所得税の税務最新情報

預託金会員制ゴルフ会員権」の譲渡所得にかかる、今年6月の東京高裁判決を受けて、国税庁は従来の取得費の取り扱いを改める旨、HPで公開しています。

国税庁HP↓
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/golf/01.htm

預託金会員制ゴルフ会員権が会社更生法の適用により、預託金債権の全額を切り捨てられ「プレー権」のみのゴルフ会員権となったとき、これを売却した際に取得費として認識できるのは、「プレー権のみのゴルフ会員権の時価相当額」とされてきました。

HPでは今回の東京高裁判決を受けて、預託金会員制ゴルフ会員権を取得したときのプレー権部分に相当する、もともとの取得価額を「取得費」とすると改めています。

ただし、プレー権につき以下のような条件が認められ、更生手続等の前後で変更なく存続し、同一性を有していると認められる場合の取扱いであることが前提です。

①更生計画等の内容から、プレー権が会員の選択等にかかわらず、更生手続等の前後で変更がなく存続することが明示的に定められている

②更生手続等によりプレー権のみのゴルフ会員権となるときに、新たに入会金の支払がなく、かつ年会費等納入義務等を約束する新たな入会手続が執られていない

なおこの取扱いの変更は遡及適用でき、取扱いの変更を知った日の翌日から2ヵ月以内に請求をすることにより、納め過ぎた所得税の還付を受けることができます。

 

 

今国会で成立することが見込まれている、「マイナンバー法案」ですが、上場株式の配当、譲渡にとどまらず、非上場株式の配当、譲渡に関しても、この制度によって名寄せされることが取材によって明らかにされました。

マイナンバーがふられる対象として、税務では「国民が税務当局に提出する確定申告書、届出書、調書等」と規定されており、この「等」のカバーする範囲が極めて広そうだ、という情報です。

捕捉されづらかった自社株の配当所得なども、もれなく名寄せされ、申告漏れを厳しく指摘されることになります。

 

 

東日本大震災の義援金に対する所得税確定申告の取扱いで、一部誤解が見られるという報道がありましたのでご紹介します。

義援金等が、国又は地方公共団体に対する寄附金や財務大臣が指定するものなど、一定のものであるときは、「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。

このうち、中央共同募金会の「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」など、「特定震災指定寄附金」については、寄付金控除との選択により、「税額控除」の適用も受けることができます。

国税庁HPの東日本大震災義援金についての解説↓
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/gienkin/toriatsukai.htm

一部、誤解が見られる事案とは、日本赤十字社の「東日本大震災義援金口座」に直接振り込まれた義援金について、「税額控除」が可能と理解されているケースです。

公益性の高い団体の活動への寄付であるため、そのように理解されるのでしょうが、この寄付金に対しては「寄付金控除」の適用のみ認められているため、注意を要します。

税額控除について、中央共同募金会が「可」で、日本赤十字社が「不可」であることには、一般の理解を得られにくいところでしょうが、震災特例法と平成23年度税制改正法案の成立時期のズレなどから、このようなかたちになってしまったようです。

 

 

法人契約の養老保険契約の満期保険金について、その一時所得計算の判断で、納税者が敗訴する判決が最高裁で下されました。

契約者=医療法人、被保険者=理事長の子、死亡保険金受取人=医療法人、満期保険金受取人=理事長 とする契約で、法人税基本通達9-3-4(3)の死亡保険金、満期保険金の受取人が逆となるため、「逆パターン養老保険」とも呼ばれています。

医療法人は、支払保険料のうち2分の1を役員報酬とし、残り2分の1を法人の支払保険料としていたところ、理事長の満期保険金の一時所得計算に当たり、法人が負担した保険料全額を控除していた点が問題とされていたものです。

最高裁判決では、一時所得計算上控除できるのは、一時所得を得た個人が自ら負担したものに限定されるとし、役員報酬として処理した分についてのみ控除が認められるという判断を下しました。

ちなみに、平成23年度税制改正では、すでに一時所得の計算方法を今回最高裁判決と同様にするよう明文化しています。

 

 

1月6日に政府・与党で決定された 「税と社会保障の一体改革」 素案ですが、その中に、役員給与の給与所得控除を改正する旨の記述がありません。

平成24年度税制改正大綱では、給与収入が1500万円を超える給与所得控除について245万円の頭打ちを設けるよう改正したものの、役員給与等に係る給与所得控除については「税率構造を含む改革の方向性を踏まえ、引き続き検討していきます」と述べるに留まっていました。

そこで、一体改革法案のあり方が注目されていたのですが、法案素案では言及がまったく見られないことから、野党の反発を見越して改正そのものを棚上げした、という見方が支配的です。

もともと、特殊支配同族会社に対する課税があまりに悪評で、これを選挙公約通り廃止するのと「差し替える」ように提示されたのが、役員給与の給与所得控除の縮減案でした。

平成23年度税制改正法案が通っていれば、「天下の悪法」として成立していたものですが、当面、復活はないものとみて良いと思われます。