福岡市の税理士 税理士法人 福岡中央会計
「税務最新情報」

2013年3月26日 消費税の経過措置が適用される契約

消費税率引き上げに伴う「経過措置」について、今年9月までに契約を済ませてしまえば広範囲に適用されるという誤解があるようです。

例えば、自動車学校の一定期間の受講料をパック料金にして、9月までに契約する契約などが経過措置の適用で、5%取引になるのではといった誤解です。

これは明らかに「経過措置」の適用されるどの契約にも該当しないため、4月以降の役務提供に対しては8%の消費税が課されることになります。

ビルメンテナンスの保守点検業務の一括パッケージ契約が「請負」に該当し、経過措置の適用が認められるのではないか、という疑問も生じるところですが、改正消費税法の施行令では、経過措置の適用対象となる「請負」契約を以下のように定義しています。

測量、地質調査、工事の施工に関する調査、企画、立案及び監理並びに設計、映画の制作、ソフトウエアの開発その他の請負に係る契約(委任その他の請負に類する契約を含む。)で、仕事の完成に長期間を要し、かつ、当該仕事の目的物の引渡しが一括して行われることとされているもののうち当該契約に係る仕事の内容につき相手方の注文が付されているもの

ビルメンテナンスサービスは「仕事の目的物の引渡しが一括して行われる」という要件を満たさないため、経過措置の適用を受けられないのです。

経過措置に関する誤解が契約当事者双方にあると、契約金額の総額が変わってしまう可能性があります。経過措置適用前の契約については、二重三重のチェックが必要とされます。

 

 

2013年3月12日 買換え特例の縮小の影響

所有期間10年超の事業用 土地・建物・構築物を売却して、新たに土地、建物、構築物機械装置を購入した場合、売却益課税を繰り延べる「9号買換え」という制度があります。

10年超保有していれば大きなしばりもなく税負担を軽減した買換えができるため、重宝がられて使われてきました。税務に明るい経営者ならば「事業用で10年保有していれば買換え特例がきく」というのが常識でもありました。

ところが平成24年度税制改正で、新しく買換える資産のうち「土地」については、地積が300平米以上なければ特例の適用ができなくなってしまいました。

一方、平成23年の改正で法人の「立体買換え」(デベロッパーに土地を売却し、その土地上の建物と土地を代替資産として区分所有するような取引で、等価交換などとも言われる)

の特例が使えなくなったため、逃げ道として「9号買換え特例」が使われてきた経緯もあります。

ところが土地の300平米要件が入ってしまうと、立体買換えで土地を区分所有する場合、9号買換えの要件を満たさないケースが大幅に増えてしまいます。

新規に取得する「建物」部分には「9号買換え特例」は使えますが、土地はアウトということになってしまうのです。

地方の土地を売却し、都心の狭小地に節税目的のマンションを建てても、9号買換えの特例でしばりがかけられる、といふうに平成24年改正の際、解説されていましたが、法人の立体買換えの逃げ道がふさがれてしまう、という問題も引き起こしています。

不動産市況が活発化し、再開発事業なども展開される中で、企業や事業を行う個人の「打ち手」が少なくなっています。

 

 

2013年3月8日 消費税率引き上げにともなう「転嫁対策法案」

政府は今国会中に「消費税の円滑かつ適正な転嫁のための特定事業者による消費税の転嫁の拒否等の是正等に関する特別措置法案」(転嫁対策関連法案)を提出し成立する予12定です。

今回の法案の対象となるのは「特定事業者」と「特定供給事業者」で、早い話が前者が取引上の「強者」、後者が「弱者」を指します。 強者に商品等を納入する立場の弱者に対して、消費税率引き上げ分の値下げ圧力などをかけないための法律です。

ここで注目したいのが、「消費税還元セール」などの表示を禁止すべく行政指導するとしていた原案が修正され、法的に禁止する規定が盛り込まれる予定であることです。

政府は大規模小売店による「消費税還元セール」が、ひいては価格転嫁を困難にするものとして問題視しており、今回の修正への動きにつながったそうです。

ただし、3%値引き、5%値引き、2%値引き等は、かりに消費税率引き上げ相当分を想起させるとしても、一律に法律で禁止することは難しいと考えられています。

法案の内容はまだ流動的ですので、今後の報道に注目したいと思います。

 

