税制改正の税務最新情報

平成27年度税制改正大綱では、次世代への財産移転のための措置が充実していることは、前述しましたが、平成31年6月まで延長されることになる住宅取得資金の贈与税非課税措置には、あからさまな消費誘導の意図が見られます。

消費税率8%引き上げによって冷え込んだ需要を回復させる一方、消費税率10%引き上げ直前の駆け込み需要を抑え、更に税率10%引き上げ時には極端な財産移転の緩和を行って、需要の下支えを行うといった内容になっています。96958A9E889DEAE3E6EAE1E7E6E2E1E3E3E0E0E2E3E69797EAE2E2E2-DSXMZO8148216031122014EA7001-PB1-2

大綱では「良質な住宅用家屋」とそれ以外に分けて、細かなスケジュール割りで贈与税の非課税枠を定めています。「良質な住宅用家屋」の非課税枠を時系列でまとめると、上図のようになります。

住宅取得資金の援助が見込める方は、材料価格の今後の見通しなども絡めて、住宅取得の時期を慎重に検討しなければなりません。

 

 

平成27年度税制改正大綱が、本日公表されました。

教育資金贈与の非課税措置は平成31年3月31日まで延長され、結婚・子育て支援資金贈与は平成27年4月から平成31年3月までの時限措置として導入されます。

住宅取得資金の贈与非課税措置も平成31年6月30日まで延長されるので、次世代への大型非課税贈与措置が平成31年まで3つ並存することになります。

さて、教育資金については、もらった側が30歳までに使い切れなかった場合には、その使い切れなかった残額につき、もらった側に贈与税が課せられるという制度でした。

結婚・子育て支援資金についてはどのような取り扱いになるのか興味津々でしたが、思わず「ウーンとうなってしまう」内容です。もらう側の年齢条件は20歳から50歳までで、50歳を過ぎても使い切れなかった場合には(結婚も出産も子育てにも関係なかった場合には全額に対して)、もらった側に贈与税が課せられます。これは教育資金と同様です。

それだけにとどまらず、もらった側が50歳に達しておらず、贈与者(あげた側)が死亡した場合には、あげた側の「相続財産」として認識するという制度設計になっています。

結婚資金については300万円の上限が設けられたうえ、「子育て」の内容も、妊娠、出産、子の医療費、保育料といった使途に限定され、けっして「おおらか」な制度設計ではありません。

一定年齢までに結婚して、さっさと子を産んで、子育てしないと、非課税であげたはずの資金に高い贈与税が課せられるし、目の黒いうちに孫の顔を見せないと相続税がかかってしまう、という、いじましい制度になってしまいました。

仕組みを考えた側の立場に立てば、そうせざるを得ない理由もよくわかりますが、このような意地の悪い制度は、使う側の気持ちも歪めてしまうのではないでしょうか。「例のあの贈与のこともあるし・・・、はやく孫の顔を見せておくれ」という会話が、お茶の間で交わされることになるのかもしれません。

 

 

年の瀬選挙の影響で、来年中旬に延期とみられていた平成27年度税制改正大綱は、今年12月30日にまとめられることになりました。

具体的な内容として、法人税改革では、繰越欠損金の控除限度額の引き下げ、受取配当益金不算入の見直しを行うなど、厳しい方針が示されている一方、懸念されていた中小法人課税の見直しについては見送りとなるようです。

法人税率引き下げに伴い、中小法人の軽減税率見直しや特例措置の見直し、法人成りによる個人・法人間の税率差の歪みの是正など、中小法人にとって厳しい改正が予定されていましたが、平成27年改正では「見送り」となる様子で、ひと安心です。

留保金課税の中小法人への適用や給与所得控除の見直しなどの「狙い撃ち課税」は納税者の納得が得られにくく、いっそう重税感を募らせるだけだからです。

ともあれ、今年の大みそかは平成27年度税制改正大綱の読み込みを行って、一年の締めくくりをすることになります。

 

 

