相続税の税務最新情報

平成24年10月1日から平成27年9月30日までの3年間の時限措置として、未納状態となっている国民年金保険料を過去10年分まで後納することができます。

この制度を使って生計一の親族分の保険料をまとめて後納した場合、その全額が支払った当人の社会保険料控除として計上できます。節税効果も大きいことから、制度利用の検討をされている納税者も多いと思われます。

ところが、過去10年分の未納保険料合計額、約160万円が贈与税非課税枠110万円を上回るため、課税庁は贈与税課税の可能性を示唆しています。

保険料を肩代わりしてもらった、配偶者や子に後納保険料を支払うだけの収入がある場合、実際負担者からの贈与であるとして課税対象とするというのです。

時限措置は3年間設けられているため、制度を利用して支払い能力のある親族の後納保険料を負担する場合には、分割納付を検討するのが懸命だと思われます。

 

 

平成25年度税制改正では、事業承継税制の見直しが論点となるようです。

平成20年に導入されたものの、その要件が厳しすぎることで、事業承継税制は敬遠されてきました。実際この3年間で、相続税に関する適用累計数は、わずか348件にとどまっています。

財務省もこの状態を放置することで、制度そのものの存続が危ぶまれるとの認識から、来年度税制改正の論点に取り込む方針のようです。

ちなみに現在、経済産業省、中小企業庁から出されている要望は、以下の項目です。

①親族外承継も対象にすべき

②「役員」退任要件を緩和して、「代表者」退任要件へ

③雇用8割以上継続要件を、5年継続ではなく5年間の平均へ

④5年経過後に、猶予額を全額免除

⑤会社事業資金の担保となっている不動産も対象に

このうち財務省は③の5年間雇用要件について、問題意識を持っており、何らかの改正が行われる可能性があります。

 

 

今朝(7月11日付)の日経新聞に、金投資の特集記事が載っていました。

記事によると、調査機関のゴールド・カウンシルの試算では、株式55%、債権25%を中心とした標準的なポートフォリオに、金を4.4%組み入れると、組み入れない場合に比べて、利益の増加、損失の抑制効果のいずれもが認められたそうです。

かつて金を扱っている方から、金で利益を上げるのは至難の業だ、金をもつのは「趣味」の話と考えた方がよい、とお話しを聞いたことがあります。

日経の記事にもあるように、有事に強みを発揮する金は、平時には魅力のうすい商品になります。 金は有事への備えとして「買ったら忘れる」のが基本との考え方もあるという指摘もあります。

一方、国内投資家にとって最大のリスクのひとつが、円の急落とインフレというシナリオであると言われています。その意味で、金投資の重要性は増しているのかもしれません。

短期の利益を決して求めず、あくまでも急にお金が必要になったときまでに動かさないという覚悟を持てるか。それだけの余裕資金なのか、という見極めが金投資の勘どころでしょう。

 

 

国税庁は、平成22年分の相続税申告事績を公表しました。

公表の対象は、相続税額のある申告書で、平成23年10月31日までに提出されたもの及び震災特例法により申告期限が24年1月11日まで延長が認められた被災者が提出したものを合わせたものです。

これによると、被相続人数は過去最高となる119万7千人で、このうち相続税の課税対象被相続人数は約5万人、課税割合も4.2%と0.1ポイント微増しています。 また課税割合が増加するのは3年ぶりとなるそうです。

つい最近まで、被相続人の数はおおむね百万人と考えていました。 これがあっという間に120万人に到達し、2025年には170万人にまでふくれあがると言われています。高齢化社会への本格的な突入を実感する数字です。 

課税割合は微増しているようですが、税額そのものは前年度を割り込んでいるので、財産を「広く浅く」保有する分布に変わってきているのかもしれません。

相続税の改正がかりに行われ、基礎控除が大幅に引き下げられると、課税割合は当初予想よりも大きくなるかもしれませんが、税収もさほど見込めない可能性があります。

 

 

平成24年度税制改正法案は国会を通過していますが、この中に平成23年度税制改正大綱に盛り込まれていた「基礎控除の引き下げ・税率構造の見直し」は、含まれていないので注意が必要です。この点誤解をされておられる方が多いようです。

相続税の基礎控除の引き下げは「社会保障と税の一体改革法」に謳われており、これが成立すれば平成27年1月1日以後発生の相続から適用になります。 平成23年度税制改正大綱に盛られたスケジュール(平成23年4月以後相続適用)からみれば、だいぶ先延ばしの日程ではありますが、自民党などの強い抵抗が予想されています。消費税率引き上げとのバーターでまた先送りというシナリオも考えられます。

ところで、平成24年度税制改正では、一定の要件のもとで相続税の「連帯納付義務」は解除されることが、ようやく実現しました。

①申告期限等から5年を経過した場合、②納税義務者が延納又は納税猶予の適用を受けた場合には、未納の相続人分の相続税を他の相続人が連帯して納付する義務が解除されます。