 

2013年2月8日 孫への教育資金贈与

祖父母から孫への教育資金贈与が1500万円まで非課税となる税制改正大綱の内容について、ご質問を受ける機会が増えました。

祖父母からそれぞれ1500万円ずつ贈与が可能か、というのが最も多い質問です。

これは受贈者1名につき1500万円を限度としますので、例えば2名から合わせて3000万円を贈与しても、超過した1500万円には普通の贈与税が課せられます。

大綱には「一括贈与」という文言がありますが、必ずしも1年度中にすべての贈与を終える必要はないようです。例えば500万円ずつ3年に分けて合計1500万円の贈与となった場合にも、この制度は使えるようになるそうです。

また、基礎控除110万円や「相続時精算課税制度」との併用も可能となるという情報も伝えられています。

今年の4月1日から平成27年12月31日までの3年間の時限的措置ですので、この点も充分に念頭に置いておかなければなりません。

 

 

2013年2月4日 小規模企業に対する課税強化の可能性も

税制改正大綱のなかで注意しなければならない項目に「検討事項」があります。

最後に付け足しのように書かれているものの、今後の税制改正では俎上に上げるというメッセージ性の高い内容です。

平成25年度税制改正大綱には次のような文言が見られます。

 「小規模企業等に係る税制のあり方については、個人事業者、同族会社、給与

 所得者の課税のバランス等について、幅広い観点から検討する」

悪名高い「特殊支配同族会社課税制度」は、自民党時代に制定され批判によって縮小されながら、民主党政権時代の平成22年に廃止された経緯があります。

これとバーターするようなかたちで、給与所得控除の「頭打ち制度」が導入されて、同族会社の役員に対する課税問題は一段落したものと考えられていました。

自民党政権下では、この問題はまだ未解決であり、課税強化も検討するという認識であることのアナウンスです。

今後の税制改正の議論の中で、要注意の事項です。

 

 

2013年1月10日 良いニュースと悪いニュース

「良いニュースと悪いニュースがあるけれどもどちらから聞きたい?」

こういう言い回しがあります。

多くの場合、悪いニュースのショックを和らげるための前置きとして使われます。

そういう訳なので、良いニュースも実は取って付けたようなものに過ぎません。

自民党は、祖父母の孫に対する教育資金贈与について、時限的に1500万円を上限として贈与税の非課税枠を設けることを検討しているそうです。

これを受けて昨日、教育関連の上場株が急騰したというおまけまで付いています。

しかし、これも冒頭に述べた「良いニュース」の部類に入るのではないかと思います。

相続税増税は贈与税減税とセットで税制改正の俎上に乗せられてきた経緯があります。つまり「悪いニュース」のもうひとつの側面としてこれまで登場してきたのです。

相続税増税について、さすがに民主党政権時の改正案をそのまま採用することはないのでしょうが、自民党政権も相続税増税に踏み切るのだと思います。

これから「悪いニュース」が待っていると覚悟すべきだと思います。

 

 

2013年1月9日 自民党税制調査会の本格始動

自民党税制調査会は7日総会を開催し、9日に各部会からのヒアリングを行い、10日、11日に主要項目について検討することを確認しました。

所得税・相続税の見直し、事業承継税制、金融証券税制が主要な論点になると言われています。

7日総会のペーパーを見ても、気になる所得税、相続税の改正については、昨年3党合意の文言が掲載されているだけで、新しい情報を得ることはできませんでした。 10日、11日皮切りの議論で大きな方向付けが固まると思われます。

あらかじめアナウンスされていた研究開発税制の拡充は、11日に予定される緊急経済対策に盛り込まれる予定とのことです。

また日経新聞の情報では、給与を一定割合増加させたり、雇用者数を一定以上増加させた企業に対して、法人税の控除を行う減税制度を検討しているそうです。

平成25年度税制改正大綱は、1月23日をめどにとりまとめることが予定されています。

 

 

2012年12月30日 自民党も相続税増税に着手か

安倍内閣組閣の翌日のニュースに、自民党も富裕層課税を検討し始めているというものがありました。

消費税率引き上げに伴い、富裕層にも所得税や相続税で相応の負担をしてもらおうという動きですが、自民党はこれまで相続税増税には強く反発していたはずです。

民主党政権時の、相続税にかかる基礎控除を4割カットというものではなく、3割や2割カットなどの「おとなしい改正」の自民党独自案を作成することを検討するようなのですが、それにしても 「話が違う」 感は否めません。