平成26年度税制改正大綱では、税務調査の手続きに関する変更も盛り込まれています。

平成25年の調査から、調査開始に関する事前通知は、納税者と税理士の両者に向けて行うことが義務付けられていました。

しかし、納税者のほとんどが調査の詳細について、税理士へ通知してほしい旨希望するため、納税者に対する事前通知は、なかば形骸化したものになっていました。

そこで、平成26年7月から行われる調査から、代理権限証書にその旨の記載がある場合に限って、納税者への通知に代えて税務代理人に対する通知のみで事前通知を完了させることが決まりました。

忙しい納税者は、事前通知を受けるためだけに時間調整をしてもらうこともあったため、今回の改正で無駄な時間を使うこともなくなるわけです。

代理権限証書の「書式」も含めて、事務所の緊急の課題にしたいと思います。

 

 

来年4月に予定されている消費税の引き上げに伴い、消費税率引上げ後に住宅を取得した者のうち一定要件を満たす者に、現金を給付する「すまい給付金」制度の概要が自民党の調査部会で固まりました。

中低所得者を対象に年収に応じて10万円~30万円の現金給付を行うという制度です。中古住宅でも適用可能ですが、宅地建物取引業者が売り主になった場合のみ適用があり、個人間売買は不可という縛りが設けられる見込みです。

また住宅ローン控除制度とは異なり、現金取得者に対しても一定要件を満たすことによって給付を受けることができるそうです。 具体的には年齢50歳以上でかつ年収の目安が650万円以下など要件を満たす場合に限られる見込です。

平成26年4月から6月にかけて住宅を取得する予定の人は、平成24年の収入が記載された平成25年発行の「課税証明書」によって給付金の適否および金額が決められるとのことです。

消費税率引き上げ前の駆け込み取得によるメリットと、来年度拡充される住宅ローン控除、そして「すまい給付金」制度のメリットを注意深く比較することが、住宅取得予定者には求められます。

 

 

7月の税務当局の人事異動も終わり、税務調査の依頼の電話がかかってくるようになりました。

今年から国税通則法の改正とともに、当事務所の顧問先に対する税務調査前の事前通知は例外なく行われています。 ところが報道によると、この事前通知を行うかどうかについて、課税庁側に有利な抜け道が用意されており、これを使うかどうかは各税務署の「姿勢」にかかっているのだそうです。

国税通則法の事前通知の規定には、「税務署等が保有する情報から、事前通知をすることにより正確な事実の把握を困難にする、または調査の適正な遂行に支障をおよぼすおそれがあると認められる場合」には、事前通知せずに税務調査ができる旨が書かれています。 この規定を根拠に過去に申告漏れや書類不備が指摘されたケースなどは事前通知が省略される事案が発生しているそうです。

せっかくの法改正を空洞化させるような行政実務は厳に慎むべきであると思いますし、国税通則法に拠った対抗策も検討しておかなければならないと考えます。

 

 

所有期間10年超の事業用 土地・建物・構築物を売却して、新たに土地、建物、構築物機械装置を購入した場合、売却益課税を繰り延べる「9号買換え」という制度があります。

10年超保有していれば大きなしばりもなく税負担を軽減した買換えができるため、重宝がられて使われてきました。税務に明るい経営者ならば「事業用で10年保有していれば買換え特例がきく」というのが常識でもありました。

ところが平成24年度税制改正で、新しく買換える資産のうち「土地」については、地積が300平米以上なければ特例の適用ができなくなってしまいました。

一方、平成23年の改正で法人の「立体買換え」(デベロッパーに土地を売却し、その土地上の建物と土地を代替資産として区分所有するような取引で、等価交換などとも言われる)

の特例が使えなくなったため、逃げ道として「9号買換え特例」が使われてきた経緯もあります。

ところが土地の300平米要件が入ってしまうと、立体買換えで土地を区分所有する場合、9号買換えの要件を満たさないケースが大幅に増えてしまいます。

新規に取得する「建物」部分には「9号買換え特例」は使えますが、土地はアウトということになってしまうのです。

地方の土地を売却し、都心の狭小地に節税目的のマンションを建てても、9号買換えの特例でしばりがかけられる、といふうに平成24年改正の際、解説されていましたが、法人の立体買換えの逃げ道がふさがれてしまう、という問題も引き起こしています。

