物であれば、「建物区分所有法1条に規定する建物」に該当し、緩和の対象外になるのではないかという意見が上がっていました。

財務省はこれに対して、「区分登記できる状態にあるかどうか」ではなく、実際に「区分登記しているかどうか」によって、小規模宅地特例の適用の適否を判断するという見解を明らかにしています。

やはり、登記のあり方に要注意という結論に到達します。

 

 

小規模宅地の特例で二世帯住宅の構造が、内部で行き来できるようなものでなくともよいなど要件が緩和され、来年1月からの相続に適用されます。

朗報ではありますが、建物の登記の仕方によってはで適用される地積に違いが出る模様ですので、この点に特に注意が必要です。

改正政令では、一棟の建物が「建物区分所有法第1条の規定に該当する建物」である場合には、被相続人所有部分のみが小規模宅地特例の対象になることが明らかにされています。

したがって、1階部分が親世代所有、2階部分が子世代所有などと区分登記を行った場合、1階部分に対応する地積のみが小規模宅地特例の対象となります。

二世帯住宅を登記する際には「共有登記」にすることが無難であるといえます。

 

 

教育資金の一括贈与の非課税措置については、文部科学省のHPでQ&Aが

公表され、ずいぶんすっきりした腑分けができたように思います。

  非課税措置に関するQ&A
   ↓ ↓ ↓
  http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/zeisei/__icsFiles/afieldfile/2013/04/01/1332772_1.pdf

それでも不明確な点がまだ多く、たとえば入学時に半強制的に学校に対して支払わされる「寄付金」の扱いがどうなのかなどは、あいまいなままです。

教育資金とは文部科学省が定める次の金銭をいう。

①学校等に支払われる入学金その他の金銭

この文言だけを拾うと、文部科学省がOKを出せば寄付金も大丈夫という解釈も可能ですが、「教育目的」の支出かどうかという観点からみると、にわかに怪しくなってきます。

より詳しい取り扱いのQ&Aの公表を望みます。

 

 

教育資金の一括贈与1500万円非課税枠の設置が確定しましたが、資金使途である「学校等」に含まれる範囲や、それ以外の非課税枠が認められる範囲について、様々な憶測が流れていました。

文部科学省は4月1日付で、非課税措置に係るQ&Aを公表し、非課税枠の適用範囲を明確にしています。

  文部科学省のHPはこちらから
   ↓ ↓ ↓
http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/zeisei/__icsFiles/afieldfile/2013/04/01/1332772_1.pdf

これによると、「学校等」に支払うものの範囲として、入学試験検定料、在学証明、成績証明の発行手数料、修学旅行費、遠足費、給食費などが含まれるそうです。

また500万円を上限とする「学校等以外」の支出については、学習塾、家庭教師、水泳教室などに対するもので、「社会通念上相当と認められる金額」に限り、非課税措置の適用を認めるとしています。

また金融機関に対する領収証等の提出方法について、領収書等の日付記載日から1年以内に提出する方法と、記載日の翌年3月15日までに提出する方法のいずれかひとつを選択し、この選択は変更できないとされている点も、要注意です。

 

 

祖父母から孫への教育資金贈与が1500万円まで非課税となる税制改正大綱の内容について、ご質問を受ける機会が増えました。

祖父母からそれぞれ1500万円ずつ贈与が可能か、というのが最も多い質問です。

これは受贈者1名につき1500万円を限度としますので、例えば2名から合わせて3000万円を贈与しても、超過した1500万円には普通の贈与税が課せられます。

大綱には「一括贈与」という文言がありますが、必ずしも1年度中にすべての贈与を終える必要はないようです。例えば500万円ずつ3年に分けて合計1500万円の贈与となった場合にも、この制度は使えるようになるそうです。

また、基礎控除110万円や「相続時精算課税制度」との併用も可能となるという情報も伝えられています。

今年の4月1日から平成27年12月31日までの3年間の時限的措置ですので、この点も充分に念頭に置いておかなければなりません。

 

 

「良いニュースと悪いニュースがあるけれどもどちらから聞きたい?」

こういう言い回しがあります。

多くの場合、悪いニュースのショックを和らげるための前置きとして使われます。

そういう訳なので、良いニュースも実は取って付けたようなものに過ぎません。

自民党は、祖父母の孫に対する教育資金贈与について、時限的に1500万円を上限として贈与税の非課税枠を設けることを検討しているそうです。

これを受けて昨日、教育関連の上場株が急騰したというおまけまで付いています。

しかし、これも冒頭に述べた「良いニュース」の部類に入るのではないかと思います。

相続税増税は贈与税減税とセットで税制改正の俎上に乗せられてきた経緯があります。つまり「悪いニュース」のもうひとつの側面としてこれまで登場してきたのです。

相続税増税について、さすがに民主党政権時の改正案をそのまま採用することはないのでしょうが、自民党政権も相続税増税に踏み切るのだと思います。

これから「悪いニュース」が待っていると覚悟すべきだと思います。

 

 

安倍内閣組閣の翌日のニュースに、自民党も富裕層課税を検討し始めているというものがありました。

消費税率引き上げに伴い、富裕層にも所得税や相続税で相応の負担をしてもらおうという動きですが、自民党はこれまで相続税増税には強く反発していたはずです。

民主党政権時の、相続税にかかる基礎控除を4割カットというものではなく、3割や2割カットなどの「おとなしい改正」の自民党独自案を作成することを検討するようなのですが、それにしても 「話が違う」 感は否めません。

自民党税調の税制改正大綱は、来年1月下旬をめどに作成される予定です。

税調議論の過程などをオープンにする、民主党政権の残した良きプロセスは今後も継続してもらいたいと思います。

 

 

平成25年度税制改正に向けて国税庁がまとめた意見書の中に、相続税の課税財産の範囲に関する「推定規定の新設」が盛り込まれているそうです。

より具体的には、「相続開始以前の一定期間中に、被相続人の財産を処分または被相続人が債務を負担したもので、その使途が客観的に明白でなく、かつ、その合計額が一定金額以上となる場合には、これを相続人が相続したものと推定し、相続税の課税価格に算入する制度を創設する」というものです。

ゾッとする話だと思います。

相続人には知り得ない、被相続人のプライベートな世界があり、それでも何とか客観的な相続財産の総額をまとめようと努力して申告納税にこぎつけているのが、現在の相続税申告制度の実態です。

それうえで把握しきれなかった財産が具体的に判明した場合には、相続人の努力の及ぶ範囲外であったと納得して修正申告を行っています。

しかし、使途が客観的に明白でない場合の財産について課税される場合には、相続人はとうてい納得ができないでしょう。それは相続人の責任の範疇から外れるものだからです。

死期がある程度読めるようになって、お世話になった人たちに会いに行き、頻繁に食事会をされていた方がおられました。本人の生き甲斐のようになっていたため、家族もいちいち誰と会う約束なのか聞くこともなく、本人の好きにさせていたようです。

また、賭け事の好きな人は、やや羽目を外してお金をつぎ込んでしまうかもしれません。

任意団体などに匿名で多額の寄付をした場合はどうなるのでしょう。

これらに対して、使途が客観的に明白でないために課税対象とする、とした場合には、相続人に対してあまりに酷な制度だと思います。 また亡くなる前の大切な時期に、相続人がお金の使途にいちいち口出しするような関係を作り出すのではないかとも思います。

国税当局は「人が亡くなる」という厳かな現実に対して、いま少し畏怖の念を抱いてもよいのではないかと思います。

課税庁の意見にとどまっているあいだに、早期の再考を促したいと思います。