自民党税調の税制改正大綱は、来年1月下旬をめどに作成される予定です。

税調議論の過程などをオープンにする、民主党政権の残した良きプロセスは今後も継続してもらいたいと思います。

 

 

2012年11月30日 国税庁の意見書に「相続税の推計課税」

平成25年度税制改正に向けて国税庁がまとめた意見書の中に、相続税の課税財産の範囲に関する「推定規定の新設」が盛り込まれているそうです。

より具体的には、「相続開始以前の一定期間中に、被相続人の財産を処分または被相続人が債務を負担したもので、その使途が客観的に明白でなく、かつ、その合計額が一定金額以上となる場合には、これを相続人が相続したものと推定し、相続税の課税価格に算入する制度を創設する」というものです。

ゾッとする話だと思います。

相続人には知り得ない、被相続人のプライベートな世界があり、それでも何とか客観的な相続財産の総額をまとめようと努力して申告納税にこぎつけているのが、現在の相続税申告制度の実態です。

それうえで把握しきれなかった財産が具体的に判明した場合には、相続人の努力の及ぶ範囲外であったと納得して修正申告を行っています。

しかし、使途が客観的に明白でない場合の財産について課税される場合には、相続人はとうてい納得ができないでしょう。それは相続人の責任の範疇から外れるものだからです。

死期がある程度読めるようになって、お世話になった人たちに会いに行き、頻繁に食事会をされていた方がおられました。本人の生き甲斐のようになっていたため、家族もいちいち誰と会う約束なのか聞くこともなく、本人の好きにさせていたようです。

また、賭け事の好きな人は、やや羽目を外してお金をつぎ込んでしまうかもしれません。

任意団体などに匿名で多額の寄付をした場合はどうなるのでしょう。

これらに対して、使途が客観的に明白でないために課税対象とする、とした場合には、相続人に対してあまりに酷な制度だと思います。 また亡くなる前の大切な時期に、相続人がお金の使途にいちいち口出しするような関係を作り出すのではないかとも思います。

国税当局は「人が亡くなる」という厳かな現実に対して、いま少し畏怖の念を抱いてもよいのではないかと思います。

課税庁の意見にとどまっているあいだに、早期の再考を促したいと思います。

 

 

2012年11月28日 複数税率により簡易課税も改正される見込み

「自民党を中心とした政権が誕生する」、そういう前提ですでに税務の話題が進められています。

たとえば、消費税について逆進性を解消するために、自民党は複数税率導入を主張しています。

複数税率が導入されると、益税が問題となっている簡易課税制度の見直しも進められるでしょう。 「みなし仕入率」が実際の仕入率よりも高い業種、例えば不動産業などにはみなし仕入率の見直しが検討されることが予想されます。

また「飲食業」でひとくくりにしている分野も、アルコールを多く扱うかどうかで、仕入率は大きく異なります。 

複数税率が導入されている欧米諸国では、数十の業種区分に細かく分類されているようなので、それに準じるように細かな分類が行われるだろうと予測されています。

財務省もみなし仕入率と実際仕入率との乖離を調査しており、複数税率導入とともに、即座に簡易課税制度の改正に取りかかれる準備をしているそうです。

益税問題が解消することは当然の方向性ですが、分類作業ミスによる損税問題の発生を抑えることにも神経を使ってもらいたいものだと思います。

 

 

2012年11月6日 経営革新等支援機関の第1号認定を受けました

弊事務所は、「中小企業経営力強化支援法」にもとづく「経営革新等支援機関」の認定申請を行っていましたが、昨日11月5日付けで、第1号認定を頂きました。

中小企業庁HP↓
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/2012/1105nintei.htm

今回の認定制度では、税務、金融及び企業の財務に関する専門的な知識や実務経験が一定レベル以上の者を国が認定することで、支援の担い手を多様化・活性化するとともに、中小企業基盤整備機構からの専門家を派遣し、中小企業に対してチームとして専門性の高い支援を行うための支援体制を整備することとしています。

今回の第1号認定を受け、法の趣旨に則って、中小企業の経営革新支援に尽力して参ります。

 

 

