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ゴルフ会員権の譲渡所得の損失と他の所得との通算が、平成26年度税制改正で廃止になる見通しです。

廃止の方向は明白として、その実施時期がいつになるかが毎年の税制改正時期の関心事でしたが、ついに廃止のときが来るようです。

平成26年1月1日以後の取引から、損益通算が不可となるようですので、売却損を計上するならば、あと1か月しか残されていません。

この税制改正法案が国会を通過するのが来年3月あたりですので、あきらかに遡及して納税者に不利益な措置が法定されることになります。

平成16年に不動産の譲渡損失が、他の所得と損益通算不可となった時は遡及的に納税者に不利益になる法制の適否が最高裁まで争われましたが、問題なしとの判決が出ています。

繰り返しになりますが、ゴルフ会員権の売却損を有効に発生させるには、おそらく1か月の時間しか残されていません。悔いのないように決断すべき時です。

 

 

平成26年度税制改正大綱は12月12日(木)に決定する見込みで各項目の調整に入っています。

気になる動きとしては、「役員給与に係る給与所得控除の縮減措置」が財務省の強い意向で盛り込まれようとされていることです。

平成22年に廃止された、悪名高い「一人オーナー課税制度」に代わるものとして平成23年度改正案に盛り込まれながら見送られていた増税措置が、ここにきて再登場するという話です。

役員給与の額が、2000万円から4000万円の間は給与所得控除額が逓減され、4000万円を超えると125万円の控除で頭打ちになるというのが、23年度改正案でした。

給与所得控除を一定額を上限に、頭打ちになるという措置に関しては甘受できても、一定額を超えると減額される措置の合理性を見出すのは困難です。

自民党税調の議論を注視したいと思います。

 

 

政府税制調査会では、国境を超えた役務提供等に対する消費税課税について議論をしています。

現行は資産の譲渡・貸付があった場合には、その資産の所在場所で、役務提供が行われていた場合にはその事務所所在地によって、「内外判定」を行い、消費税の課税・不課税の判断を行っています。

しかしながら、この判定基準ではインターネットなどを利用した役務提供の課税が適正に行われないおそれがあるとして、基準の見直しを行っているわけです。

財務省資料は以下の通り↓
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/discussion1/2013/__icsFiles/afieldfile/2013/11/14/25dis12kai4_1.pdf

財務省は、B to C取引、B to B取引それぞれについて課税案を提出していますが、取引規模に応じた取り扱いの必要や、実際の執行上の問題点などから、議論はまとまらず、平成26年度税制改正大綱に改正方針を盛り込むのは難しい状況だそうです。

今後の税制調査会の議論に注目したいと思います。

 

 

太陽光発電設備については即時償却が認められ、税制上の優遇措置が認められることは周知のとおりです。

この優遇税制を使うことで、会社の利益が圧縮できたため、自社株を低めに評価でき贈与などのチャンスだと考える方もおられると思います。

類似業種比準価額の計算の所得計算上、即時償却による損金計上分はマイナスして計算して構いません。この点、実務家の間で若干の不安があったようですが、問題なくマイナスして計算することができます。

ただし純資産評価額を計算するに当たっては、簿価ゼロのまま評価してはいけません。

定率法で償却したものとして、別途に評価しなおす必要があります。

自社株贈与などのチャンスであることは間違いないので、詰めの部分で間違いがないように気を付けたいものです。

 

 

最高裁判決が、非嫡出子の差別を違憲と判断したのを受けて、課税庁も相続税法の取扱を変更することを決定したことは既報の通りです。

国税庁のHPに詳細が記載されていますのでご紹介します。↓
nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h25/saikosai_20130904/

通常の実務において気を付けるべきは、9月5日以後に「申告期限」が到来するものについては、従来と取り扱いが異なると考えておけば間違いないでしょう。

ところで最高裁判決は、非嫡出子に対する取り扱いが違憲状態となっていたのは、平成13年ごろからであると判示しています。にもかかわらず、税務の取り扱いが平成13年まで遡って更正の請求などを認めていないのは、同判決に「確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものでない」旨の記述があるからだそうです。

個別の事案ごとに検討すべきことが多すぎるので、一律に過去に遡っての判断は難しいと考えたのだと思います。

 

 

非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定を、「違憲」とする最高裁判決を受けて、国税庁は相続税の取り扱いを改めることを公表しました。

判決翌日の9月5日分以後の申告または処分から、嫡出子と非嫡出子の相続分を平等なものとして、相続税額の総額を求めることになります。

従来は嫡出子の相続分が相対的に大きく、税率の高いところで計算したうえで、総額計算を行っていたのに対し、今回の改正で税率がフラットで相対的に低率を適用できる可能性があるため、相続税額総額が下がるケースも考えられます。

ちなみに、9月4日以前に申告したものについて、最高裁判決を理由に更正の請求をすることはできない、としています。

 

 