不動産市況が活発化し、再開発事業なども展開される中で、企業や事業を行う個人の「打ち手」が少なくなっています。

 

 

自民党税制調査会は7日総会を開催し、9日に各部会からのヒアリングを行い、10日、11日に主要項目について検討することを確認しました。

所得税・相続税の見直し、事業承継税制、金融証券税制が主要な論点になると言われています。

7日総会のペーパーを見ても、気になる所得税、相続税の改正については、昨年3党合意の文言が掲載されているだけで、新しい情報を得ることはできませんでした。 10日、11日皮切りの議論で大きな方向付けが固まると思われます。

あらかじめアナウンスされていた研究開発税制の拡充は、11日に予定される緊急経済対策に盛り込まれる予定とのことです。

また日経新聞の情報では、給与を一定割合増加させたり、雇用者数を一定以上増加させた企業に対して、法人税の控除を行う減税制度を検討しているそうです。

平成25年度税制改正大綱は、1月23日をめどにとりまとめることが予定されています。

 

 

安倍内閣組閣の翌日のニュースに、自民党も富裕層課税を検討し始めているというものがありました。

消費税率引き上げに伴い、富裕層にも所得税や相続税で相応の負担をしてもらおうという動きですが、自民党はこれまで相続税増税には強く反発していたはずです。

民主党政権時の、相続税にかかる基礎控除を4割カットというものではなく、3割や2割カットなどの「おとなしい改正」の自民党独自案を作成することを検討するようなのですが、それにしても 「話が違う」 感は否めません。

自民党税調の税制改正大綱は、来年1月下旬をめどに作成される予定です。

税調議論の過程などをオープンにする、民主党政権の残した良きプロセスは今後も継続してもらいたいと思います。

 

 

来年1月から、改正された国税通則法が施行されます。

これにより、更正の請求期間の延長、処分の理由付記、税務調査手続きの見直しが行われます。

課税庁では、これに対応するため長時間の研修を行うとともに、今年10月1日からの税務調査において、事前通知と修正申告の勧奨の際の教示文の交付を先行的に行うそうです。

国税庁HP 「税務調査手続等の先行的取組の実施について」↓
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/nozeikankyo/senkotorikumi.htm

税務調査の手続きにおいては、実地調査の開始日時、調査場所、調査の目的、調査の対象となる税目、調査の対象となる期間、調査の対象となる帳簿書類その他の物件などを、納税義務者に対して事前に通知することが、法定されています。

また調査の終了に当たっては、国税に関する調査の結果、更正決定等を行うべきと認めた場合その調査結果の内容とその額を、納税義務者に説明するとされています。

10月1日から開始の調査に関しては、一部新制度に則った調査手続きを履行するとのことなので、この時点で税理士事務所も当局のひとつひとつの手続きの確認をすることが必要です。

また、納税者本人にも事前通知が必ず行われ、「事前通知事項の詳細」については、税理士事務所への説明のみでよいかどうかの確認も行われるようですので、この点も混乱がないように納税者への事前確認が必要と思われます。

 

 

消費税率引き上げ法案に関する民主党と自民党との修正協議が、今月15日までに合意をめざす方向で進められています。

民主党が、低所得者層向け対策として打ち出している、「給付付き税額控除」制度に対して自民党は反対していることから、15日までの合意、21日国会会期末までの衆議院可決は、微妙な情勢です。

自民党からは、会期末まで残り僅かなことから、かりに消費税改正について合意をみたとしても、消費税以外の改正項目である所得税の最高税率引き上げや、相続税の基礎控除引き下げなどの税制抜本改革項目は、今年末の税制改正論議まで先送りするという見方が強まっているとのことです。

相続税改正については、自民党が強く反発していることから、かりに年末の論議に先送りされても、平成25年度税制改正に盛り込まれるかどうかは流動的です。相続税増税には所得間格差を埋め、消費増税を行うための環境整備をするという意味合いもあるのでしょうから、消費増税の決議のタイミングによっては、いっそう相続税制の改正のゆくえは、読めなくなると思います。

 

 

法人課税について、平成24年4月1日以後に取得する減価償却資産の定率法の償却率が、原則として、定額法償却率の「200%」(改正前は「250%」)に見直されることになります。