2012年11月2日 国民年金保険料の10年分後納制度

平成24年10月1日から平成27年9月30日までの3年間の時限措置として、未納状態となっている国民年金保険料を過去10年分まで後納することができます。

この制度を使って生計一の親族分の保険料をまとめて後納した場合、その全額が支払った当人の社会保険料控除として計上できます。節税効果も大きいことから、制度利用の検討をされている納税者も多いと思われます。

ところが、過去10年分の未納保険料合計額、約160万円が贈与税非課税枠110万円を上回るため、課税庁は贈与税課税の可能性を示唆しています。

保険料を肩代わりしてもらった、配偶者や子に後納保険料を支払うだけの収入がある場合、実際負担者からの贈与であるとして課税対象とするというのです。

時限措置は3年間設けられているため、制度を利用して支払い能力のある親族の後納保険料を負担する場合には、分割納付を検討するのが懸命だと思われます。

 

 

2012年10月31日 太陽光発電設備の即時償却に問題点

平成24年度税制改正では、「グリーン投資税制」の拡充として、太陽光発電設備等にかかる即時償却制度が導入されました。

来年3月までに設備を取得し、1年以内に事業の用に供すれば、その事業年度に全額が経費になるという制度です。

ところが課税当局の見解では、個人が賃貸マンションを所有しており、その屋上に設備を設置した場合には「全量売電」の売却収入は、不動産所得になるとのことです。

税務上の取扱いは、余剰売電の場合と同様となり、事業所得に対する特例である即時償却は使えない、ということになってしまいます。

設備関連業者は、即時償却を前提とした利回り計算、投資回収期間計算を行って投資提案をしているため、今後一部で混乱が予想されます。

なお課税庁は、11月上旬にも質疑応答集を公表する予定だそうですが、すべての電力を売却する「全量売電」の場合には事業所得に該当するのではないか、と指摘する専門家もおり、この点をめぐって今後、見解の相違が発生する可能性もあります。

 

 

2012年10月19日 医療機関の「高額投資」にかかる消費税への措置

消費税率引き上げによって経営基盤に大きな影響を受けるのは、税率引き上げ相当分を価格に転嫁できない立場の事業者です。

「値決めは経営である」という稲盛和夫さんの言葉を肝に銘じて、価格戦略によって税率引き上げに対処するのが王道でしょう。しかし、医療機関における社会保険診療報酬は、非課税の公定価格であるため、身を守るための「値決め」をすることができません。

かつて消費税率が5%に引き上げられたときには、診療報酬改訂時に税率引き上げ分が加味されました。 しかし、この診療報酬改定が医療機関の規模に関わらず一律な手当であったことから、大規模医療機関を中心に不満の声があげられました。

そこで、今回の税率引き上げに当たって、『社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律』において、この点に配慮する旨の規定が置かれています。

財務省HP↓
http://www.mof.go.jp/about_mof/bills/180diet/sh20120330g.htm#betu

ここで、注目すべき点は、

 「医療機関等における高額の投資に係る消費税の負担に関し、新たに一定の基準に該当するものに対し区分して措置を講ずることを検討し」 (第7条1項ヘ)

の文言です。

高額の投資に対しては、診療報酬において一定の上乗せを行うことが検討されるということを意味しています。
具体的な診療報酬改定によっては医療機関の投資計画にも影響を及ぼす内容です。

 

 

2012年10月2日 事業承継税制の改正議論も

平成25年度税制改正では、事業承継税制の見直しが論点となるようです。

平成20年に導入されたものの、その要件が厳しすぎることで、事業承継税制は敬遠されてきました。実際この3年間で、相続税に関する適用累計数は、わずか348件にとどまっています。

財務省もこの状態を放置することで、制度そのものの存続が危ぶまれるとの認識から、来年度税制改正の論点に取り込む方針のようです。

ちなみに現在、経済産業省、中小企業庁から出されている要望は、以下の項目です。

①親族外承継も対象にすべき

②「役員」退任要件を緩和して、「代表者」退任要件へ

③雇用8割以上継続要件を、5年継続ではなく5年間の平均へ

④5年経過後に、猶予額を全額免除

⑤会社事業資金の担保となっている不動産も対象に

このうち財務省は③の5年間雇用要件について、問題意識を持っており、何らかの改正が行われる可能性があります。