税務調査の結果、重加算税が課せられる項目のトップが「期ずれ」なのだそうです。

本来、当期に上がるべき売上を翌期に延ばしたり、経費の先取りをしたりといった内容を「期ずれ」と呼び、税務調査では、必ずチェックの対象となる項目です。

しかし、長期の視点で見れば、所得計算にマイナスが生じるわけでもないため、重加算税の対象と考えるには、極めて抵抗のある非違事項でした。

売上の繰り延べを意図的に行った場合でも、たとえば、来期の売上ノルマのハードルを引き下げるためなど、必ずしも税負担軽減を図っているとはいえないケースが見られるようです。

従って、同じ「仮装」でも、「質」が違うという認識がどこかにありました。

また、課税庁の側でも「期ずれ」に重加算税を課さないという内部通達があったようで、これが期ずれと重加算税が結びつかない大きな要因ともなっていました。

しかし、このような「常識」も完全に過去のものとなってしまったようです。

期ずれが重加算税の項目トップという事実は、当局の強い姿勢を表しています。

 

 

消費税転嫁対策特別措置法で、零細事業者の価格転嫁を阻害するような表示方法を禁止する規定が置かれています。既報の通り、その具体的な内容は法律の条文ではなく消費者庁のガイドラインに明記されるかたちで周知されます。

9月10日、そのガイドラインが消費者庁から公表されました。

 消費者庁のガイドラインは以下の通り↓
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/250910tenka2.pdf

当初は禁止するとみられていた、「3%還元」や「3%値引き」「3%ポイント還元」などは問題ないとされたものの、「消費税増額分値下げ」のように、消費税率引き上げに直接言及する表現は禁止されるようです。

なおガイドラインには書いていないものの「消費税増額分、増量」などの表示も、消費税に直接言及しているため、禁止の対象となるということです。

 

 

非嫡出子に対する相続分を2分の1とする民法の規定が違憲であるとした、9月4日の最高裁判決の影響が注目されています。

判決文は、判決以後の相続と判決時点で未分割となっている事案に関してその効力が及ぶとされ、さかのぼって過去の事案が違憲とされるものではないとしています。

しかし、非嫡出子側からは「違憲無効状態の民法」にもとづいて行われた遺産分割協議そのものが、「錯誤により無効」と主張されることが十分考えられます。

仮に錯誤無効の訴えが認められた場合、遺産分割協議のやり直しとなり、減額された側は「更正の請求」、取得財産の増加した側は「修正申告」となります。

問題なのは、遺産分割のやり直しは税務上「贈与」として認識され、財産の取得分が増加した側に「贈与税」が課されるという点です。

ただし、財産の取得分の減る方つまり嫡出子側に「贈与の意思」があるとは到底考えることはできないため、従来の常識通りに直ちに判断できないようです。

近い将来、民法は改正されるでしょうが、税務上は単純に「将来の問題」とは言えないかもしれません。

 

 

来年4月に予定されている消費税の引き上げに伴い、消費税率引上げ後に住宅を取得した者のうち一定要件を満たす者に、現金を給付する「すまい給付金」制度の概要が自民党の調査部会で固まりました。

中低所得者を対象に年収に応じて10万円~30万円の現金給付を行うという制度です。中古住宅でも適用可能ですが、宅地建物取引業者が売り主になった場合のみ適用があり、個人間売買は不可という縛りが設けられる見込みです。

また住宅ローン控除制度とは異なり、現金取得者に対しても一定要件を満たすことによって給付を受けることができるそうです。 具体的には年齢50歳以上でかつ年収の目安が650万円以下など要件を満たす場合に限られる見込です。

平成26年4月から6月にかけて住宅を取得する予定の人は、平成24年の収入が記載された平成25年発行の「課税証明書」によって給付金の適否および金額が決められるとのことです。

消費税率引き上げ前の駆け込み取得によるメリットと、来年度拡充される住宅ローン控除、そして「すまい給付金」制度のメリットを注意深く比較することが、住宅取得予定者には求められます。

 

 

消費税率が2段階に分けて引き上げられる予定であることを踏まえ、消費税の価格転嫁法が、平成25年10月1日から施行されます。

中小企業者が消費税を価格にスムーズに転嫁できるように定められた法律であり、「総額表示」義務の時限的な撤廃もこの中に含まれています。

値札の張替えなどの事務負担を軽減するために、平成25年10月1日から平成29年3月31日までの期間、「○○円(税抜き)」「○○円+税」「○○円+△円(税)」などの表示が認められます。

また、税抜き価格部分を色を変えたり、文字を大きくすることは不当表示とされてきましたが、10月1日から上記期間はみとめられるとのことです。

財務省は表示方法が、総額表示と誤認されないためのガイドライン案を公表し、パブリックコメントを求めて、より具体的な表示方法の「しばり」が確定します。

 

 

