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平成29年5月29日から『法定相続情報証明制度』が施行され、相続手続きの負担が軽減されました。
『法定相続情報証明制度』とは、法務局に
(1)被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍関係の書類等 、
(2)(1)に基づく法定相続人情報一覧図(被相続人の氏名、最後の住所、生年月日及び死亡年月日、並びに相続人の氏名、住所、生年月日及び続柄の情報)
を提出すると、『認証文付き法定相続情報一覧図の写し』を交付してもらえるというものです。
 

従来は複数の不動産の相続手続きをする場合、管轄法務局ごとに戸籍関係書類一式を用意しなければなりませんでしたが、『認証文付き法定相続情報一覧図の写し』は無料で必要な分だけ取得でき、戸籍書類一式に代わって相続登記に利用できます。
金融機関での被相続人にかかる預金等の払戻しにも利用できる予定なので、戸籍関係書類をいくつも用意する必要がなくなり、相続手続きの負担が軽減されます。
 

ただし相続税申告書には、法令で『被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本』を添付することが定められています(相続税法施行規則16条3項)。
この『認証文付き法定相続情報一覧図の写し』が戸籍謄本に代わる申告書の添付書類として認められるには、法令の改正が必要であり、それまでは相続税申告で利用することはできませんので注意が必要です。

 

 

今日の日経新聞1面に、配偶者に生前贈与した居住用物件は、遺産分割の対象にしないよう見直す試案を、法制審がまとめたことが載っていました。
生前贈与分についても、このような取り扱いだったのかと、改めて認識した人も多かったのではないでしょうか。
預貯金に対する、遺産分割の考え方も、この数年で大きく変わっています。
つい最近まで預貯金払戻請求権は,相続開始とともに法律上当然に分割されて,各共同相続人が相続分に応じて権利を取得するため,原則として遺産分割の対象とならないと解されていました(最判平成16年4月20日等)。
ところが、現在では預貯金払戻請求権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることなく,遺産分割の対象になると解されるようになっています(最大判平成28年12月19日)。
民法の原則について、整理をすることの重要さを痛感します。

 

 

中小企業等投資促進税制を適用した場合、所得拡大促進税制を適用することは可能か?
答えは「可能」なのですが、税務署等に問い合わせるとまちまちな答えが返ってくるようです。
不可だと答える側の根拠は、国税庁タックスアンサー「No.5433 中小企業等投資促進税制」の以下の記述です。
「9.その他の注意事項 (2) この制度による特別償却又は税額控除の規定の適用を受けた場合は、研究開発税制を除き、租税特別措置法上の圧縮記帳、他の制度による特別償却又は他の税額控除の規定との重複適用は認められません。」
しかし、これは「資産について」特別償却など他の租税特別措置法上の特例を受けた場合に、中小企業等投資促進税制の「重複適用が不可」だと言っているだけで、それ以上の制限を課すものではありません。
本来、実務家向けにわかりやすい解説をするはずのタックスアンサーが、かえって混乱を呼んでいるケースです。

 

 

平成29年度税制改正大綱により、投資促進税制が改組、新設されています。やや多岐にわたり混同しやすいので、おおまかにまとめてみます。

①生産性向上設備投資促進税制は平成29年3月末に廃止

②中小企業投資促進税制は対象資産から器具備品を除外したうえ、平成31年3月31日まで延長

③中小企業商業・サービス業・農林水産業活性化税制も平成31年3月31日まで延長

④中小企業経営強化税制を創設

となり、平成29年4月1日から平成31年3月31日までは、②~④が並行して存在することになります。

この中で新設される中小企業経営強化税制は、経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等について、取得価格までの特別償却(すなわち即時償却)と取得価額の7%の税額控除(特定中小企業者等は取得価額の10%の税額控除)とを選択できるというものです。
対象者が経営力向上計画の認定を受けることが、条件となっていますので、経営革新等支援機関(弊事務所も認定済み)のサポートによる計画書の作成が必要です。

 

 

平成29年度税制改正の中で、特に注目される項目のひとつとして、非上場株式の類似業種比準価額の計算方式の変更があります。
配当・利益・純資産の比重を1:1:1に変更し、分母を3にするというものです。
これでは、所得軽減の株価に対するインパクトが減少してしまいます。
さらに厄介なのが、持分のある医療法人の出資評価です。
大綱では言及されていませんが、利益:純資産の比重が1:1に変更され、分母が2に変わると、出資評価の減少効果が激減します。2要素以上ゼロにならない前提で、評価対象年度の利益をゼロとした場合、分母が4のときに比べて分母2では、出資評価は2倍に跳ね上がります。贈与税を払ってでも「出資持分なし」に移行しようとする医療法人のハードルが格段に高くなってしまうのです。今後の具体的な改正に注目したいと思います。

 

 