また、この制度の適用に伴い、次の経過措置が設けられます。

1..平成24 年4月1日前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度において取得した  減価償却資産について、改正前の「250%定率法」による償却ができるようにする。

2.「250%定率法」に基づいて減価償却を行っている資産については、今まで通り「250%定率法」により償却できるが、固定資産管理システムの修正の影響等により「200%定率法」を選択して減価償却を行った場合であっても、平成24年4月1日以後最初に終了する事業年度の申告期限までに届出をすることを要件に当初の耐用年数で償却を終了することができる。

なお、個人に関しては、平成24年取得分に関しては250%定率法、平成25年度以後取得分から200%定率法が適用されます。

ちなみに、250%定率法の償却率が高すぎるので、3年の繰越欠損期間でカバーしきれず、定額法に変更したいというケースもあるようです。この場合、新たな償却方法を採用しようとする年の3月15日までに、変更しようとする理由などを記載した「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。この提出には従前の償却方法を継続して「相当期間」が経過していなければならないとされ、相当期間とは3年とされています。

 

 

マイナンバー法案について、同法案成立後少なくとも3年間は、預金利子について適用を見送るようです。

現在のすべての預金口座の利息について、支払調書を出し、これにマイナンバーをふることは、コストの面だけでも見通しが立たないためです。

ところで、マイナンバー制度の要諦のひとつに、消費税の「給付付き税額控除」があります。

低所得者に対して、消費税率の引き上げが生活を圧迫しないよう、還付も含めて税額控除を行う制度です。

この実施時期を、民主党のまとめた中間報告では、「少なくとも平成28年7月以降」としています。平成27年10月には消費税率10%を予定しているため、1年以内には低所得者に対する手当をしたいということだと思います。

しかし、預金利息がマイナンバー法の対象になるとしても、早くて平成30年1月からということですので、民主党のスケジュールでは預金利息がマイナンバーの対象でない時期から、給付付き税額控除制度が動き出すことになります。

多額の預金利息のみで生活している人に対して、税金の還付が生じる可能性もあり、新たに議論を呼ぶことが予想されます。

 

 

計算ミスや法令の読み間違いなどで、申告した税額が過大であった場合、当局に税額の訂正を請求する制度を「更正の請求」と言います。

従来、更正の請求が出来る期限は、法定申告期限から1年間とされており、税額が過小であった場合の遡り期間である3年(個人)、5年(法人)とのバランスが問題となっていました。

今回の税制改正によって、更正の請求期限が原則5年間に延長されています。

ただし、この改正は、改正法が施行された平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来するものから適用になるため、それ以前のものは適用にならないというのが法律の建前です。

これでは、適用までに時間を要するため、国税庁は更正の請求に係る税制改正の留意事項を公表しています。

国税庁HP↓
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/kosei_proposal/tetsuzuki/01.htm
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/kosei_proposal/tetsuzuki/02.htm

これによれば、平成23年12月1日以前に法定申告期限が到来する申告の更正の請求期限は、従来どおり1年としながらも、増額更正ができる期間内であれば、「更正の申出書」を提出することにより、柔軟に対応し更正に応じるとのことです。

当面は、「更正の申出書」の提出そのもの、そして提出期限について神経を使わなければなりません。

 

 

社会保障分野や国税、地方税の賦課徴収のために、個人および法人に番号をつける、マイナンバー法案が今国会で成立する見込みが濃厚となっています。

法案によればマイナンバーの利用される範囲は以下の内容に厳しく限定されています。

① 社会保障分野での事務、税の賦課徴収および防災にかかる事務

② ①の事務の申請、届出を行う者の事務処理上必要な範囲での利用

③ 災害時の金融機関での利用

利用範囲が限定されるため、巷間心配されるような、個人所得と法人所得とを紐付けして課税の強化を図るということは、当局も意図していないようです。

ただし、個人番号は届出書、調書等に記入されるため、給与所得以外の資産から発生する所得の名寄せは容易になります。 これにより給与所得だけからは把握しきれなかった個人所得の全体像が明確に把握されることになります。

なお預金口座に関しては、調書にないことから、マイナンバー法の対象になるかどうか未定のようです。