納税者にとっては吉報です。

 

 

マイナンバー法のもたらす影響について何度か触れてきましたが、相続・贈与税への影響に関しては、現状ではさほど大きくないとの予測が立てられています。

マイナンバー法は、支払調書の提出が義務づけられているもの、すなわち「所得」の捕捉に関しては大きな影響を及ぼすものとみられます。

たとえば非上場株式の配当など、マイナンバー法によって名寄せされる予定ですので、配当所得の申告漏れなどはなくなって行くのでしょう。

しかし、個人間の非上場株式の譲渡など、支払調書の伴わない所得の捕捉には役立たないことになります。

また、調書の伴わない「資産」の把握は基本的にマイナンバー法の「枠外」と捉えて良いようです。

ただし、前述の非上場株式の配当に係る支払調書によって、「非上場株式の所有」そのものは捕捉されるので、相続等で申告漏れを指摘される機会は増えてゆくと考えられます。

 

 

消費税増税を含む「抜本改革法案」では、相続税改革についても触れています。

改正内容は、平成23年度税制改革の際に用意されていたものと変わらず、基礎控除の引き下げ、税率構造の見直しが含まれています。

このなかで、生命保険の非課税枠500万円が設けられるのは、法定相続人が①未成年者、②障害者、③被相続人と生計を一にしていた者、に限定する旨が明記されています。

この点について、一部の専門家から、未成年者等が実際に保険金を受け取ることが要件とされているのかについて疑問が投げかけられていました。

財務省による回答では、未成年者、障害者等が保険金の受取人である必要はないということです。  つまり未成年者等の扶養者が保険金を受け取ることとなっても、非課税枠に変更はないと考えてよいのだそうです。

今回の改正をにらんでの保険契約の見直しなどは、さしあたり必要はないようです。

 

 

相続開始後に相続人が行った契約の解除によって、相続財産の法的位置づけが代わるのかどうかについて、興味深い判決が広島地裁で下されました。

この事件は、被相続人が土地建物の売買契約を交わして手付金を受け取った後に相続が開始し、相続人が手付金の倍額を支払って売買契約を解除した後、課税財産を土地建物として申告したケースです。 

課税庁は、課税財産は土地建物ではなく、売買残代金請求権であるとして更正処分をしてきたため、相続人がその取消しを求めていました。

土地の相続税評価額は、一般的に時価の8掛け程度、建物の相続税評価はさらに低くなるのが相続税評価の世界であるため、相続財産が土地建物なのか売買代金請求権なのかによって税負担が大きく異なるわけです。

課税庁の論理は、被相続人と買い手との間には、強固な売買契約履行の意思があった為、相続人の意思や行為に関わりなく、代金債権こそが相続財産であるというものでした。

広島地裁は、事実関係を整理した上で、売買契約の解除は手付契約に基づく解除権の行使による解除であるから、国税通則法23条2項3号の「解除権の行使によって解除された場合」に該当すると認定し、納税者の主張を認めました。

判決によると、手付契約に基づく解除であるから土地建物の売買契約は被相続人が売買契約を交わした日に遡って消滅し、相続開始日においては売買契約が存在せず、売買代金債権も存在しなかったという解釈になります。

相続開始時には契約を解除しうる状態にあり、これに基づいて現に契約が解除されている以上、被相続人の意思や契約当事者との関係は、第二義的な意味合いしか有しないと考えるのが、当然だと考えます。

ちなみに、国側敗訴のまま判決は確定しています。

 

 

土地建物の売買契約の途中で相続が発生したケースで、課税庁は「売買残代金請求権」を
相続財産と主張したのに対し、相続発生後、納税者は「手付け倍返し」で契約を解除しており、
土地建物が相続財産であるとして争っていましたが、広島地裁は納税者の主張を全面的に認める判決を下しました。

国税通則法では、

 ① 契約が解除権の行使によって解除された場合、又は
 ② 契約の成立後生じたやむを得ない事情により解除された場合

には、解除された後の事実に基づいて、課税標準の是正ができる、となっています。

裁判では「解除権の行使」に当たるかどうかについて、約定文言や当事者の行動をめぐって双方の主張が食い違いましたが、裁判所は、解除権の行使ができない客観的事実が確認できないとして、「解除権の行使」による契約の解除であると判断しています。

また、相続人らが当該土地建物を売却しなければ、相続税の納税がかなわないという思いこみのもとに、いわば動機の錯誤のもとに契約を行っており(相続後充分な現預金・生命保険が確認されている)、これらを「やむをえない事情」と納税者側が主張していた点についても裁判所は納税者の主張を支持しています。

つまり納税者の全面勝訴判決となりました。