6月に公表された、平成28年度類似業種比準価額のうち、「その他の産業」に注目してみます。出資持分あり医療法人の出資評価に用いる重要な指標ですので、毎年注意が欠かせません。

 
A値の平成27年平均は298であり、おおむね昨年各月平均値に近く、標本会社の変更による大幅変更という恐れは、とりあえずなくなりました。昨年に引き続き、医療法人の事業承継のための環境は、大きく悪化はしていないと言えます。

 

名南経営さんが日経平均推移と「その他の産業」推移とを比較したグラフを載せていて、これを見ると平成26年の「その他の産業」の値がいかに、法外に高かったかが実感できます。
http://blog.livedoor.jp/shingo_nakamura/archives/1058594082.html

 

 

国税庁は5月30日付で、「『所得税基本通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明を公表しました。

http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shotoku/h28tsutatsu.pdf

 

平成28年度税制改正では、給与所得者が通常の給与に加算して受ける学資金が新たに非課税とされています。本年4月1日以後に受ける学資金から非課税扱いとなりました。
クリニックで看護師さんなどに支給される学資金の扱いは、税務調査などで争点となるところでしたが、今回の通達改正で一応の決着を見ることになります。

 

今回公表された通達の趣旨説明では、通常の給与を減額し、その減額分を学資金として受けた場合は非課税にならないことを例示して、留意するよう呼び掛けています。
非課税制度の悪用をあらかじめ封じておく狙いですが、支給者側としては「本来の給与」と「学資分」とを給与規定などで明らかにしておく必要があります。

 

 

平成26年度の第6次医療法改正のなかで、「医療法人の経営の透明性の確保」や「医療法人のガバナンスの強化」がうたわれていました。前者では公認会計士等による外部監査の必要が、後者では、MS法人との取引の都道府県への報告が実務上の課題となるため、政令の整備が待たれていました。
この3月25日と4月20日に厚労省の関係政省令が公布され、その全容が明らかになっています。

 

外部監査については平成29年4月2日からの施行で、一般医療法人に関しては負債50億円以上または収益70億円以上という、対象が広範に設定される結果となりました。

 

また、親族関係のあるMS法人との取引については、1千万円以上で費用総額の10%以上を占める取引について毎年の都道府県への報告義務が発生します。医療法人の役員又はその近親者(配偶者又はに親等内の親族)が代表者であるか、議決権の過半数を押さえていれば報告義務が生じますので、これも広範に投網をかけるような制度設計になっています。

 

 

従来の財産債務明細書は、この3月15日締切の確定申告から、「財産債務調書」と名称を改められました。
提出義務者も「申告所得2,000万円超で、かつ、財産総額3億円以上、または有価証券1億円以上の者」とされ、対象者も従来より限定されています。

 

この調書を提出することによるインセンティブとしては、本来申告すべき不動産所得や利子所得、配当所得などの所得税または相続税などに申告漏れがあった時に、当該財産債務に関する過少(無)申告加算税を5%軽減する、ということになっています。

 

当面、相続発生はないと予想されるので、提出しないことによる実質上のデメリットはないのではと考える方もおられるかもしれません。
しかし、ここで注意したいのは、財産債務調書自体に質問検査権が認められていることです。

 

この調査に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をするなど検査を拒み、妨げ、忌避したときは1年以下の懲役または50万円以下の罰金を科すこととされています。
財産債務明細書のときと同じ感覚で提出せず、税務署から呼び出しがあっても放置していると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性がある、ということです。

 

調書を提出しないことによるリスクは、これまでの「明細書」より格段に大きいと考えていた方がよいでしょう。

 

 

この3月15日までに申告義務のある平成27年度贈与税申告書は、昨年までのものと大きく様式が異なっています。

 

直系尊属が、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)へ贈与をした場合に、特例税率が適用され負担が軽減される特例制度が導入されたためです。

なお、この特例制度を利用した贈与を行い、贈与財産額が410万円超の場合「申告者の戸籍謄本または戸籍抄本」が必要になります。
同制度は選択制ではありませんので、直系親族間の贈与で受贈者が20歳以上の場合、410万円超の財産移転があった場合には、上記書類の添付は必須となります。

 

すでに申告が完了された方も、もう一度ご確認をお願いします。

 

 

一人っ子家族で、両親が相次いで亡くなった場合、例えば父が亡くなって相続財産が未分割なまま、母が亡くなった場合、不動産登記が従前よりも複雑になっています。

 

一人っ子が父の相続財産をすべて相続登記し、母の相続財産を引き続き相続登記するという従来認められていた方法は、昨年の東京地裁・高裁判決からできなくなっています。
まず、父の財産を法定相続分で母と一人っ子との共有財産としたうえで、母死亡後に母固有の財産と、いったん共有持分とした父親財産とを一人っ子が引き継ぐという段取りになるのだそうです。
子が複数の場合には、第一次・第二次相続のいずれの場合にも複数の相続人がおり、遺産分割協議が成り立つので、上記のような面倒な手続きは必要ありません。これでは判決の意図するところがわからず、司法書士さんにも大変不評な判決です。