会社創業者など事実上会社をけん引してきた人物が、代表権を返上し平取締役などに就任する際、退職金を支給するケースがあります。 これを「分掌変更による退職金の支給」と言います。

代表権を返上すること、非常勤になること、給与は従前のおおむね半分以下にすること、重要な経営方針決定に関与しないこと、などの厳しい要件をクリアしてはじめて退職金の損金算入がみとめられます。

先日、国税不服審判所の裁決で、納税者にとって厳しい判断が示されました。

非常勤役員となった元代表者は、給与も3分の1程度に減額し、経営判断の根本に関わるアドバイスも行っていなかったといいます。おおむね上述した損金算入の要件を満たしているとも考えられる事案だったようです。

課税庁はこの元代表者が、主力商品の製造管理に関する技術指導を行っていたこと、会社の発行済株式の半数以上を所有していたことから、会社において重要な業務を行い、影響力ある地位を占めていると認定し、退職金を損金不算入としていました。

不服審判所も当局の見解を支持しています。

主力商品の製造管理のアドバイス行っていたとしても、それは熟練者が後継指導をしていたと考えれば、退職後の行為として妥当ではないかとも考えます。また会社に対する影響力をはかる基準として持ち株比率を持ち出すのは、いたずらにハードルを引きあげる判断ではないかと考えます。

経営の根幹にかかわっているかどうかは諸事情を総合判断しての結論であるとは思いますが、報道されている範囲内では納税者に酷な判断であるという印象を持ちました。

 

 

7月の税務当局の人事異動も終わり、税務調査の依頼の電話がかかってくるようになりました。

今年から国税通則法の改正とともに、当事務所の顧問先に対する税務調査前の事前通知は例外なく行われています。 ところが報道によると、この事前通知を行うかどうかについて、課税庁側に有利な抜け道が用意されており、これを使うかどうかは各税務署の「姿勢」にかかっているのだそうです。

国税通則法の事前通知の規定には、「税務署等が保有する情報から、事前通知をすることにより正確な事実の把握を困難にする、または調査の適正な遂行に支障をおよぼすおそれがあると認められる場合」には、事前通知せずに税務調査ができる旨が書かれています。 この規定を根拠に過去に申告漏れや書類不備が指摘されたケースなどは事前通知が省略される事案が発生しているそうです。

せっかくの法改正を空洞化させるような行政実務は厳に慎むべきであると思いますし、国税通則法に拠った対抗策も検討しておかなければならないと考えます。

 

 

相続税法改正の影響で、首都圏を中心に二世帯住宅への関心が高まっているというニュースが大きく取り上げられていました。

4階建てで賃貸借スペースもあり、同居による小規模宅地特例と、貸家評価の減額などをねらった物件が紹介されていました。

首都圏の一等地ならば、大変な相続税節減効果が見込めるでしょう。

ところで、このような事例を聞くにつけ案じるのは、相続人の平等は保たれているのか、不満を抱く相続人はいないのか、という点です。

最近の裁判事例で、次のようなものがありました。

遺言に基づいて、ほとんど唯一の相続財産である賃貸建物の全部をひとりの相続人が相続しました。ところが他の相続人が遺留分減殺請求を求める訴訟を起こし、これが認められて建物は結局、共有持分となったそうです。

当初全部建物を取得した相続人は、この判決の翌日から2か月以内に税務署に対して更正の請求を行うべきだったものを、これを徒過したため払い過ぎの相続税を国から返してもらう機会を失ってしまいました。

そこで、この相続人は、もう一人の(共有持分を認められた)相続人に対して、「不当利得返還請求権」に基づく相続税負担の請求をする訴訟を起こしました。

東京地裁はこの5月、原告である相続人が税務署に対する更正の請求を徒過した時点で、相続税の課税関係は確定しており、不当利得返還請求権に基づく相続税負担分の請求権は認められない旨の判示をしました。

事後的な対応のまずさもあったとはいえ、やはり遺言のありかたや相続実務のスタート時点で問題があった事案だと思います。

数字ばかりを追う節税が、いかに危険であるかを物語る事案です。

 

 

二世帯住宅の小規模宅地評価減特例について、来年1月発生相続から要件が緩和されることは既報の通りです。また建物について親子で「区分登記」した場合には、親所有分として登記した分に対応する土地のみが評価減の対象になるので登記のあり方には注意をしなければならないことは、前回お知らせしました。

実務家の間では「建物区分所有法1条」には、独立して居住の用に供することのできるものがあるときには、独立して所有権の対象とすることが「できる」、という規定ぶりなので、実際に区分登記していなくても、区分登記できる状態の建物であれば、「建物区分所有法1条に規定する建物」に該当し、緩和の対象外になるのではないかという意見が上がっていました。

財務省はこれに対して、「区分登記できる状態にあるかどうか」ではなく、実際に「区分登記しているかどうか」によって、小規模宅地特例の適用の適否を判断するという見解を明らかにしています。

やはり、登記のあり方に要注意という結論に到達します。