 

判決全文→http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/478/084478_hanrei.pdf

 

税務上は「相次相続控除」という仕組みがあるので、結果の税負担は同一であるようにも見えますが、例えば第一次相続の財産が基礎控除以下であって、第二次相続の相続財産が大きな場合では、税負担に差異が生じるのではないでしょうか。
第一次相続ですべて子が相続しておれば、第二次相続の税負担が少なかったはずなのに、共有持分となってしまったばかりに、第二次相続の負担が大きくなるのではと思います。

税負担の平等という観点からも、手続きに見直しが必要ではないかと考えます。

 

 

10月2日国税庁より、本人交付用の源泉徴収票や支払調書などには、マイナンバーを記載しないよう取り決めた旨の発表がありました。

国税庁HP
↓↓↓
https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/pdf/mynumber_gensen.pdf

 

源泉徴収票は住宅ローンをはじめ各種ローンの申し込みや、奨学金の申請、保育所への提出など、「民」への提出の機会の多いものです。
これらすべてについて、マイナンバーのマスキングを施すなどの措置がなく第三者が書類を提出すれば、「情報漏洩」に該当するところでした。

今回のマイナンバー不記載の決定によって、上記リスクは軽減されることになります。

本人交付用で記載が不要になるのは次の書類です。
・給与所得の源泉徴収票
・退職所得の源泉徴収票
・公的年金等の源泉徴収票
・配当等とみなす金額に関する支払通知書
・オープン型証券投資信託収益の分配の支払通知書
・上場株式配当等の支払に関する通知書
・特定口座年間取引報告書
・未成年者口座年間取引報告書
・特定割引債の償還金の支払通知書

 

 

国税庁は現行事務年度から、東京、名古屋、大阪の3局にプロジェクトチームを設置し、資産規模の特に大きい「超富裕層」に対する管理を強めることにしています。

 

調査を行う上で指針となる「試行通達」をこの事務年度中(H27.7~H28.6)に示したうえで、来事業年度(H28.7~H29.6)から取り組む予定とのことです。
わずかに漏れ聞こえる情報では、A・B・Cに3区分された対象者により国税当局の対応が異なるという話ですが、その資産規模の分類基準などは公にされていません。

 

なお、この試行通達は国税局のHPなどで公表させることのない、完全な内部文書扱いになる予定とのことです。

 

 

1日の路線価発表に伴い、相続税のご依頼を受けているお客様に、財産評価の変更点をお知らせしました。
 

福岡市内では、最高値の中央区天神2丁目が5.6%の伸びを見せており、再開発の進む博多駅前2丁目(駅前通り)で9.8%増という大きな伸びが見られます。

市内中心部については、商業地、住宅地に係らず堅調な伸びですが、今回ご相続案件の物件を見ていて、さほど人気スポットともいえない住宅地区も5%~6%の伸びを見せているところが目立ちます。
 

東京資本の福岡都心部への投資が熱を帯びる一方、過熱気味であるという共通認識も芽生え始めており、いったん冷却させる動きが出てくるかもしれない、とのメディアでのプロのコメントも見られました。

 

 

「結婚・子育て支援信託」や「教育資金贈与信託」は俗に「税理士いらず」とも呼ばれ、税理士の評判が極めて悪い制度です。

これは単に職域を荒らされるといった単純な理由からではなく、我々に任せてもらえれば、もっとタイムリーかつ効果的な贈与計画が立てることができるし、途中でよりよい制度への切り替えもできるのに、という税理士の「歯がゆい思い」からです。
 
それでも、なぜ納税者がこの制度を選択するのかといえば、言うまでもなく信託銀行の信用力があるからでしょう。
そしてもうひとつ、財産を残す側が「認知症」になって成年被後見人になってしまった場合、相続対策として打てる手が全くなくなってしまうからでもあります。
判断能力があるうちに、打てる手はすべて打っておきたい、そのためには複数の相手にまとまった金額を移転できる制度を最大限利用しよう。財産を残される側の気持ちとしては痛いほどわかります。
 
先般、家庭裁判所から専門職後見人に任命され、「成年後見支援信託」を開設するお手伝いをして、認知症の資産家を親族に持つ方のご苦労を、身近に経験しました。また本人の判断能力さえあれば、打つ手はいくらでもあるのに、という悔しい思いを生で聞く機会を持ちました。

我々税理士も、かりに元気な資産家からのご相談であっても、本人の判断能力は永遠に健在ではないという事実に立ち返って、アドバイスをしなければならないと痛感するところです。